いま川野芽生さんの『奇病庭園』を寝る前にすこしずつ読んでるんだけど、天井の灯りを落として読書灯だけのほの暗さの中で読んでるとだれかの遺した古い大切なもの入れの箱の中をこっそり覗き込んでるような気持ちになる 箱の中には貝殻やゆがんだ真珠や虫の抜け殻や動物のひげが仕切りもなく一緒に入れられていて、それらはそれぞれ住む場所も寿命も違うものたちが「かつて生きていた証」でもある…

『奇病庭園』翼に就いてⅡ 

わたしは山尾悠子さんの『ラピスラズリ』の亡霊と少女の邂逅を描いた「閑日」がとても好きで、なので奇病庭園でのイリュアンとキアーハのふたりの邂逅があまりにも好きなのですわ キアーハの「あの子が私を呼んだときは」「どこにいようと迎えにいく。すぐに迎えに行く」という言葉は月も星もない夜にただひとつ目の前を照らしてくれる灯りであり続けてくれる

『奇病庭園』翼に就いてⅡ 

自らの意思で塔に来てキアーハに出会って、いままでの名を捨てて意味をもたない「イリュアン」という名前を自分で選びとった少女の塔での日々はあまりにも静謐で、それ故にその後のイリュアンに起こったあらゆるできごと(イリュアンを「助けに」やってきたフュルイに繰り返しデッドネームで呼ばれ続ける、まるでイリュアンの意思がないかのように「あなたは魔物に唆されている」と説得され続ける、教団に戻されたあとの暴力、キアーハとの別離による絶望)が本当に…めっちゃ…つらい…幻想小説でかつクィアな属性を持つものたちが克明に描かれていて、いまこういう作家さんがいてくださることがわたしにはとてもうれしい

『奇病庭園』牙に就いて 

結婚できる年齢になると犬歯を抜かれる女たち、理由は「夫に逆らうといけないから」。犬歯を抜かれて、これでちゃんとしたお嫁さんになれると安堵した、それが当たり前だと思っていた、けれど婚礼の前夜に抜いたはずの犬歯がふたたびするすると生えて牙になって、そのときにやっと「ほんとうはお嫁さんになんてなりたくなかった」と気づいた「もはや花嫁ではない、牙のある娘」の話 あまりにもよすぎる

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