万葉集に、いわゆる〈題詞〉や〈左注〉以外の、「多少とも独立した作品としての性格をもつ漢文や漢詩」がどれくらい・どんなものがあるのか知りたくて調べていた。角川ソフィア文庫の解説に「収める作は、漢文1、漢詩4、重出歌3を加えて4541」とあり、まずはこれが手掛かり。 https://fedibird.com/web/statuses/112650174558792552
漢詩③:余春媚日宜怜賞 上巳風光足覧遊 柳陌臨江縟袨服 桃源通海泛仙舟 雲罍酌桂三清湛 羽爵催人九曲流 縦酔陶心忘彼我 酩酊無処不淹留
(余春の媚日は怜賞するに宜しく、上巳の風光は覧遊するに足る。柳陌江に臨みて袨服を縟らかにし、桃源海に通ひて仙舟を泛ぶ。雲罍に桂を酌みて三清湛へ、羽爵人を催して九曲流る。縦酔陶心彼我を忘れ、酩酊して処として淹留せずといふことなし)
(巻十七・3973の前(新番号3995))
漢詩④:杪春余日媚景麗 初巳和風払自軽 来燕銜泥賀宇入 帰鴻引蘆迥赴瀛 聞君嘯侶新流曲 禊飲催爵泛河清 雖欲追尋良此宴 還知染懊脚令*丁*
(杪春の余日媚景麗しく、初巳の和風払いて自ら軽し。来燕は泥を銜み宇を賀して入り、帰鴻は蘆を引きて迥かに瀛に赴く。聞くならく君が侶に嘯き流曲を新にし、禊飲爵を催して河清に泛べしことを。良きこの宴を追尋せまく欲ふと雖も、また知る懊みに染して脚令*丁*なることを。)
(巻十七・3976の前(新番号3999)) *の字は足偏がつく