読了 野﨑まど/タイタン
アムリタシリーズ以来の野﨑まど。
今作はSF小説だけど、単純なSF小説ではなくメインテーマは仕事。
この作品の世界では大半の人類は仕事をしておらず、する必要もない。
だからこそ主人公たちは難題にぶつかりまくるわけだけども、素敵な旅の中で様々なものを見て触れて話して体験していく。
終盤から忙しくなるけども最後の終わり方がなかなか好きで、洒落たオチをつけてくれたなあ…、と思った。
野﨑まどのSFでは「know」を読んだけどあれとはまた大きく違ったものになっていて楽しめた。
#読書
読了 中山七里/笑え、シャイロック
銀行物の作品。
取っ付きにくいかな、と思ったけど意外と読みやすかったです。
とは言っても耳慣れない言葉が出たりしましたが…。
主人公の回収屋さんがとんでもない上司の刺殺事件を受けて後を継ぐのですが、流石にちょっと都合好く進み過ぎ?と思ってしまいました。
それはさておき、中山作品では馴染みの団体が多数出て来て、ここでも活躍してたんだとなりました。
主人公の恋人の存在がとても大きいのが印象的で、こんな"人間ができた人"がいて堪るか!と悔し涙を流しつつ読み進めていました。
おやおや、意外性のまったくない人物が犯人でしたね、と高を括っていたら最後にしっかり引っ繰り返されました。
あからさまなミスリードに尻尾振って引っかかりました。
あ、そういえばそんな人いたわ!という人物が出てきて納得の結末です。
銀行屋さん、回収屋さんに対する解像度がもっと高ければ更におもしろい部分があったのかもしれません。
読了 村田沙耶香/生命式
短編集となっており、大体の作品が村田沙耶香!という味がしてとても良かった。
遠い遠い未来、少し極端な意見に左右されたらありえなくもない話、というのが村田作品の良さでもあり怖さでもあると思っているのですが、今作はそれが存分に発揮されていました。
表題作では火葬文化が消滅しつつあり、亡くなった人は調理をして食べ新たな命に繋げていく(ぼかしてぼかして)というもの。
さらに人間亡き後、火葬して無くしてしまうのは勿体無いし残酷だ!という世界では、家具などに再利用されていく。
骨などを使ったソファや皮を使ったシャンデリアなどは高級家具の代表作!
これはエド・ゲイン(絶対に調べてはいけない)
を思い出しつつ読んでいました。
あとは人皮装幀本なんかも有名ですよね。
他にもいい感じにずれているけど、もしかしたら身の回りにいるのかも…?と思わされるようなものから、ちょっと共感出来る!というものまで。
ゾワゾワワクワクしながら読むことが出来ました。
読了 米澤穂信/ インシテミル
ずっと読んだ気でいて、実は未読だったやつです。
ずっとリストに入ってるな読んだのに。と思って整理をしたところ未読が発覚
インシテミルの漢字が意外でした。
何個か意味を考えていましたがどれも当てはらまず。
私ならこの作品内のような時給の仕事には手を出したくないです!
ホストが用意している小物はミステリ好きには刺さるものばかり。
ノックスの十戒、そして誰もいなくなった のインディアン人形や色んなミステリ小説由来の凶器等々。
エピローグとして、生き残った実験の参加者たちのその後が描かれるわけですが二人を除いてみんな悲惨の極みでした。
須和名さんがとにかく怖い…
#読書
読了 辻村深月/鍵のない夢を見る
短編集。
どれも狭いコミュニティや田舎の閉塞感などが上手く描かれており、いい意味で嫌な、暗い気持ちにさせてくれる1冊でした。
・現代男版八百屋お七物語かと思いきや、主人公女性の狭い世間や焦りが生み出した壮大な勘違いだった話
・容姿が整ったプライドが高く自信家の男子大学生と付き合ってる女性の常軌を逸したオチ
・ようやく待ち望んだ子供を出産して育児に勤しむ主人公、ある日ショッピングモールに行ってふと目を離した隙にベビーカーごと盗まれてしまう話
上の3つは特に来るものがあって好きでした。
2つめは、最後の最後凄い怖いけど、あーこの思考の人知ってるな…となって二重でゾワゾワしました。
最後もかなり強烈で女性の苦労や育児ノイローゼ的なもの、環境の変化などといったものが秀逸な描き方をされていて真に迫る作品でした。
巻末に林真理子さんと辻村深月さんの対談が掲載されているのですが、それも興味深く読むことが出来ました。
読了 辻村深月/朝が来る
不妊治療の末、結果として自分たちの子供を諦めた夫婦が特別養子縁組というものを知る。
一方でキチッキチッとした家庭に違和感や気持ち悪さを覚え始めた少女がいる。
彼女は中学生の時に同級生と恋人になり、妊娠をする。
この少女の物語がとても胸に来るものでした。
タイトル間違えたんじゃないの?夜が来るとか夜が続く、の方がしっくり来るぞ?
