万葉集に、いわゆる〈題詞〉や〈左注〉以外の、「多少とも独立した作品としての性格をもつ漢文や漢詩」がどれくらい・どんなものがあるのか知りたくて調べていた。角川ソフィア文庫の解説に「収める作は、漢文1、漢詩4、重出歌3を加えて4541」とあり、まずはこれが手掛かり。 https://fedibird.com/web/statuses/112650174558792552
では漢文(散文)はどうか。ざっと通覧すると、通常の〈題詞〉とは異なる、多少なりとも作品としての性格をもつ漢文は少なからずあり、主に巻五と巻十七に集中する。試みに分類すると、①「令和」の出典である巻五の「梅花の歌三十二首の序」など、「序」と明記のあるもの(計10)、②「序」の記載はないが歌の序文的性格を持ったもの(漏れがある可能性大だが計8)、③題詞に分類されうるがそれ自体物語の性格をもつもの(巻十六の物語歌群の題詞)、となりそう。
さて、角川ソフィア文庫の解説が「収める作4541」の1つに数えている「漢文1」はどれかというと、上の①〜③のどれにも分類されない特異な散文である「沈痾自哀文」(巻五)だと思われる。和歌や漢詩の序文になっているわけでもない(ように見える)この散文が、なぜ万葉集に収められたのか不思議。