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伊藤昌亮、「石丸現象とTikTok——若者世代のリアリティ」(岩波『世界』2024年9月号)は、自分にとって興味深い内容だった。伊藤は『ネット右派の歴史社会学』の著者。

都知事選で2位につけた石丸伸二候補の人気を分析するため、TikTokの「石丸動画」のうち「いいね」数1万以上を獲得した128本を分析した。都知事選の投票日前に公開された動画では、「自己啓発的な若者応援」と「若者の成功を阻害する老害の批判」が多くの「いいね」を獲得していたことが分かった。

現代の若者の多くは世の中のシステムを改善する発想にリアリティを持てず、現状のシステム内での自己実現に関心がある(=若者の多くは政治的ではない)。その非政治的な若者層の共感を獲得することに成功したと分析する。

石丸候補は弱者への福祉を語らない。ネオリベラリズムが内面化されている。一方で、文化的には小池百合子のような極右ではなく、関東大震災で虐殺された朝鮮人の追悼式典への出席を表明したり、上野千鶴子の著作を評価したりする。このような態度(経済右派、文化左派)は、実は日本の企業社会ではごく当たり前である。
(続く

星 暁雄 (Akio Hoshi) さんがブースト

主にイギリスの方をメインに、XからThreadsへの大量移入が起こっているみたいですね。実際の数は分かりませんが、Xで大きなフォロワーを抱えていたアカウントが、それを消してThreadsへ移行したと、雪崩を打った様に報告されている。
イギリスで暴動が起こる中で、イーロンが「内戦が起こる」などと、暴力を煽る行為を繰り返したのに、愛想を尽かした人が多い様です。

英国の極右暴動をイーロン・マスクは公然と扇動。いっぽう、Telegramは極右をブロックした。

Wiredの記事から、いくつか抜粋して紹介する。
wired.com/story/telegram-is-bl

"『フィナンシャル・タイムズ』紙の報道によれば、X/Twitterは、英国当局からの国家安全保障を脅かす書き込みの削除要求を拒んでいる。"

UK faces resistance from X over taking down disinformation during riots
ft.com/content/31919b4e-4a5a-4

"Xのオーナーであるイーロン・マスクは、白人暴徒がマイノリティよりも厳しく警察に対処されていると主張する極右陰謀論を広め、緊張を煽っている。"

"マスクはその巨大な影響力を利用、多様性が暴動を引き起こすとほのめかす。「相容れない文化が同化することなく一緒になれば衝突は避けられない」"

感想:
異常な事態だ。

イーロン・マスクにも独自の意見を表現する自由はあるが、その自由は責任を伴う。暴力扇動や差別発言は法規制されうる。

X/Twitter買収当時からさんざん警告されてきたことだが、いまやイーロン・マスクが巨大SNSを所有していることは、世界の不和を煽るリスクとなっている。

クルーグマンは、イーロン・マスクらテック富豪たちの「おかしさ」を以前から指摘してきた。彼らは金銭的な利益を追求するだけでなく、自己愛が強すぎ名声を欲しがる。そして極右に染まる。経済学者の目から見ても、超富裕層は社会のバランスを崩す存在に見えているのである。

私から補足:
クルーグマンの言うことにビットコイン支持者は反発するだろうが、ひとついえることは、政府がビットコイン流通量の5%を保有した程度ではアメリカ経済への影響は皆無。業界と一部の保有者が喜ぶだけだ。

加えて、ビットコイン支持者が唱える「ビットコイン本位制」などのアイデアは、経済学者らの検証を十分に経た理論とはいえない。主流派経済学者が無視あるいは反対するのは当たり前。共有できる理論がない以上、生産的な議論も難しいだろう。

なお、私自身の立場は、アンチビットコインでも、ビットコイン推進派でもない。善用も悪用もできる要注意の存在として慎重に取り扱うべきだと考えている。経済学的には、せいいっぱい好意的に考えても「未検証の存在」として扱うべきだろう。

そして私自身は、政府のビットコイン大量保有は悪手だと考えている。それはビットコインの市場を歪め、その特徴を殺してしまうからだ。

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トランプ共和党が業界と結託し、クリプト/ビットコイン支持政策を打ち出した件について、「主流派経済学者は何をやってるんだ?」と思っていたが、ポール・クルーグマンがやってくれた。

