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任青《还魂》は中国語原文がリンク先でまるごと読めます。機械翻訳でもそこそこ読めるタイプの語彙と文体だと思う。
mp.weixin.qq.com/s/gCwZYxe3iVK

英訳はGalaxy Awards 1: Chinese Science Fiction Anthologyに収録されています。原文も併録されています。Kindle版は670円くらい。
amazon.co.jp/gp/aw/d/B0BR5Y8Q5

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ヒューゴー賞ショートストーリー部門候補続き。

鲁般《白色悬崖》“The White Cliff”では、白く巨大な崖のある美しい土地で生きる男が、現実には末期ガンでかろうじて生命維持されており、終末期ケアや家族との最後のコミュニケーションのためにこの仮想世界にいることを知るという筋書き。
感想:叙情的で雰囲気はいいのですが、かなりテンポがゆっくりで、意外な展開などはありません。評判のいい作家なので他の作品も読んでみます。

王侃瑜《火星上的祝融》では、人類が去った後の火星に残されたロボット祝融(火の神の名前)が、埋もれていた探査車・共工(水の神の名前)を発掘し、火星の先住生命の秘密を知り、否応なく共工と戦うことに。二者の戦いの痕跡は、1万年後の遠未来に火星の生命の文明の神話伝承に残るのでした。
感想:人間が一切でてこない、非人間知性体があまり擬人化もされない短編です。サイバーパンクっぽかったり壮大だったりするバトル描写もいい感じです。もう少し短くてもいい気がします。王侃瑜さんの最近の作品は、スケールや状況のエスカレーションが大きくて私の好みです。

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ヒューゴー賞ショートストーリー部門を全部読みました。
私の暫定1位は任青《还魂》(還魂)です。“Resurrection”, by Ren Qing, translated by Blake Stone-Banks (初出2020, 英訳2022)
徴兵されて前線に送り出されて亡くなった息子が、破損した脳内チップの断片的な情報を元に再生され、老いた母親の家に送られてきます。これは実験でありサービスで、数週間後には〈回収〉される予定でした。部分的に息子の記憶を持ちつつも怪力や未来予知といった異能を発揮する復活者は、他の村人から激しい嫉妬や恐怖を受け、静かに母親と共に家で過ごします。
戦争や全体主義や強大なテクノロジーのグロテスクさを描いた、悲しい名作です。著者の他作品をもっと読んでみたいと思いました。

江波《命悬一线》“On the Razor’s Edge”
オールドスクールな宇宙SF。2028年、中国の宇宙飛行士たちが国際宇宙ステーションの事故から米国の宇宙飛行士たちを救援する危険な時限ミッションに挑みます。特に予想を上回る展開はなく、ピンチや犠牲がありつつ成功します。唯一の女性キャラクタがほぼ助け出される姫のような役割なのも残念です。

海外のSFF賞候補作の感想は、このタグでやることにします→

“Murder By Pixel: Crime and Responsibility in the Digital Darkness” by S.L. Huang

clarkesworldmagazine.com/huang
ヒューゴー賞ノヴェレット部門候補作。
舞台:ほぼ現代。

あらすじ:
語り手はジャーナリスト。過去の犯罪や不品行を謎のデジタル・ストーカー「シルヴィ」に暴かれ、責められ続けて自死に追いこまれる連続事件を追っている。
恐るべき「シルヴィ」の正体は、大規模言語モデル(LLM)のAIと推定された。だが調査を進めると「シルヴィ」に救われ、支援窓口に繋いでもらった女性たちも次々見つかったのだった。
現にオンラインハラスメントが深刻にも関わらず、各SNSが悪質な投稿を野放しにしているからシルヴィが猛威をふるえるという結論で締めくくられる。問題は人間にあり。

感想:AIその他IT周辺の問題点を総ざらいし、先行事例の豊富なリンクと共に伝える記事風の小説。MicrosoftのチャットボットのTayや女子高生AIりんなも紹介されていた。
丁寧で明晰な現状説明&警鐘だが、少し先の未来にも踏みこんでほしかった。テッド・チャンの「偽りのない事実、偽りのない気持ち」や「予期される未来」を彷彿とさせる。

ジョン・ウィズウェル「百手のキムを鎮めるに際してのガイドライン」は、週末翻訳クラブ バベルうおさんの同人誌『BABELZINE』 Vol.3に掲載されています。日本語で読めるのは現状これだけかな。
babeluo.booth.pm/items/3379127

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最初のツイートに訂正です。
誤:治療のために2人の特許出願を
正:治療のために金を必要とする2人の特許出願を

本作に乗り切れなかったの、インターネットでたむろするオタクの善性を私が信じられないせいもありそうです。
実現したい魔術領域について、アホの荒らしを装ってインターネットで「◯◯なんて絶対無理だろw」と煽り、反論から技術を絞りこんでいくシーンがあるのですが、いまいち素直に笑えませんでした。

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感想:アセクシャルなオタクカップルが、大組織に一矢報いる爽快なエンディング。インターネットの善なる部分にフォーカスされた作品でもある。コリイ・ドクトロウを連想する味わいです。
魔法の特許出願まわりはもう少し練られているほうが好みです。最後のほうのノアのセリフが正しければ、自明性で引っ掛かってそもそも特許登録までこぎつけられないような。

著者ウィズウェル自身がアロマンティック・アセクシャルで、慢性疼痛や聴覚障害を抱え、今まで見かけなかったような主人公たちを描く作家です。
私のお気に入り作家でもあるのですが、今回はスッキリしたストレートな筋書きすぎて乗り切れませんでした。ジェンダーやセクシュアリティのクィアネス部分は好きだし、元気が出ましたけれど。

