『悪は存在しない』面白かったなー。過去作では良くも悪くも違和感になってた(すごいと思うけど)異様なロングテイクも今回はそれだけで面白いところまでいっているし、何より冒頭から何もかも不穏すぎるのが妙なユーモアを宿らせている。誰の視点だよ、が連発されるカメラワークも楽しいし、全体に「騙し」という映画の本質だけでやりますんで今回は、という軽やかさがある。惹句の「これは、君の話になる」も含めて正調とみせかけるのがうますぎて「なんで???」になるのがおかしすぎた。
そうなったらそうなるよね、を反復させながら謎の地平に連れていくのがこの世の外の生き物みたいな花ちゃん(ひとりだけ「にんげんのこども」性が低い綺麗なお顔と髪をした花ちゃんは他の子たちと遊んでるとこがどこにもないのだ)、あの子は開拓四世か。
という意味でまさかここで「日本人が移民だったころ」と繋がるとは思わなかったよ!いわゆる辺鄙な地とされるとこの描写の説得力に唸った。濱口監督は「概念としての」の人かと思ってたのでそういう複層性も含めた細部の「知ってなきゃ書けないこと」が全面に出てるのすごいなと思った。加熱式タバコと紙巻きタバコの使い分けもいいし、息の白さか煙草の煙かわからないポーチのシーンとかも忘れがたい
私は本当にえらそうな人が嫌い、立派でもえらそうな人が怖い
恋するプリテンダーがいいのは「どうせ幸せになるふたりの話を見る幸せ」に加えて「不幸せな人がそもそもいない」世界にあるんじゃないかなーと思って、なんかほろっとしちゃった。フィジカルギャグ多めで気が利いてるとこと鈍臭いとこのバランスは全然完璧ではない、でもこの「いい感じ」は好きだなあと思った。バンビみたいなシドニー・スウィーニー、懸念のグレン・パウエルとの年齢差も劇中言及あるし何しろグレンさんがちゃんと純情に見えるのでそんなに気にならなかった。とにかく「陽」な映画が減ってるのでこのアメコメの眩しき中庸は大事にされてってほしい。
両親たちもお姉ちゃんたちも友達も「はー、この人すきー」のパートナーと一緒でみんな幸せそうなのね。元カレ元カノも友達も良い奴でそれ以上でも以下でもないのである。なので映画自体がアッパーなんである。
まあ問題の処理の仕方はロマンティックなとこ以外はあんまり良くないし、ステイ・フレンズほどの傑作じゃないけど(あれはほら、選曲がドンピシャとまではいかずとも世代的にグッとくるものあったし…)、「恋のからさわぎ」ほどに良質なドラマはないけどさ。でもこのテンションの「見た目のよい人たちがわちゃわちゃイチャイチャしてるのたーのしー!」のなんでもなさが、今の私にはちょうどよかったのだ。
ゴジラxコング 新たなる帝国について。ほめてはいない感想。
前作は「ゴジラが出てくるところはだいたい良かった。コングだけのところはつまらなかった」と書いてたことすら忘れてるくらいどうでもよかったんですが(髑髏島段階から「コングパイセン」というキャラの消費のされ方がヤダ、「巨獣」の人間性に振るの好きじゃない)頭の悪い「おこったぞー!」の大雑把さにシフトしてるこっちのほうがどっちつかずだった前作よりは好き。ダメ出しさせないくらい全方面に「見たことある」をひたすらサイズアップし、カイジューモリモリにして代物を「どうだーっ」と自信満々に突き出して堂々とヒットさせてるアダム・ウィンガードの胆力に学びたい。
とはいえ19世紀SFまで戻るのかよというか80年代アドベンチャー映画的な雑みは予想外に良かったと思う。しかしまあ「こういうのは筋はあってなきに等しい、とはいわず、アクションのために用意する筋としてつまらない、が正しいと思う」という感想もまた変わらず。