J.D.バンス副大統領候補への批判記事の中で、ビットコイン政策についても「ビットコインは経済学的には役立たずだ」とばっさり。

Tech Bro Elegy: How Did JD Vance Get Here?, New York Times, July 29, 2024
nytimes.com/2024/07/29/opinion

クルーグマンは「トランプとバンスのチケットを強力に支持するテック業界の億万長者たちは、非常に裕福ではあるが、比較的小さなグループである」と書く。その通りだ。これはごく少人数の人々の利益のための取引で、すべての人の方を向いた政策などではない。

また共和党が発表した綱領には、業界独特の(カルト的な)言葉使いで、ビットコインとクリプトの支持、中央銀行デジタル通貨の否定が書き込まれた。「有権者に向けたと思われるかなり短い文書に、奇妙な内容を盛り込むのはいかがなものだろうか」とクルーグマンは指摘する。これはまったくの正論だ。
(続く

追記:大事な話をひとつ追記。
「大手メディア企業は、必ずしもひとつの意見で統一された一枚岩の団体ではない」

例えばNHKや朝日新聞の報道姿勢への批判の声がある。他の例では、日経にはなまじテック業界の記事が載る分、テック系専門家から「分かってない」などと批判されがちだ。

変な報道はときどきあるだろう。だとしても、大きな組織の中には必ず複数の意見があり、腕利きの記者もいる。NHKや朝日や日経ほどの規模であれば、無視できないほど重要な報道を時々出すだろう。面倒くさくても、個別の報道ごとに是非を判断した方がいいと思っている。

もちろん、本当にダメだと思った会社はスルーするのもひとつのやり方だ。自分の持ち時間、余力のなかで、できる範囲でメディアとうまく付き合うのがいいだろう。

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メディアとの付き合い方。

気になる記事を見たら、

(1) 記事全文をちゃんと読む(ネット記事のタイトルだけで判断しない)
(2) 複数の媒体、複数の記事をチェックする
(3) 英文の記事、それもなるべく長文の記事を読む(Washington Post、New York Times、Guardianなどは長文記事をよく載せる)
「日本発、日本語情報だけの話題」には慎重な態度で臨む。
(4) 一般むけと専門メディアの両方に目を通す
(5) 自説は保留、まず記事の主張を読む

こうしたプロセスで、自分の中の意見の複数性を確保する。

特に原子力、再エネ、自動車、ジェンダーの話題は情報源の偏りに注意。

賛成派と反対派が争っている事案は、なるべく両者の主張を見る。「争い」や「反対」を無理に避けようとしない。異論は悪ではないが、嘘、ごまかし、故意の無知は悪になりうる。

「中立」や「価値相対主義」には警戒する。悪意のあるなしに関わらず、中立を装いながら間違えている言説は多い。

リンク先ツイートの発言へのコメント。

おっしゃる通りです。人間は、中央集権国家と軍事技術の発明のあと、自然界にはなかった大規模な残酷行為を繰り返した。

一方で、この発言のように、人間には自らを省みる能力がある。

ベターなやり方を求め、もがき続けるのが「人間らしさ」ではないか。例えば平和と人権の概念を発明し国連機関/国際法に実装するなど……国連も国際法もまだまだ不完全ですが、少しずつ前進している(バックラッシュもあるが)。

「is(である)はought(べき)を直接導かない」という有名な言葉がある。現状のひどさを認識することは、「現状のままでいい」ことを意味しない。よりベターなやり方を求めてもがくインプットということなのだと信じます。
x.com/komugikonofan/status/181

"シエンタの後面衝突試験では、試験車両の重量を軽く見せるため、書類には軽くした重量を書く不正も見つかったという。"

感想;
これは、自分勝手な主張を繰り返すトヨタ自動車への国交省からの「意趣返し」の側面もあるだろう。

トヨタ自動車は、不正問題の発覚後も、「国交省の基準より厳しい条件で試験していた」など自己正当化を繰り返し、それを鵜呑みにして報道する自動車専門メディアもあった。

問題の矮小化やメディア工作の前に、問題があるなら解決、改善することを優先するべきだったのではないか。

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朝日新聞の記事。

トヨタのプリウスαなど7車種で新たに不正発覚 「ない」一転
asahi.com/articles/ASS702JKSS7

次の関連記事は興味深い。国交省への取材に基づき、トヨタの主張の問題点をあばいている。

トヨタ会長が主張の「北米基準の1800キロ」 実は06年に廃止
digital.asahi.com/articles/ASS

"不正があった後面衝突試験で、トヨタの豊田章男会長が「北米基準」と主張していた基準が2006年に廃止されていたことが国土交通省への取材でわかった。"

