Googleは独禁法裁判を戦っていますが、裁判の内容が公開されないよう手を打ちました。同社に不利な情報はほとんどメディアに流れません。Meta社は最近、青少年への性的脅迫のプラットフォームとしてInstagramが悪用されているとして議会で質問攻めにありました。Appleにも独禁法の適用が噂されています。
EU圏でも、米国企業への巨額罰金命令の判決が相次いでいます。
イーロン・マスクのX/Twitterでの"ご乱行"は日本でも有名ですが、これは一連の摩擦の一部と位置づけられます。実のところ、イーロン・マスクが突出して「おかしい」とまではいえない。他のテック界隈のエリートたちも考え方はマスク氏と大差ありません。マスク氏ほどにはボロを出していないだけです。
GoogleやMetaが作り上げたインターネット広告のエコシステムは、世論操作や詐欺の温床となっています。彼らは私たちの個人情報を驚くほど精密に把握しており、年齢、性別、趣味嗜好、思想の傾向など機微情報を活用してターゲット広告を表示してきます。
X/Twitterのアルゴリズムは人々を分断させ対立を煽るよう機能します。Facebookでは逆に「政治的な話題を目立たせない」ようアルゴリズムが調整していると言われています。
「テクノロジーと民主主義は緊張関係にある」
上記の命題を見て、どう思いますか? おそらく、日本語圏と英語圏では温度差があります。
PayPal創業者でFacebookの初期投資家であるピーター・ティールは、「私はもはや、自由と民主主義が両立可能だとは考えていません」と述べ、トランプ支持に走りました。
Netscape創業者でベンチャーキャピタルa16zの創設者マーク・アンドリーセンは「西洋のテクノロジーのチャンピオンであるアメリカ合衆国は、自己への懲罰をすることを決めました。両政党とその選出された代表者は、できる限りの方法でアメリカのテクノロジー産業を徹底的に攻撃しています」と語ります。
シリコンバレーのエコシステムで成功したテック富豪たちは、いまや民主主義で運営される米国政府による規制を敵視するようになっています。
おそらく、日本語のメディアを見ているだけでは、このような緊張はほとんど伝わってこないと思います。
英語圏メディアでは、毎日のようにBig Tech(Google、Meta、Apple、Amazonなど)と社会との摩擦のニュースが流れています。BloombergやロイターやWSJは日本語版もあるので、これらを集中的に見ていればある程度把握出来ると思います。
この映像を撮った人、すごいな。この絵だけ見ると爆撃されたようにしか見えないし希望がまったくない状況をよく表している。この日本で3ヶ月近くも経って片付けすらできてない状況ってひどいよな
ブルーインパルスが能登半島上空を飛行し 住民たちが歓声 | NHK | 令和6年能登半島地震: https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240318/k10014394621000.html
ガザの人道危機は、ますますひどいことになっている。
ガザ最大のアル・シファ病院は「ハマスの本拠地」とされ、数回にわたり攻撃を受け「血の海」となった。
他の病院も破壊された。水も食料も医療物資も乏しいなか、毎日180人が出産している。BBCの記者の目の前で新生児が死んでいった。
飢餓が進むなか、食料投下に集まる人々への爆撃が目撃されている。
命題「私たちには非道を止める義務がある」は真か偽か?
私たちがいかに無力であるとしても、真に違いない。
自分の無力を思い知りつつも、自分にできる範囲で義務を果たそうとすることは、人間性の重要な一部のはずだ。だからガザについて思い考え続けることにする。
(ロジックの参考にした本は、アマルティア・セン『正義のアイデア』です)
犯罪グループからの広告出稿に対しては、犯罪収益移転防止法を適用できるはずです。有名人の名前を勝手に使う広告掲載は名誉毀損に相当するでしょう。このように、使えるツールは使って取り締まりを進め、穴をふさいでほしいと思います。
新たな法規制に関しては、権力側の恣意的な適用を警戒しなければなりません。EU(欧州連合)のDSA(デジタルサービス法)は、「市民の人権を守る」ためにサービス事業者を規制する建て付けになっています。こうした前例をお手本に、市民の人権を侵害しないように整合性を取って進める必要があります。
そして、社会全体で声を上げて「プラットフォーマーには社会的責任がある」と言い続けることが大事だと思っています。彼らは、「責任はコンテンツを出した側にある。自分達は免責されるはず」という甘いに認識を持っているからです。
2024年3月12日放映のTBSテレビの報道番組「news 23」で、「SNS投資詐欺」の事件について、ITジャーナリスト星暁雄のコメントが使われました。
SNS投資詐欺とは何か。Facebook、Instagram、Google検索結果で有名人の名前を勝手に使った投資勧誘の広告を掲載、LINEに誘い込んでお金を騙し取るSNS投資詐欺の件数が増えています。警察庁は3月7日に記者会見を開き「SNS型投資詐欺」の急増を警告しました。警察庁によれば23年に1655人、総額約277億9千万円が被害に合っています。
星は「デジタル広告は人手による審査が欠如。プラットフォーマーは対応に消極的。法規制も考える段階」とコメントしました。
せっかくなので、取材で喋ったことを少し補足しておきます。