やはり我が家ではキングオブモンスターズが解釈一致なのである。最高かっこいいゴジラを撮るんじゃという覚悟が決まっていたし、わけのわからんものだから神なんよという態度があった。超自然の暴力性に役者の顔力で立ち向かうあのあり方が私は好きです。
異人たち、微妙に気になってるのがうっすら地鳴りみたいなゴゴゴゴ…音で(ウィークエンドにもさざなみにも出てきたと思う)あれこの映画のサウンドデザインだったのか、隣のスクリーンでかかってたゴジラコングの音だったのかわからないんだよな…ゴジコンも相当ドカドカしてそうだから…アイアンクローのときはオッペンハイマーのゴゴゴゴ揺れが隣からきてた気がする(ショーン・ダーキンもゴゴゴゴ…音使う人だとはいえたぶんあれは本編とは関係なかった)、最近これ多いな…まあ真相はどっちでもいいや、映画が良かったから余裕
やっと映画館に復帰。ということで『異人たち』見てきた、しみじみとよかった。ファーストシーンからガラスや鏡に映る姿の無限の広がりに人間の哀しさがうつっている。ありえたかもしれない複数の人生。いろんなことが曖昧なままなのも物語のあり方として好きだった。そうだったらいいのにな、そうだったらいいのにな…アイアンクローに並ぶタイトルの良さ(わたしたちみんな!)も光る。
アンドリュー・ヘイは「親密な他人」(異人というより他人のニュアンスが生まれている気がした)の話が本当にうまいですね。みんな後悔してるし、みんなさみしいし、やさしくしたいしやさしくされたい、を抱えている、その感情は生死を問わず存在し続ける、そうでしょう?
台詞で言及されることもあって、キングの影響も強く感じられる(ホラーとは愛の物語である)ゴーストストーリーとして非常に好ましく見ました。私はアフターサンのよさはよく分からなかったけど(ポール・メスカル以外にも共通項は多いと思う)こっちは素直に好き。「足りることなんてないのよ」に込められるすべて。
しかしアンスコさん本当にうまいな、顔がこどもになってるときと普段の表情とどっちつかずになってるときが全部違う…その潤んだ目や泣き出すのを堪えるような口元にただただ見入ってしまうのだった。
@rucochanman ありがとうございますー、たぶんこれ以上酷くはならないと思う…いいこと…落ちてないかな…
@spnminaco ありがとうございます😭 もう今年の不運は全部4月に集中したと思い、この先は悪いことは起きないと信じます😭
体調不良の話ばかりしてますが、昨日からの発疹が広がり続けて本当に全身が大変なことになってしまった。薬塗ってくれたナースさんが「わあ、本当に全身…」って同情してくれた…つらーい
昨夜は『女系家族』見て大映だー!大映だー!と喜んでいた。大問屋の三姉妹の遺産相続をめぐるまあ凄まじい戦いの話、台詞ひとつひとつがギチギチに性格が悪くて、超流麗なキャメラ(相続したものをひとつひとつ映し出す、その画面のきっぱりとした綺麗さ、これみよがしな季節の風景などどこにも置かない豪奢)、そして圧倒的怪物的な役者力とまあめっぽう面白い。優れた女性映画は優れた男性映画になるのが常なんである。二代目鴈治郎さまと北林谷栄さまのとこ全部最高だったわねえ…
金と家と力があれば女だってそりゃパワーポリティクスやるに決まってるだろ、下々の者は人とも思わんだろ、最初から勝てない側は男も女も有利な算段のためならなんでもやるだろ、という当たり前のことをやっているのがすき。ありそうにみえて全然情念のドロドロがない、即物的なとこがいいのよな…女は怖い系の話では全然なく、どこまでも酷い話なのだが妙に爽やかなとこがある。痛めつけられるあやや様のとこは「あやや様がそのままで済ませるわけがないだろ」と思っていてもちょっとあまりにも凄まじいのでギエーッとなるが、まあ人だと思ってなければなんだってしますよ女だって人だからねえ。なんたってここは血統の国なんである。
勝手がわからない