『もなかと羊羹』
仲俣暁生著 破船房 2024年10月7日発行
軽出版。zineより少し本気で、一人出版社ほど本格的ではない、即興的でカジュアルな本の出し方。巨大な装置産業である出版産業から離れて、執筆から販売まですべて一人で、気楽にサクサクと出版していく。そんな「軽出版」という言葉の生みの親である中俣さんによる軽出版エッセイ。同人誌の経験がある私も、ちょっと趣向を変えて挑戦してみようか、という気分にさせられた。コンテンツの作成だけではなく、デザインから印刷発注、そして1冊1冊を販売するところまで手がけるの、本当に楽しいんですよね。商業出版の見本誌が届くのも嬉しいけど、印刷所から自分の同人誌が届いた時の方が嬉しさは大きい。後者は利益にはならないのにね。
ヒントン先生がノーベル物理学賞、なんかこじつけ感が否めない、チューリング賞ならわかるのだけど……と思ったら当然のようにチューリング賞も取っておられるのであった。
とあるWeb小説を読んでいて、ああこの作者の人は、サーバーとネットワーク(WAN)とWiFiがよく理解できてないんだろうな、と。枝葉末節ならともかく、物語の根幹に関わる部分での勘違いはけっこう厳しい。自分もやらかしてしまいそうな恐れはあるけど、自分では気づきようがないのよね。
極右論者のジョーダン・ピーターソンのオンライン大学の内部潜入取材の記事をみていてあらためて思ったけれども、やっぱり保守層に最初に攻撃され、乗っ取られる学問は人文科学なんだなと。人文科学を攻略した後、徐々に生物学や医学などを侵食しようとしているのでしょう。人文科学はあらゆる学問の独立を守るうえでの最初の防波堤であり、全ての学術関係者は人文科学の保護に全力を投じないと、あっという間に自分の学問も変な輩に支配されてしまいますね。
https://slate.com/life/2024/10/jordan-peterson-academy-university-online.html
『ヘンリー・ライクロフトの私記』
ギッシング著、平井正穂訳、岩波文庫 1961年1月発行
ハードカバーや古典新訳文庫版ほど岩波文庫版は読み返していなかったかもしれない。いつか自分でも訳してみたかったけど、原文はけっこう言い回しが難しかった気がするのと、既存の翻訳ほど巧みに訳せないなと早々に諦めたのだった。ギッシング最晩年の著作。読み返すたびに、つまり歳をとるごとに、心に迫る部分が増えていく。
"だが、私は再びこれらの書物を手にすることはなかろう。年月はあまりに早くすぎてゆくし、しかもあまりに残り少ないのだ。"
"明らかになにかが初めから私には欠けていた。なんらかの程度に、たいていの人にそなわっているある平衡感覚が私には欠けていたのだ。"
読書が捗らない本好き。フリーランスと無職の狭間。オカメインコとセキセイインコのお世話係。好きなもの:本、web小説、生成AI
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