夏来健次編訳『ロンドン幽霊譚傑作集』(創元推理文庫)を頂いて読み終えたのですが、どうして訳されてなかったの…! と驚くくらい面白かったです。著名なウィルキー・コリンズから、準男爵で法廷弁護士の唯一世に出た創作まで、ヴィクトリア朝に書かれたロンドン舞台のゴースト・ストーリー全13篇中、12篇が初訳。語り口の良さで、どれも引き込まれました。
どれも面白いのですが、何百年も絵の中に潜み、再び自分の存在に気づいてくれる相手を待ち続けた女性との束の間の愛を描く「黒檀の額縁」や、出版社社長の元を訪れる幽霊となった女性作家のキャラ立ちがよすぎて笑ってしまう「シャーロット・クレイの幽霊」など印象的でした。あと特異なのが、姿の見えない、でも実体のある幽霊が現れ取っ組み合う「ウェラム・スクエア十一番地」で、描き方が正に透明人間なんですね。面白い…。