星の意見では、最も好ましいのはプラットフォーマーが自主規制に取り組むことです。ただし、特に米国資本のプラットフォーマーはあまりに消極的です。広告も含めて自動化を進めたい、人手を増やしたくないという意向を隠しません。
そこでまずやってほしいことは、すでに存在する法律を使って取り締まることです。例えば、投資勧誘や投資助言は金融庁への登録が義務付けられています。(続く
発表文にはないが、考えられるモデレーションは性的コンテンツ対応、暴力的コンテンツ対応だろう。アメリカの基準で合法的な性的コンテンツも、例えばイスラム圏では非合法になる。アメリカの基準ではOKな暴力的コンテンツが、ヨーロッパのある国では「子どもには見せたくない」コンテンツであるかもしれない。イスラム圏向けや、暴力により厳しい国向けのカスタマイズができるようになる。
さて、日本人のうちあるグループの人々が気になるのは、「少女の性的コンテンツ」だろうが、そもそも少女の性的コンテンツはBlueskyのモデレーションで許可されないはずである。
世界的に、少女(18歳未満の女性)の性的コンテンツは(実在の少女の写真であれ、非実在のイラストやCGなどであれ)国際人権法上認められないとするガイドラインがある。日本で流通するコンテンツの単純所持が他国では有罪となるケースもあるのでご注意。
Bleskyは3月12日、新たなスタッカブル(積み重ね型)モデレーションのコンセプトを発表。それを実現するツール「Ozone」をオープンソースソフトウェアとして公開した。
https://bsky.social/about/blog/03-12-2024-stackable-moderation
従来のBlueskyのモデレーション(コンテンツの監視・管理)のレイヤーの上に、積み木を積み上げるように、多くの個人やコミュニティが管理した新たなモデレーションのレイヤーを作り、購読することができるようになる。
発表文では、例として「例えば、誰かがBlueskyからクモの写真をブロックするモデレーションサービスを作ることができる」と説明。「このモデレーションサービスをインストールすれば、クモと表示された写真は即座にあなたの体験から消えるだろう」。つまり、モデレーションによりクモの写真が嫌いな人向けのBlueskyを作れる訳だ。
ここで「クモの画像を含む投稿にラベルを付ける、あるいは非表示にする」といったモデレーションは、人間のチームで管理することもできるし、機械学習ツールで自動化するアプローチにも対応する。
(続く
指摘を受けて思い出したのですが、「ひろゆき」氏は金融庁の広報動画に出演して炎上したことがありましたね。
当方は、以前「日本は変だ。政府は人権バックラッシュを進める一方、企業はいっそう人権擁護が求められている」という指摘をしたことがあります。これが一つのヒントなのですが……
仮説として、政府と企業の両方を顧客とする人たち(例えば広告代理店)は人権に関するダブルスタンダードに直面して、判断基準がぶれてしまっているのかもしれませんね。
https://fedibird.com/@AkioHoshi/112082141400066061 [参照]
キリンが、経済学者・成田悠輔氏を起用した「氷結」広告を取り下げ。
社会を分断し人権を軽んじる言説で露出を増やす人物の起用は、企業にとってハイリスク。例えば「ひろゆき」氏は、いわゆるナショナルクライアントの広告には起用されていないのではないかな。
広告起用を提案した人は、おそらく成田悠輔氏を「メディア露出も増えている新進気鋭の学者」ぐらいに見ていたのだろうが、判断が甘かった。
https://maidonanews.jp/article/15196131
教皇は、戦争を引き起こす地理的、歴史的状況は常に存在すると指摘し、戦争は「現実的な動機に基づいているように見える」と結論付けた。
「すべての戦争の背後に兵器産業がある。それはお金を意味する」
教皇フランシスコは「戦争は闇であり、闇の力である」と述べた。
感想:
軍産複合体を強く批判。
現代の戦争は、資金と兵器の供給なしには遂行できない。
ウクライナが米国を筆頭に西側諸国の援助で戦争を続けているように、ロシアは中国や北朝鮮や、おそらくはBRICS各国から物資や資金を調達して戦争を続行している。その背後には双方の戦争ビジネスがある。
ガザの虐殺も、イスラエルに兵器を供給する国(米国が筆頭)がなければ継続できない。
教皇フランシスコは、戦争ビジネスを「闇の力」と呼んで強く非難した形だ。日本も米国の戦争ビジネスに結びついているという点で、戦争の部外者ではない。
(続き)Vatican Newsの記事。ローマ教皇フランシスコの発言をバチカンの意図に忠実に伝えていると考えていいだろう。
https://www.vaticannews.va/en/pope/news/2024-03/pope-francis-swiss-tv-interview-gaza-ukraine-wars.html
いくつか発言を抜粋。
"戦争を起こすには2つの側が必要であると指摘し、ウクライナとガザでの戦争を終わらせるための交渉を奨励した。"
"教皇は毎日午後7時に、600人が避難しているガザの聖家族教区に電話をかける。"
"教皇フランシスコは、いかなる戦争においても、双方は常に和平交渉のテーブルに着くべきだと付け加えた。"
"教皇フランシスコはさらに、武器製造業者が戦争に及ぼす影響について考察した。"
