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数年積んでいた古川日出男訳の『平家物語』をちびちび読みはじめた 思ってたより話のひとつひとつが短く区切られてて中断しやすい

14、5世紀のネーデルラントの文献がよく引かれていて、フィリップ善良公とシャルル突進公がとにかくよく出てくるんだけどちょうどジャンヌ・ダルクが歴史に姿を表したころで、ジャンヌがシャルル7世の戴冠を助ける→ブルゴーニュ公国の捕虜になる→イングランドに引き渡されて処刑 あたりのブルゴーニュ公国の公主がフィリップ善良公なのね

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眠剤の副作用でときどき寝る前の記憶がすっぱりなくなるのもあり、読むのは短編ばっかりだったのが、もしかしてだいぶ本が読めるようになってきたかも?て思えるようになって、ホイジンガの『中世の秋』を読むのを再開した 中世末期、とにかくなんでも儀式化してて席のゆずりあいでめっちゃ時間使って、ゆずりあえばあうほどそばの人に与える感銘も深まったとか、帰ろうとする客人をなんとかして引き止めるのが作法になったり、宮廷で女官たちのなかで誰と誰は手を取り合って歩いていいか、どっちがどっちを親しい関係に誘うべきかまで決められていたらしくて中世で生きてくのめちゃくちゃ大変じゃん ちょっと生きてけないな〜って…思った…

マルグリット・ユルスナールは生涯の同性のパートナーと出会う以前に愛した男性もまた同性愛者であったことから「どんなに愛しても報われない」ことを身を以てあじわい、その苦悩を作品に落とし込んでいるんですね 「源氏の君の最後の恋」は老いて隠居し、目が不自由になってゆく光源氏をかつての情人のひとりである花散里が、自分がかつての情人であったことを隠して何度も会いにいき最期を看取るという話で、「老いた光源氏をどんなに献身的に愛しても報われない花散里」という構図が、かつてのユルスナールが体験した、報われなかった思いを古典文学をとおして昇華していて、本当に苦しかったのだろうな 多田智満子の訳がとにかく美しくて、あと光源氏のワア気持ち悪…て部分がきっちりちゃんと気持ち悪いのがよいです
白水Uブックスの『東方綺譚』はユルスナールの本の中では一番手に取りやすい価格なのでおすすめ

わたしは源氏物語はうっすらあらすじを知ってる程度なんだけど、爆モテ光の君時代があっても帝にはなれず、歳をとって栄光の日々は過ぎ去り、遠い空の黄昏の埋み火を盲いてゆく目で眺めているような光源氏の最期をユルスナールが抽出したのは見事だなあと思う

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ちょうど源氏物語が大河で活気づいてるようなのでマルグリット・ユルスナールが源氏物語の二次創作書いてたの思い出して『東方綺譚』収録の「源氏の君の最後の恋」を読んだのだった
源氏物語の「幻」と「匂宮」の間にある「雲隠」(本文は現存せず、巻名のみ)にあたる部分、光源氏が隠居してから亡くなるまでの部分をユルスナールのオリジナル展開で書いてるのが「源氏の君の最後の恋」なんだけど、紫式部が敢えて書かなかったのか、本文はあったけれど平安時代以降の戦乱で失われてしまったのかを思いながら読むのも楽しかった

ヴァージニア・ウルフ「ラピンとラピノヴァ」とトーベ・ヤンソンのトフスランとビフスランについての補足

ムーミン公式の上記の記事にはトーベと既婚のヴィヴィカがお互いをふたりだけの秘密の呼び方で呼んでいたことをトフスランとビフスランに落とし込んでいて、それを男女の婚姻によって発生する名前の強制的な変更や夫の夫人という肩書きへの違和感、家族イベの嫌さの中で夫との間で空想を共有するウルフの「ラピンとラピノヴァ」に重ねるのは見当違いでは?て自問自答もあったのですが、「ラピンとラピノヴァ」の著書のヴァージニア・ウルフ自身も男性であるレナード・ウルフと結婚している間に女性の恋人がいた期間があり(トーベとヴィヴィカの関係性に重ねるとヴィヴィカ側の立ち位置にいる)、それが著作に非常に影響を与えているようなので、それを踏まえて書いています

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ふたりだけの国

ヴァージニア・ウルフ『青と緑』収録の「ラピンとラピノヴァ」の感想を書きました

sizu.me/tumugu/posts/b2x87k129

ホリデイシーズンだ!ホリデイシーズンといえば…怪異!ということでシャーリィ・ジャクスン『丘の屋敷』を読みはじめました いまのところ特になにかが起きたわけではないのになんかすごくいやを書かせたらほんとにうめえな…

