自分で書いていて気づきましたが、私は昔から日本のこの規範ー懲罰システムが大の苦手だったのでした。
子供の頃、どう考えても大したことじゃないのに、目上の先輩に叱りつけられることが何度かありました。けれど、いくら考えても叱られている意味がわからなくて、ひどく困惑したものでした。
今にして思えば、私にとっては所与の「規範」じたいが意味がわからないもので、規範を逸脱したことも大したこととも思っていないし、それを逸脱したからといって怒ってくる先輩の態度はさらに意味がわからないものでした。
性犯罪判決への抗議デモに対して、わーわー騒いでる人たちは、私にとっては、上記の先輩とまったく同じに見えます。
いや、それ、騒ぐほどのことじゃないし。あなたの持っているその「規範」、論理的におかしいし、時代錯誤だし、世界からも遅れているし。自分でしっかり論拠を説明してから、私に言ってくれないかな。私には私のやり方があるんで。
小学校に戻ったら、当時の先輩にそう反論すべきだと、小学生の自分に教えてあげたい。
それで学校に行けなくなったら、オンラインで勉強すればいいからね。
所与の規範を破った者には懲罰を与えるとともに、なにかとんでもないことをしでかしているかのように思い込ませることによって、自己規範として内面に擦り込み、やがて、擦り込まれた者も他者への抑圧的な振る舞いを行うように教化していくというのが、規範ー懲罰システムのメカニズムですから、ひとつひとつ論理的に妥当性を検証していきましょう。
「いや、そもそもそんな騒ぐほどの大ごとじゃないでしょ? 騒いでいるあなた方の方が論理的に妥当でないと思いますけれど?」
「いや、それたんに論理のすり替えでしょ。それとこれ関係ないし」と反論できるようになるまで、自分を鍛えてがんばりましょう。
これができるようにならないと、ミソジニー大国日本では、女性はなかなか生き延びられませんから。
判決に対して不当だと思ったら、デモをするというのは、これまでだって、性犯罪に限らず行われてきたことですし、なぜ性犯罪への判決へのデモだけ、ことさらに司法の独立を脅かすものであると騒がれるのかが、まず意味がわかりません。
フラワーデモのきっかけとなった複数の性犯罪の裁判の事実認定に見られるように、過去、日本の司法においての性犯罪の事実認定は、そのほとんどが女性である被害者にとって極めて不利なものとなっていました。
フラワーデモなどでようやく社会問題化して、裁判官などの司法の場でも性犯罪の被害者の置かれる心理状況についてなどの研修が行われるようになったと、いつか新聞記事で読みましたが、まだ行き渡っておらず、すべての判例で性被害者に対して、誤解に満ちた、加害者側にとって都合の良い事実認定がなされているのではないか、ということが怒りが噴出した背景にあるのであって、ちょっと目についた判決ニュースが自分の期待に反してムカついたからデモしてやるぜ、というような簡単な話ではないと思います。
滋賀医科大学の性的暴行事件の逆転無罪判決、多くの女性は判決に見られる男性目線のロジックでの事実認定に激怒しているのに対して、判決文の法的解釈を延々としている男性知識人が多く見られ、まったくかみあっていない感です。
「君たちは冷静さを失って、客観的な認識ができなくなっているんだよ。僕たちが解釈して教えてあげるよ」というウエメセな態度が、これまた日本社会のいつもあるあるで、さらにまたうんざり感を覚えます。
NHKのクロ限の拡大スペシャル能登半島被災者家庭と中継をつなぐのはいいけれど、話をするのが高齢の男性世帯主だけ、というのは多いに問題ありと感じました。
まわりの家族は違うことを思っているだろうに、世帯主が家族すべてを代弁してしまって、それが家族の合意のように番組が演出するのは、非常によくないと思います。
福島では大きな問題になったことです。
世帯主への意向調査だけで復興計画を立てて、高齢男性世帯主は帰りたいと思っていても、自分の世話をしてくれる配偶者や子供たちは嫌がり、実際の帰還数は見込みよりもはるかにすくなくなってしまったとか、世帯主以外の声は抑圧されて、まちづくりにも復興計画にも生かされなかったとか、もはや常識と言っていいくらいに知られていることなのに。
Xユーザー層が現実の社会構成層と違うことについて以前から気になっていたのですが、その調査結果が。
男性層については、なるほどなぁ、と思うことばかりです。
気がつかなかったのは、女性ユーザー層の偏りで、確かに、日本の性規範文化のなかで、自分の意見をわざわざ発信する女性は、自分に自信があって経済的にも豊かな層が多くなるのは必然に思えます。
Xの男性メインユーザー層と女性メインユーザー層は、相性としては「最悪」に思えますので、X発でアンチフェミニズム・フェミニズム双方が過激化して社会対立が強まるというのは、当然の成り行きのようにも見えます。
なぜ「20代男性Xユーザーの未婚率」は異常に高いのか…「収入もなければ恋愛経験もない」あまりにつらい特徴 20代男と30代女はXをやると結婚できない?