と思いつつ読んでいました。
最後の最後の最後になってやっとタイトルが回収され、そうなるとこの後というのがとても気になる!
彼女はどんな人生を今後歩んでいくことになるのか。
まさに子供が実親と養親にとっての夜明けとなり朝を連れてきてくれた。
#読書
読了 伊坂幸太郎/777 トリプルセブン
久し振りの殺し屋シリーズ書き下ろし!
天道虫が相も変わらず災難な目に遭い続ける作品。
よくこれだけ登場人物と舞台を広げて、綺麗にまとめることが出来るな、と毎度のことながら感動します。
エピローグではとある人物たちのその後がしっかり触れられていて、綺麗な終わり方でした。
世の中本当にこういう業者たちが暗躍しているなら末恐ろしい。
ホテルでこれだけ事件が起こっているのに、最後はほとんど表沙汰にならないという手際。
業者が結集して、一致団結したら国ばかりか世界をもひっくり返せるのでは…?と思ってしまうほど。
今作、一番気になったのは「チーズケーキと柚子胡椒の相性について」でした。
読了 中山 七里/境界線
どこが人を分ける転機になるのか、今回の登場人物たちや舞台の東北地方はそれが東日本大震災だった。
結構重たい内容で、人が道を外れたり思想信条が変わるのは本当に紙一重だな…と思いました。
何かのきっかけでそれまでの倫理観が180度変わったり、大切なものを失ったりするものだと思い知ります。
復興とは?という部分も描かれていて10年以上経った現在、いったいどれだけの"復興"が行われたのかということも現実をしっかり見ていかないといけないですね。
社会派 中山七里が全開でした!
#読書
読了 辻村 深月/この夏の星を見る
すごく良かった!
コロナ禍で部活や修学旅行などが制限されてしまった学生たちの物語。
オンラインで他県の中学、高校と繋がって星の観測をするのですが、そこまでの工程や各学校の生徒視点から語られる物語の濃い青春は眩しいばかりでした。
途中で各校の教諭陣たちだけで仲良くなり、オンラインで繋がって会議という名のおしゃべりをする場面がチラッと描かれるのですが、大人たちもそれぞれ色々な思いがあって両方の視点から楽しめました。
ウルッとする場面や胸が熱くなる場面があり、こういう真っ直ぐな青春もいいもんだ… と思いました。
何より天体観測への描写が素晴らしく、子供の頃に父が天体望遠鏡を買ってくれて夏休みに一緒にベランダでよく観察していた頃のことを思い出しました
辻村作品では「かがみの弧城」ぶりにあったかくなる作品だったような気がします
中学生くらいならこの夏に読んでみるのもありかな、と思えるくらいライトな感じで読めました。
読了 アシュリー・ウィーヴァー/金庫破りときどきスパイ
第二次大戦のイギリスが舞台。
ドイツのスパイを捕まえるべく奮闘する。
堅物の少佐が果たして主人公の女性に抱いた思いは…とか、女性が少佐に抱いた感情は…?とか色々邪推もしつつ読めて面白かったです。
金庫破りを裏稼業としてやっている叔父一族。
この叔父一族がなかなか素敵なキャラクターでとても好きです。
とくに叔父さんはいい !
