私の記事「OpenAI内紛劇の背後に『21世紀の優生思想』」に関して「功利主義の否定」と誤読している意見を見て、少し驚きました。この点を補足しておきます。
https://globe.asahi.com/article/15087941
結論を先に述べると、当方の意見は「功利主義と人権の組み合わせが現実解である」というものです。国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」や、SDGsの数値目標の考え方は、この路線です。
功利主義は、功利の大小で判断できる分野では低コストで判断でき結論が分かりやすいメリットがあります。この特徴は産業・経済と相性が良く、そのため功利主義は社会の隅々まで浸透しています。
一方、功利主義に欠陥があることは、記事中で触れたように、高校生向けの本に載っているほどには認められ、広く知られている話である訳です。
そこで、現実世界の倫理規範として用いるには、功利主義だけではなく義務論や徳倫理のような別の規範倫理と組み合わることが求められます。
記事中で触れたように、人権(human rights)はそのように構築された倫理規範です。
(続く
12/25のポリタスTVイベントの4部(21:35~22:15)に登壇します。「2023年のニュースを振り返る」切り口でお話しします。
- 「ガザではAIが人を殺す」
- イーロン・マスク支配下のX/Twitterの迷走
- OpenAIの躍進と内紛
- テック界隈で流行する怪しい「思想」
といった話をする、かもしれません。
https://politastv.zaiko.io/item/361462
関連して。この記事では、東電側が賠償額などを読み上げるのは「訴訟戦術」と書く。記者は「被害者いじめ」とも評している。
2023年12月18日
(Another Note)東電の「いじめ」を記事に、原告に叱られ見えたもの 大月規義
https://www.asahi.com/articles/DA3S15819798.html
一方、東電は現地進行協議で「冷淡」だった。原告の主張が終わるとすぐに、「こちらの原告の世帯に支払った賠償額は……」と、家族1人ずつと、その合計金額を万円単位までつまびらかにしていった。10軒すべてでだ。
津島訴訟の裁判以外でも東電は個々の原告の賠償額や、賠償金で修繕した家屋の状況などを法廷で明らかにしたり、福島は多額の国の予算ですでに復興を遂げているような印象を与えたりしている。
いずれも、被害者の生活水準が原発事故の前より良くなっているように説明し、すでに十分な賠償が支払われていると主張する「訴訟戦術」だ。
ただ、自分の財産を勝手にさらされる被害者には、たまったものではない。現地進行協議では、下を向いたり涙ぐんだりする原告もいた。東電のやり方が私には「いじめ」にしか見えなかった。
原発事故にまつわる東電の費用はかさむ一方で、そのイライラが「被害者いじめ」につながっているように見える。
あまりに異様。
東京電力弁護団が福島・浪江で「詳細な個人賠償額」マイク使い読み上げ 「嫌がらせと受け止めるしかない」原告側が抗議文
https://www.tokyo-np.co.jp/article/297440
この行いに合理的な説明はできるのか?
東京新聞の取材に対して東京電力は「引き続き訴訟手続きにのっとり適切に対応していく」と答えになっていないコメントを返している。
記事を寄稿しました。OpenAIの突然のアルトマンCEO解任をきっかけに、IT業界のエリートの間で流行る「思想 / 気分」が話題に。そのカルト的な怪しさ、危険性が指摘されています。
EA、e/accってなんだ? と思った方。
それに自分はIT業界のエリートを自認する方にも、ぜひ目を通していただきたい記事です。
OpenAI内紛劇の背後に「21世紀の優生思想」 EAコミュニティとe/accの危険性
https://globe.asahi.com/article/15087941
続き:ブルトン欧州委員はこの6月にサンフランシスコのTwitter本社を訪問するなど、DSA対応を促す動きを続けてきた。今回のDSA違反調査開始は、予測可能な動きではある。
以下、Guardianの記事よりいくつか。
「オランダにコンテンツ・モデレータ(コンテンツ監視人員)が1人しかいない」との報道があり、Xが欧州言語のコンプライアンスに十分な投資をしていないことも懸念。
また「Xのコミュニティノートの有効性についても検討する予定」とある。
ブルトン委員いわく「8月25日からはDSAのもとで偽情報との戦いが法的義務となる。我々のチームは執行の準備を整えている」。
なお、下記ロイター記事によればX/Twitterのコンテンツ・モデレータは2294人だが、これは他の大手SNS企業に比べ少ない数字。またEUは英語以外に対応できる人員が非常に少ない可能性を懸念している様子だ。
https://www.reuters.com/technology/musks-x-has-fraction-rivals-content-moderators-eu-says-2023-11-10/
欧州委員会は、EU新法DSA(デジタルサービス法)に基づきX/Twitterの違法行為調査手続きを開始した。
違法コンテンツ(ヘイトスピーチなど)および偽情報への対処義務違反、透明性に関する義務違反、ユーザーインタフェースの欺瞞的デザインの疑いが持たれている。
関連情報
ティエリ・ブルトン欧州委員のツイート
https://twitter.com/ThierryBreton/status/1736701607553692020
陰謀論やフェイクニュースの対応は難しい。