春の嵐|ヘルマン・ヘッセ
デミアン|ヘルマン・ヘッセ
ずっとお城で暮らしてる|シャーリィ・ジャクスン
東方綺譚|マルグリット・ユルスナール
ムーミン谷の仲間たち|トーべ・ヤンソン
霊応ゲーム|パトリック・レドモンド
アクロイド殺し|アガサ・クリスティ
ガラスの街|ポール・オースター
真夜中の相棒|テリー・ホワイト
10月はたそがれの国|レイ・ブラッドベリ
あの薔薇を見てよ|エリザベス・ボウエン

呪術アニメの録り溜めてたのを観て疱瘡神といえば山尾悠子さんの『ラピスラズリ』だ!てなって(作中に出てくる合計6枚の銅版画のうち1枚のタイトルが「痘瘡神」)読み返してるんだけど、『閑日』で冬眠から目覚めた少女を助けるゴーストの邂逅がすごく好きでここだけ永遠に溶けない飴を口に入れたみたいに味わってしまう

『奇病庭園』牙に就いて 

結婚できる年齢になると犬歯を抜かれる女たち、理由は「夫に逆らうといけないから」。犬歯を抜かれて、これでちゃんとしたお嫁さんになれると安堵した、それが当たり前だと思っていた、けれど婚礼の前夜に抜いたはずの犬歯がふたたびするすると生えて牙になって、そのときにやっと「ほんとうはお嫁さんになんてなりたくなかった」と気づいた「もはや花嫁ではない、牙のある娘」の話 あまりにもよすぎる

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体調があまりよろしくなくて灯りを必要最低限にした状態でようやく川野芽生さんの『奇病庭園』を読み終わり、ハァ〜〜これは…すごく…すごい…よい読書体験であった……読み終わってしまうのがあまりに惜しかった 読んでるあいだ自分も皮膚を掻いたところから鱗が生えて、触覚が生えて、毛皮が生えて、複眼になっているんじゃないかって気がした

レイ・ブラッドベリ『10月はたそがれの国』に収録されている短編『びっくり箱』 

子どもの視点から語られる話で中盤あたりまでは子どもが有している知識でしか物語の骨組みがわからないので???てなりながら読んでたけど途中から急にわかりはじめるとンギャッ…てなる 調べたら萩尾望都がまんが化していて、M・ナイト・シャマラン監督が『ヴィレッジ』という映画で明確にこのブラッドベリの短編をオマージュしているらしく(どっちも知らなかった)
個人的には読みながら小川洋子『琥珀のまたたき』だ……になった

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hontoのレビューとか読んでるとブラッドベリの文章にはあたたかみがあり…て書かれていたりしてそう…かなあ…!?最初の『こびと』とか悪意しか感じないが…!??てなった中で『使者』はあたたかみがあった おりこうドッグが病気で寝たきりになった少年のために外から季節のにおいを持ち帰ったり少年のためにお客さんを連れてきたりする話でおりこうドッグはかしこい、なにしろおりこうドッグだから……そしておりこうドッグはそのかしこさゆえに連れてきてしまうのだ……墓の下から……(この話もさいごの一行がすごい)

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せっかく10月だし…て思って積んでたレイ・ブラッドベリの『10月はたそがれの国』を読んでるんだけどどの話読んでもこんなにいやな気持ちを引きずるのシャーリィ・ジャクスン以来だな… 怪奇の色が濃いのと、どの話もさいごの一行のオチがすさまじい

『奇病庭園』翼に就いてⅡ 

自らの意思で塔に来てキアーハに出会って、いままでの名を捨てて意味をもたない「イリュアン」という名前を自分で選びとった少女の塔での日々はあまりにも静謐で、それ故にその後のイリュアンに起こったあらゆるできごと(イリュアンを「助けに」やってきたフュルイに繰り返しデッドネームで呼ばれ続ける、まるでイリュアンの意思がないかのように「あなたは魔物に唆されている」と説得され続ける、教団に戻されたあとの暴力、キアーハとの別離による絶望)が本当に…めっちゃ…つらい…幻想小説でかつクィアな属性を持つものたちが克明に描かれていて、いまこういう作家さんがいてくださることがわたしにはとてもうれしい

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『奇病庭園』翼に就いてⅡ 

わたしは山尾悠子さんの『ラピスラズリ』の亡霊と少女の邂逅を描いた「閑日」がとても好きで、なので奇病庭園でのイリュアンとキアーハのふたりの邂逅があまりにも好きなのですわ キアーハの「あの子が私を呼んだときは」「どこにいようと迎えにいく。すぐに迎えに行く」という言葉は月も星もない夜にただひとつ目の前を照らしてくれる灯りであり続けてくれる

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いま川野芽生さんの『奇病庭園』を寝る前にすこしずつ読んでるんだけど、天井の灯りを落として読書灯だけのほの暗さの中で読んでるとだれかの遺した古い大切なもの入れの箱の中をこっそり覗き込んでるような気持ちになる 箱の中には貝殻やゆがんだ真珠や虫の抜け殻や動物のひげが仕切りもなく一緒に入れられていて、それらはそれぞれ住む場所も寿命も違うものたちが「かつて生きていた証」でもある…

Fedibird

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