#プレジデントオンライン https://president.jp/articles/-/89638
AIの発展は、今が盛り上がりのピークで、近いうちに頭打ちになるのでは、とも言われている件についての記事。
となると、AI需要を見込んでの電力需要増加予想はどうなるんでしょう。
「サツキバー氏は、ハードウェアの進化で計算能力は向上していく一方、データには限りがあると指摘。「データはAIの化石燃料といえる。インターネットは一つしかない」として、進化には新たな手法が必要になるとの考えを示した。」
AI開発、限界と可能性は 国際学会で議論
https://www.asahi.com/articles/DA3S16113682.html
新聞記事がおもしろいなと思うのは、ものすごく短くて、記者の個人力アピールがなされているとも思えない、たんたんとした記事の中に、重要な情報がスッと差し込まれていたりするところです。
この短い2行、とても大切な情報なのですが、ほかの記事では書かれていなかったと思います。
「政府は今後、具体策を検討し、来夏までに「復興基本方針」を見直す方針だ。財源についても来夏ごろをめどに示す。」
財源が来夏ということは、参院選と同時期なので、選挙後になる可能性が高いように思います。
具体策は来夏「まで」となっていますが、これまでの例から考えると選挙後になるように思います。
現在、与野党が復興政策について述べていることは、ほとんどが選挙向けのリップサービスであり、実際どうなるのかはわからない、ということのように思います。
震災復興事業、1兆円台後半 福島の除染など 26~30年度、政府調整
https://www.asahi.com/articles/DA3S16113615.html
「ふくしま復興再生道路」、地権者の方が反対していらしたのですね。
正直、双葉郡に乱立してるあの道路は本当に必要なのか、と多くの人が思うことだと思います。
けれど、この記事にあるように、あらゆることが「復興支援に寄与する」で有耶無耶にされて、おかしなことが罷り通るようになってしまっているのが現状だと思います。
「復興事業のはずなのに、避難者の帰還を疎外するのではないか」というご懸念は、まっとうだと思いますし、多くの人がそう思っていると思います。
「東京電力福島第1原発事故で被災した福島県富岡町で県が進める「ふくしま復興再生道路」整備事業に一部地権者が反対している問題で、東北地方整備局が10月29日、事業の公益性を認め告示した。建設が決まり、今後は補償手続きに移るが、古里の変容を危惧する声は宙に浮いたまま。「復興政策に地域再生の視点が欠けている」と専門家が指摘する。」
古里変容の危惧、宙に浮く 福島・富岡の復興道路、東北地方整備局が事業認定 <リポート2024>
https://kahoku.news/articles/20241224khn000057.html
県庁だけではなく、厚労省の医系技官でもよく見かけましたが、本来の職務そのものよりも、自分たちの権限とポストを増やすことに関心を注ぐ役人は、少なからず見受けられます。
結局、売上といったわかりやすい指標で自分の仕事の成果が確認できるわけではない役所だと、なにをやりがいにするかというときに、権限とポストの拡大に向かう人が県庁のような、外部との接触が少ない組織では優勢になるのだと思います。
基礎自治体は、住民の反応が目の前で見えることが多いですから、それが指標になりますが、県庁はそれもありませんから。
その性向に従って、復興後も立ち居振る舞いし、自分たちの権限とポストを増やすことが=「福島の復興」と強弁しても恥じらいも覚えなくなった人たちが福島県の復興シーンを動かしているのだろうと思います。
福島県庁職員の本庁課長職以上の退職後の再就職先、いわゆる天下り先は以下で公表されています。
再就職先を見ると、福島県立医科大学がもっとも多いですが、観光物産館やイノベ機構、心のケアセンターといった復興関連の事業を受託している組織が多くみられます。
福島県立医科大学は復興予算がもっとも多く注がれた組織のひとつで、いくら放射線の健康被害が懸念されるからと言って、ここまで医大にだけ、注ぎ込もうとするのか不思議に思っていたのですが、県庁の天下り先ポストをこれを機に拡大したかったということでしょう。
結局、湯水に注ぎ込まれた復興予算は、県庁の天下り先ポストを確保するため、天下り組織に率先して注ぎ込まれ、その組織と権限を肥大化させ、「県庁帝国」を作り上げる方向性に向かった、ということだと言えるのではないでしょうか。
https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/01125c/saisyushokukohyo.html
日本全体ジェンダー状況はいつまで経ってもひどいままで、今や発展途上国よりもひどいのですが、福島はそのなかでもさらにひどいほうで、職業人としての未来が限りなくゼロなのは、上の世代を見れば明らかですから、ずっと働くことが当たり前になっている世代の女性たちにとっては、出ていけたら出ていきたいと思うのは当然なのですよね。
組織や会社のなかで、女性が男性と同じように活躍できている場所はほぼありませんし、活躍していると取り上げられるのは、自営業か非営利か学生くらいです。
そのうえ、結婚したら、男性の所有物で、一人前に扱われなくなりますし、未婚も増えれば、県外流出もするはずです。
そんなの大袈裟に調査しなくても、福島県内在住の女性何人かに聞いてみれば、いくらでも答えてくれると思います。
作家/NPO福島ダイアログ理事長/博士課程後期在学中
原子力災害後の復興政策と地域住民のギャップを埋めるためのローカルプロジェクトの意義と重要性について研究する予定。
・著書『海を撃つ』(みすず書房)
『スティーブ&ボニー』(晶文社)
『末続アトラス2011-2020』(福島のエートス)
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