"6月の会見で豊田会長は「後方からぶつけられた場合の北米基準だと、1800キロの重さを後ろからぶつけなさい。ところが、日本の基準だって1100なんですね」 / トヨタの宮本真志・カスタマーファースト推進本部長もこの会見で、「より厳しい条件の試験」をしていたと繰り返した。"

"だが、1814キロの台車を用いるという米国の基準は06年に廃止され、現在は1361キロという。/ 国交省関係者によると、日本や欧州は小型車が多く、アメリカは大型車が多いなど各国の実情に沿った基準になっており、より重いもので試験をすれば良いというものではないという。"

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記録として。

新たにトヨタ自動車の7車種で不正発覚などにより、国交省は31日、トヨタの佐藤恒治社長を呼び出し是正命令書を手渡し。1か月以内に抜本的な再発防止策を策定、四半期ごとに実施状況報告を求める。

トヨタに初の是正命令 「型式指定」の不正で 国交省, NHK, 2024年7月31日
www3.nhk.or.jp/news/html/20240

トヨタ自動車、ニュースリリース
型式指定申請に関する是正命令について
global.toyota/jp/newsroom/corp

◎グループ企業での不正問題
22年3月、日野自動車
23年3月、豊田自動織機
23年4月、ダイハツ工業
24年6月、トヨタ自動車(本体)
24年7月、トヨタ自動車に是正命令

23年4月には豊田章男会長は「ガバナンスを強化する」「グループ全体で総点検を実施」と約束したが、その後も不正は相次いだ。

感想:度重なる不正発覚を「いじめ」などと評する報道もあったが(情報の発信源はどこだろう?)、トヨタ自動車が本当にグループ全体のガバナンスを見直し姿勢を正していたなら、こうはならない。

パリ五輪開会式で登場した、様々な文化的なシンボル、登場人物などについて読み解いたnote記事。
note.com/angeliquemrt_/n/n2e30

非常に参考になった。フランス語報道で流れた解説の内容分かったり、気になっていた人物や音楽が特定できたり。

シャンソン&フレンチカンカン
→ヘビメタ&オペラ歌手、オペラ座エトワール、ルーブル、オルセー
→LGBTQ+のファッションショー

といった流れで、「観光」「ハイカルチャー」「クイア」とどんどんディープになる。

「どうやっても、すべての人が納得するとは限らない」という前提を逆手に取り、LGBTQ+の祭典を全世界放送したのはGood Job。

星 暁雄 (Akio Hoshi) さんがブースト

うちのの前々職が刺青屋の絵描きだからヤクザ連中そこそこ普通に身近だったんで分かるけど、維新は本当にただのヤクザなので(経済ヤクザの亜種なのよねアレはね)あんなもんは絶対に絶対に行政へ関わらしちゃ駄目なんすよ。ただポンニチ人はVシネが大っ好きなんだなあ…(遠い目)しかしそれこそ作りもんのエンタメとは分けて考えなきゃ駄目なんすよ…でも想像力をぬっころがす教育を受けて育ったポンニチ人はそれを最も苦手としているのよね…(遠いry)維新がのした自治体見りゃ分かると思うけどあいつらヤクザだからなんも作れないじゃん、ありもんのあがりを食い潰すしか能がねえんだよ。でもポンニチ人はさあ(遠ry)はーーーーーーーーーーもう(クソデカ溜息)

(ほぼ民主党大統領候補に決まった)カマラ・ハリス演説のやや長めの紹介動画。字幕付き。

「中間層(ミドルクラス)の構築が、私の大統領としての明確な目標となる。なぜなら、中間層が強ければ米国は強くなるからだ」

トランプ批判だけでなく、民主党の目標を提示。
youtube.com/watch?v=y5TcDU1Giw

星 暁雄 (Akio Hoshi) さんがブースト

補足です。
なお1点、補足が必要なこととして、マルクス・ガブリエルは本書の中でイスラエルのハマス攻撃を大筋で肯定しています。ドイツ言論人のスタンスのスタンダードに沿ってしまっています。