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“D.I.Y.” by John Wiswell
ヒューゴー賞ショートストーリー部門候補。
tor.com/2022/08/24/d-i-y-john-

舞台:資本主義やエリート主義、気候変動による深刻な水不足に苦しめられる街。青春小説×科学のように魔法が機能する世界観。
登場人物:インターネットで独自に魔法研究にはげむキッズのノア(he/him)とマニー(ze/zir)。ノアはケルブ肺と呼ばれる持病を持ち、時おり激しい咳の発作に襲われる。マニーは腎臓の機能に問題があって車椅子を利用している。

あらすじ:
ノアとマニーは、ノアがマニーの弱小Youtubeチャンネルのコメント欄で活発に投稿していたことからリアルで会うようになり、かけがえのない関係になる。2人は大気から水を集める魔術を開発し、特許出願を試みる。
しかし英雄的魔術師ヴェイモン率いるオジマンディアス学園が、市から最安値で干ばつ対策を受注し、治療のために2人の特許出願を否応なしにかっさらっていく。オジマンディアス学園は裕福な一部の市民にのみ優先的にわずかな水を供給した。
だがその後、インターネット上に登録された特許やノウハウの全容がリークされ、水の生成技術は万人のものとなる……。

はしもと さんがブースト

「主人公ガクが路上で防犯カメラをハッキングするシーンでは、実際に社内で脆弱な監視カメラシステムを模した環境を構築し、侵入手順を作成しました」

セリフや目線、シェルやプロンプトまで監修されててすごい

TBS金曜ドラマ『トリリオンゲーム』のハッキングシーン舞台裏
ricsec.co.jp/news/tbs-trillion

今春大阪で開催され、ルールやポリシー、安全でアクセシブルな場作りから興味を持ったZINEの催し、次は12月に滋賀の旧大津公会堂で開催されるそうです。
instagram.com/p/CurbVJvvmmy/?i

2023年7月28日、神戸大学でアジア文学研究、アジア系アメリカ文学研究、華語文学研究の一環として、SFとジェンダーをテーマにした英語講演の現地&ZOOM配信があるそうです。

濱田麻矢さんのツイートより。
twitter.com/hamatgwa/status/16

>ウェルズリー大学のソンミンウェイ(宋明煒)さんが今秋リリースされる新著のうち、「ノンバイナリーな宇宙への想像力」についてのチャプターを先行でご報告いただきます(英語です)

“New Wonders of A Nonbinary Universe:
Gender and Genre Questions of Science Fiction”
日時:2023年 7月 28日(金)15:30-17:30
講師:宋明煒(Wellesley College; President of ACCL)
ディスカッサント:巽孝之(慶應義塾大学)、朴正煥(神戸大学)
司会:山本秀行(神戸大学)
お問い合わせ:濱田麻矢

Oh...アテンションエコノミー極まれり
>広告収入の分配を受けられるクリエイターは、Twitter Blueのサブスクリプションに加入し、支払いのためのStripe(ストライプ)アカウントを所有し、過去3カ月間の投稿のインプレッションが500万回を超えていることを求められる。

news.yahoo.co.jp/articles/354d

いつものタコのTシャツを着て在宅勤務をしていましたが、13時からのオンライン会議に備えて念のため襟つきシャツに着替えました。社会性に屈しました。

NEUTRAL COLORSは面白い雑誌ですよね。分厚くて内容も読みごたえがあります。

はしもと さんがブースト

こんばんは。この前ON READINGで見たNEUTRAL COLORSの雑誌をその場で滞在制作するという展示が面白かったのでブログ記事にしました。

NEUTRAL COLORSの展示を見てきた
on1000mark.club/?p=235

昨日流れてきたリブセンスの桂大介さんという方のコラムをさかのぼって読む。
この回は、ちょうど自分が考えていたことに近かったので引用します。

“人は怒りを適切に表明することで、周囲に対してことの深刻さを伝え、自分の大切なもの、重要なものを守ることができる。そのとき怒りは、人を傷つけるためではなく、問題を解決するために機能する。”

要するに怒りは適切に、コントロールしながら伝えようという話でした。
“また怒りを回避する人たちは、しばしば他者の怒りも許すことができない。誰かが怒りを表明した瞬間に、それを直視し話し合うことから逃げてしまう。”

「怒りは悪いもの? 職場で生じた負の感情をどう扱うべきか」(2022.10.04)
q.livesense.co.jp/2022/10/04/1

Teika Marija Smitsというラトビアとロシアにルーツを持ち、英国在住のSFF作家の第一短編集が奇想っぽくて気になります。2023年8月発売予定。

深宇宙に引っ越したバーバ・ヤーガ、彼らの“聖母”を探す蝿の大群、神話や文化を越境して出現するグリーンマン( ja.m.wikipedia.org/wiki/グリーンマン )の起源 etc.

newconpress.co.uk/info/book.as

主人公の青年自身が家族のケアを一手に引き受けている問題がどうなるのか、スマート都市の復興をどうするのか、インターネット上のデマや憎悪はどうするのか……本編終了後の後片付けが色々気になりましたが、時限ハイテクスリラーで面白いです。

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救助ドローンのインストラクターが、スマート都市のオープン記念式典の最中に発生した大地震で地下に閉じ込められた「見えない、聞こえない、話せない」女性をドローンで誘導し、脱出させることを試みる井上真偽『アリアドネの声』(幻冬舎)を選びました↓

道玄坂上ミステリ監視塔 書評家たちが選ぶ、2023年6月のベスト国内ミステリ小説
realsound.jp/book/2023/07/post

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