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『テーマからつくる物語創作再入門』(K. M. ワイランド)かなりアツいです。
本書は、テーマ・プロット・キャラクターの三者の融合によって物語を創作することを志しています。三者のどれかにフィーチャーした創作論は数多くあれど(そして、自ずと融合を論じることになった創作論もいくらかあれど)、最初から融合それ自体を目標として語るのは初めてお目に掛かりました。三者の融合を語るために、読者には三者に関する前提知識を求められるのですが、ある程度の創作論を読んだ人には強く勧めたい。
テーマ・プロット・キャラクターの融合は言うに及ばず、脇役の作り方や、サブテクストの深め方、シンボリズムによる意味の表現の仕方、テーマ(抽象)とメッセージ(具体)の行き来の仕方など、前提知識の要求水準が高い分だけ、高度な議論がなされています。
私は同著者の『ストラクチャーから書く~』を創作論のバイブルにして、適宜に『アウトラインから書く~』を眺めているんですが、『テーマからつくる~』は新たなバイブルになると確信しました。
ガチでお勧めです。
filmart.co.jp/books/978-4-8459

フィルムアート社のカクヨムに要約もあるので、とりあえずそちらだけ読んでもいいかも。
kakuyomu.jp/works/117735405519

『十二人の怒れる男』(シドニー・ルメット)

凄すぎる……。陪審員のために集まった12人が、容疑者を有罪か無罪か話し合いで決める密室劇。当初は有罪が圧倒的優勢だったが、話し合いが進むにつれ、形勢が変わっていく。
12人(しかも、それぞれに役名すら与えられていない)がずっと口角泡を飛ばしている絵面が続くのに、まったく目が離せない。12人それぞれの人間心理が変化していく様がありありと見えた。これは凄いですよ……。

『Undercurrent』(Bill Evans & Jim Hall)

ピアノとギターのデュオ。二つしか楽器がないはずなのに、空間に音が満ち満ちている。和声を操れる楽器の可能性を体感した。

『バイバイ、ブラックバード』(伊坂幸太郎)

借金やらなんやらで「あのバス」という死を予感させる存在に乗せられることになった、5股(!)男が女たちに別れを告げに行く話。
興味深かったのは本編よりも付録の伊坂のインタビューで「短編なのに長編の書き方をしてしまう」と述べていたこと。物語を構成するリズムが長編向きなんでしょうね。確かに、長編の方が冴えている。短編集は連作だったとしても切れ味がマチマチ。伊坂ほどのエンタメ作家でも、得意不得意が明確にあるんだな、と。でも、得意な型(ハメ手)に持って行って面白い話を作れる。
アマチュアの書き手としては、なんだか肩が軽くなったように感じられた。オールラウンダーにならなくていいんだって。

『三谷幸喜 創作を語る』(三谷幸喜/松野大介)

面白いっ! タイトルの通り、三谷幸喜が創作を語る(半生を振り返りながら)のだが、聞き手の松野大介が素晴らしい仕事をしている。二人が共通言語を有しているおかげで、テンポ良いインタビューになっている。
三谷幸喜の「制約から話を作る」というスタンスは、なるほど勉強になる。1時間ドラマはCMが挟まり、映画には尺や映画の作法がある。その制約がある中で表に出る脚本(映像)のウラのお話、厚みをどれだけ作れるかが勝負なのかな、と。

次の〈自分の小説〉は、『DIVE!』(森絵都)みたいな話を、舞台芸術でやります。

『スポーツクライミング教本』(東秀磯)

新しいチャレンジ、ボルダリングをしようと思って、まずはその教本を読みました。とにかく壁にくっついて、とにかく身体の重心と壁の支点(ホールド)との距離を意識して、「てこ」を作用させる。あとは実践してみよう。

『サキの忘れ物』(津村記久子)

半年ほど前に出先の図書館で読みかけになっていたのをようやく読み終えた。表題作のは、善意と悪意と無関心の三者のバランスが絶妙だ。このバランスがピタッとハマった時の津村記久子は、本当に氏にしか出来ない味わいを出してくれる。
ウワーッ……と感じたのは「喫茶店の周波数」。店を畳む数日前の喫茶店にやってくる人々の姿を描出する。閉店間際の喫茶店というやや特殊な環境に置かれることで、彼ら彼女らの人間性(ある意味では、醜さ、と言ってもいいかもしれない)が誇張される。その具合が何とも言えず不快で、その不快感こそが津村記久子の小説の魅力である。

今月はオタク活動に励んでおりました。ジャズ7枚、本22冊でした。

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241031 2024年10月度月報 - 箱庭療法記 yobitz.hatenablog.com/entry/20



『The Amazin Bud Powell Vol.2』(Bud Powell)

このアルバム、バド・パウエルの演奏で突如としてピアノの「タッチ」の気持ちが分かった気がする。

『GO』(Dexter Gordon)

テナーサックスのデクスター・ゴードンがリーダーの一枚。テナーサックスが自在に動き回る。かといって他の楽器がバックに回るかというとぜんぜんそんなことはなく、聴かせどころを作る。「Love For Sale」は特に面白い。

『Reaching Fourth』(McCoy Tyner)

表題作「Reaching Fourth」を聴いて「打鍵の力強さ」という概念がフンワリ伝わった気がした。

『Play Your Own Thing: A Story of Jazz in Europe』(ユリアン・ベネディクト)

ヨーロッパのジャズメンぜんぜん知らんくてついていけんかった。

オタク的にはアート・ブレイキー、ハービー・ハンコック、ホレス・シルヴァー、バド・パウエルらが特に言及されててマイルス・デイヴィスは一回だけだったのが興味深かった。ブルーノート的にはそうなんだ、と感じられて。

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『BLUE NOTE/ハート・オブ・モダン・ジャズ』(ユリアン・ベネディクト)

ブルーノートの設立者をジャズメンが語るドキュメンタリー映画。1997年公開だけあって今は物故者となったミュージシャンも多く存命で、レジェンダリーな面子だった。ジャズが商業流通したのがほんの限られた人物の情熱によるものであるの、素直に面白いですね。あの特徴的なモダンなレコードのジャケットも元広告デザイナーの実験的な試みによって生まれたらしい。そういう意味で、私たちが「ジャズ」として認識している文化は偶然の賜物だったのかもしれない。

『ジャズを聴く』(ジェリー・コカー)

ジャズに用いられる音楽理論をちょうど良く絞って紹介しつつ、実際の名曲の演奏がどのように実践されているかを詳細に解説する。理論と実践のバランスの良い一冊。ただ、私がまだ未熟なリスナーで、その何分の一もわかったかすらあやしい。

『「簡潔さ」は最強の戦略である』(ジム・バンデハイ、他)

読む価値なし。シンプルに書けという本なのだが、著者の来歴が延々と語られて、戦略に説得力がない(公開範囲間違えてたので再投稿)。

短期間で大量にラノベを読んだので、フィクションではない本を読んで自分のリズムに戻していく。

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