最初から最後まで人間の存在がごく希薄な山岳地帯で機械のアームがカメラをひたすら回す『セントラル・リージョン』、フル(180分)でYouTubeに上がっていました。人間嫌いの年末年始に人間向けだけど人間の視覚からややはみ出る映画鑑賞にいかがでしょうか。家でお菓子を食べながら2倍速視聴など可能なものでしょうか
https://www.youtube.com/watch?v=Q6YHm6kkEL8
スティーブン・スピルバーグが10/7の証言集ドキュメンタリーを作るというニュース(今も「さすらいびととして死ぬこと」の文章が好きですが)に、名匠が作る映画のイリュージョンや安定し退屈しない巧みな水平線より、今年映画館で見れたマイケル・スノウ『セントラル・リージョン』、スクリーン上斜めから侵入する傾いた水平線の非人間的な画面の支配を好ましく感じる感情が日ごと強くなってきます
今日放出した本の一冊:ドゥブラヴカ・ウグレシッチ『きつね』(奥彩子訳、白水社)
ユーゴスラヴィア生まれのクロアチア語作家である著者の、文学研究と個人エッセイを気ままに往来した本。とりわけ女性の扱いや、作家の妻や愛人に目を向けている。著者が読者から相続した辺境の小屋で出会った男との短く忘れがたい思い出が鮮烈。
どのパートもパンチワードだらけである。学費が高い私学のクリエイティブ・ライティング講座に招聘されたときの思い出も赤裸々。翻訳のなめらかさもすばらしい。
とりあえず「ストローブ=ユイレの軌跡」通えるプログラムは片っ端から行って、今回は絶望から寝ずにとても楽しいです。
第2期『ルーヴル美術館への訪問』、「サモトラケのニケ」から「カナの婚礼 (ヴェロネーゼ)」(全14点の絵画が撮影されているらしい)にジョアシャン・ガスケが書いたセザンヌの発言の怒涛の朗読が乗る観客にまったく容赦がない姿勢とセザンヌの容赦ない新古典主義の批判に、リドリー・スコットの『ナポレオン』再構成されたダヴィッドの絵をさらに再構成した空気がかすむ画面の前景にむっつりホアキンフェニックスナポレオンが配置された絵面を思い出して内心大爆笑でした…。フハハ…まだ面白い…
一体全体、映画界もその周りの世界も赤狩りの再演かいと動揺することも多いこの頃、これも年末から見たい
Film Gris 赤狩り時代のフィルム・ノワール
2023/12/23 ~ 2024/01/26
http://www.cinemavera.com/preview.html
>85年に実験映画監督トム・アンダーセン(Thom Andersen)が提唱した定義。1947~1951年に撮られた、アメリカ社会に対する左翼的な批判を特徴とするフィルム・ノワールの分派。冷戦や赤狩りを背景に、資本主義や反共産主義の問題を示し、個人よりも社会的問題に焦点を当てた作品が作られた。
パネルの作品がかっこ良すぎて、高い所に壁から倒れかかるように展示されていた1~2作品の下でぴょんぴょん飛んでいた。これは(ぐだぐだでなければ年内に)見たい
豊嶋康子
発生法──天地左右の裏表
2023年12月9日(土)- 2024年3月10日(日)
https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/toyoshima_yasuko/
定期的に2次創作の人魚もの、マーメイドAUで波打ち際にて爆発する私は『マーメイド・オブ・ブラックコンチ』モニーク・ロフェイ著、岩瀬徳子 訳、を読むべきでは…
帯裏の本文より
>バスタブのまわりは果物の皮や彼女の体から剥がれ落ちたもので散らかるようになった。髪に絡まっていた海藻は塊になって落ちはじめ、長くて黒いもつれたドレッドヘアが現れた。耳からは海水が滴り、小さな海の昆虫が這い出てきた。鼻からは軟体動物や小型のカニが出てきた。彼女はさまざまな海の小動物の棲み処で、そうした生き物は日が過ぎるうちに彼女を明け渡し、出ていった。バスタブの脇に小山ができ、その山はうごめいていた。カニが横歩きで逃げていった。においを嗅ぎつけてやってくる近所の猫を追い払わなくてはならなかった。
https://sayusha.com/books/-/isbn9784865283495
他の場所に行く気があまりありません