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若い頃にアメリカを旅行したとき、泊めてもらってる家にバスで夜に帰ろうとした時の怖さを思い出したりもしました。夜で町並みの印象が変わっている上に、車内放送がないので遠くの標識を見るしかないのに暗くてよく見えず、ずっとどこで降りるべきなのか緊張しっぱなしで。

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リカルド・アドルフォ著 木下眞穂訳『死んでから俺にはいろんなことがあった』(書肆侃侃房)、不法滞在している言葉の通じない街で、妻と子と共にちょっとしたことから道に迷ってどうやっても家に戻れない悲哀が、ユーモラスな語り口で描かれていて、すごくよかったです。

装画(小山義人)からいいんですが、ほんとにこんな雰囲気。ブコウスキーが書いた『エペペ』みたいとも思いました。語り手は過去の経験のせいか妄想気味にいろんな可能性を考えすぎるあまり常に裏目に出る選択ばかりしてしまうんですね。地下鉄の場面には笑った。妻とのやりとりも妙にリアルでいい。

ホワイトゾンビのThrust!の、「何を言うとるんじゃ 元気出せ ボケチン」という日本語をどっからサンプリングしたのか長年気になっている。

書店で「に」の棚にある酉島伝法(とりしまでんぽう)の本を気にかけてくださる方が多く、ありがとうございます。よろしければ、正しい名前をお店のかたに伝えていただけると、よりありがたいです。

ウォルドロップの短編をいろいろ読み返してたら、クロスオーバーものを読みたい欲が増し、『リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン』を久々に開いたら、やたらと面白くて。

「第4回みんなのつぶやき文学賞」国内篇にて、『奏で手のヌフレツン』が小川哲さんの『君が手にするはずだった黄金について』と同位の第4位となりました。投票してくださったみなさまありがとうございます。

youtube.com/watch?v=Ak8d6bmfkS

ずっと読みたかったスタニスワフ・レムの「浴槽で発見された手記」、カフカを超える不条理さで官僚制や諜報戦を風刺していてむちゃくちゃ面白い…!  地下の巨大庁舎で、語り手はある任務を与えられるも、あらゆるものが暗号として解釈されるため各部署で出会う人々とも意思疎通が取れず、そもそも任務がなんなのかもわからない…。

カフカの『城』、ピンチョン『競売ナンバー49の叫び』、ヴァーツラフ・ハヴェル『通達/謁見』あたりも連想しました。

高柳聡子『埃だらけのすももを売ればよい』(書肆侃侃房)、100年前のロシア文学興隆期「銀の時代」から15人の女性詩人たちの詩が評伝を交えて紹介されていて、すごくいいです。〝古き都は死に絶えたかのよう〟から始まるアンナ・アフマートワの詩「キーウ」では一気に100年の隔たりが消える…。

毬矢まりえ 森山恵著『レディ・ムラサキのティーパーティ らせん訳「源氏物語」』(講談社)、松田行正さんの装幀がすばらしい。スピンは紫。『源氏物語 A・ウェイリー版』をおふたりがどう訳したのか、そりゃ読みますよね。

〝外に出してくれ! 自分の考えが聞こえてくる。だが閉じ込められているわけではない。獄中にいるわけではない。ここよりも〝外〟なんてありうるか?〟
マーガレット・アトウッド『オリクスとクレイク』より

アンナ・カヴァン著 安野玲訳『眠りの館』(文遊社)を頂きました。自伝的エッセイと〝夜の言葉〟で書かれた散文詩的な小説が交互に綴られた、白昼夢を見ているような本で、すばらしいです。カヴァン自身は、本書を『アサイラム・ピース』と対をなす連作短篇集として捉えていたそう。

〝昼のあいだわたしはずっと夜の世界に帰る時間を、館での密やかな生活という現実へと帰る時間を、待ちわびながら過ごしました〟

訳者あとがきで触れられていた、アナイス・ニン『未来の小説』のアンナ・カヴァン評も読み返した。

わたしは『服をめぐる』22号に掌編を寄稿しています。KCIの公式サイトでもお読みいただけます。

kci.or.jp/publication/public-r

KCI(京都服飾文化研究財団)の広報誌「服をめぐる」24号、「一人一品」が歌人の大森静佳さんで、選ばれた三点の収蔵品と短歌によるイメージの膨らみがすばらしいです。
1810年頃の乗馬服に添えられた歌がすごい…
〝青空の底を駆ければいれかわる馬の瞼とわたしのまぶた〟――

久山宏一訳 芝田文乃訳 スタニスワフ・レム著『捜査・浴槽で発見された手記』(国書刊行会)を、訳者の芝田文乃さんから頂戴しました。『捜査』は持っていたのですが、『浴槽で発見された手記』は手に入らず、図書館にもなく、長年読みたかった作品なのでした。ありがとうございます。すごく楽しみ。解説は沼野充義さん。3月11日頃発売だそうです。

夏来健次編訳『ロンドン幽霊譚傑作集』(創元推理文庫)を頂いて読み終えたのですが、どうして訳されてなかったの…! と驚くくらい面白かったです。著名なウィルキー・コリンズから、準男爵で法廷弁護士の唯一世に出た創作まで、ヴィクトリア朝に書かれたロンドン舞台のゴースト・ストーリー全13篇中、12篇が初訳。語り口の良さで、どれも引き込まれました。

どれも面白いのですが、何百年も絵の中に潜み、再び自分の存在に気づいてくれる相手を待ち続けた女性との束の間の愛を描く「黒檀の額縁」や、出版社社長の元を訪れる幽霊となった女性作家のキャラ立ちがよすぎて笑ってしまう「シャーロット・クレイの幽霊」など印象的でした。あと特異なのが、姿の見えない、でも実体のある幽霊が現れ取っ組み合う「ウェラム・スクエア十一番地」で、描き方が正に透明人間なんですね。面白い…。

現在『るん(笑)』のKindle版が〝このタイトルは現在ご購入いただけません。〟となってますが、配信がなくなったわけではなく、システム障害による一時的な現象のようです。

三月三日は上巳の節句ですが、『奏で手のヌフレツン』には初歯(ういし)の節苦や、五月(いつき)の節苦、腿(もも)の節苦など、痛みに関する儀式がいろいろ出てきます。痛みに耐えるほど苦徳(くどく)が高まると考えられている世界です。よろしくお願いします。
QT: fedibird.com/@dempow/111459371
[参照]

酉島伝法  
『奏で手のヌフレツン』の見本ができました。むちゃくちゃ格好いい……! 装丁は川名潤さんが手掛けてくださいました。太陽が歩いて巡る空洞世界に住む人々の、数世代にわたる物語です。河出書房新社より12月4日頃発売。
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