今後の2人の進展を勝手に想像したり、国の行く末を想像したり楽しい1冊でした。
読了 アンディ・ウィアー/プロジェクト・ヘイル・メアリー(下)
いよいよ異星人が主人公の船にやってきて、太陽滅亡の危機に関して2人で力を合わせながら様々な実験を繰り返し、解決に向かっていく。
挫折や苦労、お互いの理解度の深まり、解決と実験の繰り返しがありついにふたつの星を救う手段を発見するに至る。
お互いの星に向かってそれぞれ帰っていくわけだが、その帰路で大問題が発生。
逡巡した結果主人公が取った行動は…。
下巻後半以降は、残り少なくなってきたけどここからどんな結末に行くんだ!?とハラハラしました。
前作の「アルテミス」よりも科学色が強かったものの、拒絶反応が出るほどでは無かったです。
あぁ、うんうん、なんとなくわかった くらいの浅い理解度ですが、雰囲気でなんとなく分かります。
実際に"アストロファージ"という生命体がいたとして、作品内のような解決策を見つけるまでどれくらいかかるのか、そもそも見つけられるのか、と考えると国家間、個人間の両方の点から無理なんだろうな、と。
そもそも環境問題云々の時点でこれだけ考え方や姿勢に差がある訳ですし。
作品内のような数十年で滅ぶ!という事態が起こらないことを願うばかりです。
ロッキー、可愛い
読了 アンディ・ウィアー/プロジェクト・ヘイル・メアリー(上)
太陽周りで異常事態が発生、地球は近いうちに氷河期に突入、人類滅亡!
その危機に立ち向かうべく世界最高の頭脳を集めて色々対策を考えていざ宇宙へ!!
記憶が欠落した男性が徐々に記憶を取り戻していくところから始まります。
状況や蘇ってきた記憶から推測するに宇宙船の中。
そこからどんどん記憶が蘇り自分の状況を把握して冷静に対処をしていく。
そんな中でなんと異星人とコンタクトして時間を掛けて言語やお互いの知識を交換していく。
そうするとお互いに同じ目的で同じものを求めて宇宙旅行に出掛けていたことが分かる。
と、あらすじや前半部分を読んでいる限りはかなり深刻な人類滅亡を阻止するべく生粋の頭脳が集まり、対策をして様々な実験などを経て精鋭を3人宇宙へと放つ、とシリアスな内容かと。
しかし読みすすめて行くと不思議科学を持った異星人が出てきたり、交流を深めていったりと意外な方向へ展開して行く。
まさか宇宙人と交流を持つことになるとは…。
シリアスでスリリングな方向性で進んでくれても、それそれで面白そうだったなと思ってしまいました
何はともあれ下巻の展開も気になります。
読了 アンディ・ウィアー/アルテミス(下)
下巻はなかなかに怒涛の展開でした。
ちょっと都合良すぎやしないかい?と思う箇所はありつつもなんとか付いていくことが出来ました。
やはり訳の個性というか日本語の使い回しやそもそも使ってる日本語がそっちの読み方を採用したのか、というものが多々あって慣れるのに時間を要しました。
物語ラストはちょっと無理があるんじゃない!?という流れになりつつも主人公の本来の性格が上手くリンクしていて、案外本当にこういう口上で説得しちゃうものなのかも?と思えました。
特に不自然すぎる場面はなく、普段ほとんどSFを読まないゴリゴリ文系の私でも気軽に読み進めることができた1作品でした。
でも「火星の人」のほうが面白かったかな。
J・P・ホーガン、H・ハウイー、本著者、名作と言われる作品をちょろちょろくらいしかロクにSF作品読んだことないけど読みやすい部類ではあると思います。
#読書
読了 アンディ・ウィアー/アルテミス(上)
「火星の人」以来のアンディ・ウィアー作品。
最新作が結構評判が良くてKindleセールに来ていたので1個前の作品になる本作も一緒に購入。
月に人類が住み始め、月旅行が行われるようになった時代設定。
主人公となる女性は所謂不良娘がそのまま大きくなりました、という感じ。
配達の仕事をしつつ密輸で小遣い稼ぎをして夢は大きく!と。
少しだけ訳に癖があるかな?
原文だとなんて書いてあるんだろう?と思う箇所があったりしました。
訳者さんの癖が出るから仕方ない部分ではありますね。
上巻なので、世界観や人物紹介などの描写に大半が割かれて、後半からやっと物語が動き始めました。
やはりメインは下巻になります。
月世界で完結しているわけじゃなく、所々で地球を巻き込んでくれるのが読みやすい一点でもあるかも、と思いました。
#読書
双極性障害(うつ型)とパニック障害、腰椎椎間板ヘルニアで闘病中の男です。
読書が趣味です。
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