「我々は自らを守らなければならない……それは事実だが、あなたは他国を爆撃するための飛行機を製造する工場があることに気づくだろう。それは我々を守るためではなく、破壊するためだ」
「戦争はどのように終わるのか? 死と破壊、そして親を失った子供たちだ」
"教皇フランシスコはこれに対し、侵略者を助長する恐れは「ひとつの解釈であることは事実だ」。しかし、最も強いのは、状況を見て、人々のことを考え、白旗を揚げる勇気を持ち、交渉に臨む者だと私は信じている」と答えた。"
"土曜日(3/9)の夜、バチカンのマッテオ・ブルーニ報道官は、ローマ法王が「降伏」ではなく「停戦と交渉」を意味していることを直ちに明らかにした。"
"フランシスコは「交渉は決して降伏ではない」とも指摘した。しかし、交渉のことを 「国を自殺に追い込まない勇気」とも呼んでいる。"
"バチカンのブルーニ報道官は土曜日、教皇は「公正で永続的な平和」のために外交的解決に達することを望んでいると付け加えた。"
感想:
「白旗」はまず取材者が使った言葉で、その同じ言葉を使って回答したという流れ。
ローマ教皇が戦争を支持せず平和を求めることは、宗教家として当然のことだ。
かといって、一部の親ロシア派が言うような一方的停戦(降伏)を求めるニュアンスでは決してない。ローマ教皇はロシアを支持するロシア正教トップを批判している。
とはいうものの、教皇の言葉は重い。発言のニュアンスをめぐり混乱があったことは否めない。
共同通信は"ローマ教皇「白旗揚げる勇気を」 ウクライナに停戦交渉促す"という見出しでローマ教皇フランシスコの声を伝えた。
https://nordot.app/1139284164996333989?c=39550187727945729
降伏を意味する「白旗」という表現は、大勢の人々に困惑を引き起こした。調べてみると教皇フランシスコの発言には微妙なニュアンスがあり、「白旗」だけを切り取って判断することはフェアではないと思われる。
Pope Says Ukraine Should Have the ‘Courage of the White Flag’, New York Times, March 9, 2024
https://www.nytimes.com/2024/03/09/world/europe/pope-ukraine-white-flag.html
New York Timesはバチカンの応答を含め記事を出した。教皇フランシスコ発言の骨子は「強硬路線だけではなく平和を求めて停戦交渉をするべきであり、バチカンが仲介を務める可能性もある」ということ。
"インタビュアーはフランシスコに、ウクライナでは「降伏、この場合は白旗」が必要だと思うか、それともそのような降伏は強者の行動を正当化するだけだと思うかと尋ねた。"
(続く
そしてWilmerHaleによるアルトマン解任劇の調査報告の概要が公表された。
「旧理事会の不和と無思慮が原因」と結論付けているが、肝心の解任理由は不明なままだ。
Open AIのアルトマン解任劇から約4カ月。当事者は口をつぐみ、「旧理事会メンバーが無思慮だった」というストーリーが語られ続けている。私は「追加情報がいつか出てくるのではないか」と思っている。
https://openai.com/blog/review-completed-altman-brockman-to-continue-to-lead-openai
Open AIが理事会人事を発表。アルトマンCEOが復帰、7人体制に。
https://openai.com/blog/openai-announces-new-members-to-board-of-directors
注目したい点は、3人の新理事全員が女性かつ高度なキャリアを持つこと。
(内紛で解任されたサム・アルトマンCEOが復帰したことは既定路線なので、むしろ新メンバーの顔ぶれに興味があるのです)
Dr. Sue Desmond-Hellmannは医師。ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団の元CEO。カリフォルニア大学サンフランシスコ校で初の女性学長。Genentech製品開発担当プレジデントとして最初の遺伝子標的がん治療薬開発に貢献。
Nicole Seligmanは弁護士で市民団体リーダー、ソニーの元EVP兼法律顧問。ビル・クリントン大統領弾劾裁判の弁護で注目される。
Fidji Simoはインスタカート(Instacart)のCEO兼会長。元Shopify社取締役、Facebookのアプリ担当。
(なお、日本のメディアの記事では「取締役会」と訳している場合が多いのですが、株式会社ではなく非営利団体Open AIのBoardの話なので、私は主に「理事会」の用語を使っています)
AIが「人員削減のツール」として機能しはじめているという仮説。ひとつの傍証はテック企業のリストラが止まらないこと。もちろん経営者はそれを公言しないが。
AIと肥満症治療薬の共通点は、本当にそれを必要とする人々ではなく「もっとスリムになりたいお金持ち」が使っていることだ。経営者は、企業規模拡大への誘惑を、新たな雇用ではなくAIの導入で抑えようとしている。
https://courrier.jp/cj/357359/
ITジャーナリストです。
仕事リスト:https://note.com/akiohoshi/n/nebac412b6c12