私の意見では、国際刑事裁判所(ICC)、国際司法裁判所(ICJ)の裁判で提出された証拠と、ガブリエル自身が提示する思想を組み合わせて、この問題の道徳的判断は可能であろうと思っています。

つまり著者の問題はガザにおける証拠への「故意の無知」なのであり、ガザ攻撃の非道徳性は「新しい啓蒙」と証拠群により倫理学的に論証可能であると考えています。

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なお、「新しい啓蒙」について述べた哲学の専門書は別に出版されていますが、日本語訳はまだです。

簡単に紹介するなら、人文学の運動としての「新しい啓蒙」は、「真偽を判定できる道徳的事実の存在」を否定する態度(虚無主義、相対主義)を乗り越え、カントの倫理学を機能させ、さらにシェリング、フッサールらドイツの哲学者による思想を統合し、現代に蘇らせようとするものです。

これらの学者の思想(特にカント倫理学)は現代の英語圏の哲学者の間では無視されたり否定される場合が多いのですが、「新しい啓蒙」はそうしたトレンドへの哲学者マルクス・ガブリエルからの反論、そして挑戦という側面もあります。

私の立場では、企業活動と人権をうまく結びつける上で啓蒙思想と資本主義の協調が欠かせないわけですから、この「新しい啓蒙」は非常に注目したいと思っています。

そして本の内容は、ぜひ実物で確認してみてください。

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(2)反啓蒙は、18世紀の哲学を上書きした19世紀の哲学にルーツを持ちます。「理念より現実の覇権が大事だよね」と考える覇権主義、「普遍的な倫理なんて嘘っぱちだよね」と考える虚無主義は、現代にも影響力を持っています。20世紀に流行った「善悪や価値観なんて、みんな相対的だよね」という相対主義も根強いものがあります。

(3) の資本主義は現代の社会・経済の基礎を作っています。企業活動は私たちが手にするほとんどの財とサービスの供給源です。一方で、資本主義を規制せず放任すれば貧富の格差が開き続け、また公害、地球温暖化のような「負の外部性」が拡大することも分かっています。

ドイツの哲学者マルクス・ガブリエルは「新しい啓蒙」と呼ぶムーブメントを作ろうとしています。具体的には、(1)人文学の新しい運動を起こし、また (2) 企業に哲学者を送り込もうとしています。

「新しい啓蒙」の内容は、18世紀の啓蒙思想をよみがえらせ、19世紀以降の反啓蒙を克服し、現代の資本主義を社会と調和する形態にアップデートしようとするものです。その実践として「倫理資本主義」あるいは「エコ・ソーシャル・リベラリズム」を唱えます。本書は、倫理資本主義の大枠を記した本です。
(続く

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本の紹介をしたいと思います。

マルクス・ガブリエル, 『倫理資本主義の時代』, 早川書房, 2024年
amazon.co.jp/倫理資本主義の時代-ハヤカワ新書-

「ITと人権」を掲げる私にとって、むちゃくちゃ面白い本でした。ぜひ皆さんも手にしてほしい本です。

ただし、やや手強い本です。哲学の専門用語は排除していますが、思想上の論理構築は省略していないので、かなり理屈っぽい記述が続く部分があります。一方で現実世界との接点の部分はやや手薄です。誤解を恐れずに言えば、「専門用語を使わず書かれた哲学のパンフレット」として読むべき本です。そして本書の主な想定読者は企業人です。

この本を、あえて自己流で紹介します。気になった方はぜひ本を読んでみて下さい。

私の意見では、現代の世界の基本的なルール、構造の背後にはいくつかの思想があります。注目するべきなのは、(1)啓蒙思想、(2)反啓蒙、(3)資本主義です。

(1)啓蒙思想は18世紀の哲学にルーツをもち、アメリカ独立やフランス革命に影響しました。自由と平等、平和と人権、民主主義、これら世界共通の理念となっている重要な概念を提供します。世界平和を目指す「国連憲章」、普遍的な人権を唱える「世界人権宣言」という重要文書のアイデアの供給源でもあります。
(続く

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