今のSNSでは、大勢の人々が「妄想を述べる→ マジレス否定の嵐&一部の賛同→ 妄想の症状悪化」のデススパイラルに陥っている懸念がある。
心理職によるカウンセリングでは「相手の話は否定しない」が鉄則。妄想も否定せず「そう思ったのですね」と肯定的に聞く(かといって、共感を示すこともしない)。
精神疾患や薬物中毒で妄想が出る場合もある。こうした妄想をストレートに論破すると悪い方向に症状が進む危険がある。
何がベターなやり方かは難しい。自分はとりあえず、SNSでフェイクニュースや陰謀論を述べている人にリプライや引用RTで否定する行動は止めました。意見を言いたい場合、人ではなく言説を論評。
SmartNews米国事業の失敗の件が話題になっている。
鈴木健CEOは間違ったアイデアにこだわった。「極右とリベラルの橋渡しをする」ニュースメディアは無理筋の発想だ。その結果は行き過ぎた相対主義、両論併記の誤謬。
ちなみにX/Twitterのコミュニティノートも「分断されたコミュニティを事実で橋渡しする」役割を期待された仕組みなのだけど、マスク体制での運用放棄もあって同じような誤謬が露呈した。
「分断の橋渡しはそもそも難しいので甘くみてはいけない」という普通の人には自明のことが、テック業界のセレブたちにはなかなか理解できない。
「普通の人々」や「メディア」を甘くみてはいけない。
アメリカ最強アプリとまで評された「SmartNews(スマートニュース)」が失墜してしまった理由とは?
https://gigazine.net/news/20231218-smartnews-us-market-wrong/
スマートニュースは社会の分断に挑む、鈴木健CEOが見た激動の民主主義
https://www.businessinsider.jp/post-226563
Google, Metaなど10社が、EUのデジタル市場法(DMA)などに対応するため「オープン・デジタル・エコシステム連合(Coalition for Open Digital Ecosystems, CODE)」を結成。
メンバーはGoogle, Metaのほか、Qualcomm, Motorola, Honor, Lenovo, Nothing, Opera, Wire, Lynxの各社。
目的は「EU域内のイノベーションと成長を促進するため、プラットフォームとシステムのオープン化を提唱」すること。
EUは、デジタル市場法(DMA)によりAlphabet(Google), Amazon, Apple, ByteDance, Meta, Microsoftの6社を、支配的なデジタル企業「ゲートキーパー」として規制する。この中からGoogleとMetaの2社がCODEに参加した形となる。
ロイターの記事
https://jp.reuters.com/business/technology/GDTQ5G63FROD3FBI7VJRNX7LVM-2023-12-14/
Meta社のSNSであるThreadsは、ActivityPubインテグレーションのテストを開始した。ザッカーバーグCEOがThreadに投稿して告知した。
平たくいうとMastodonとThreadsがつながるようになる。別の言い方だと、MastodonをはじめとするActivityPub対応SNSの集まり「Fediverse」にThreadsが参加する。
ザッカーバーグの投稿
https://www.threads.net/@zuck/post/C0zXcQmxO77/
The Vergeの記事
https://www.theverge.com/2023/12/13/24000120/threads-meta-activitypub-test-mastodon
現状では、MetaのInstagram/ThreadsのリーダーであるAdam Mosseri氏のアカウントがMastodon系サーバーから見えていてフォロー可能な状態との報告あり。
https://fedibird.com/@noellabo/111576528795588700
記事に星のコメントが使われています。
Facebookで、有名人の名前を無断で使った詐欺広告が問題になっています。背景には、広告掲載が自動化されて人の目が行き届かないことがあります。
当方は「きちんと人間が対応する救済窓口が必要」とのコメントを寄せました。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/295676
イスラエルのガザ虐殺に関して、米国のエスタブリッシュメントは、バイデン大統領以下、政治家、映画人、芸能人、大学人らも含めて力ある人々の認知と思考がバグっている。
国連総長はじめ各国連機関、アムネスティなど人権団体、国境のない医師団などの団体は、力を持つ人々が正気に戻ってもらうための言葉を発信しつづけている訳だけど、一番力を持つ人々は聞く耳を持たない。
言葉が壊れている。
アメリカやイスラエルに近いG7諸国よりも、むしろアジア、アフリカの国々の方がまともに事態を把握できているように思える。
できることは何か。
せめて、ささやかな抗議の意思を示し続けよう。
そして、せめて起きている事態を記憶しつづけよう。物語ろう。
高レベル放射性廃棄物の最終処分場の選定に関して「地域住民らと冷静に理解を深める対話の場を国が支援」「住民対話に関わる経費を負担し、理解醸成を促す」とあるが、首をかしげるところがある。
本件の構図は「報道関係者が、費用A社持ちで、A社に関するプレスツアーに招かれる」場合と似ている。この場合、A社に批判的な記者が招かれることはあまりない。この種のツアーはA社が伝えたい情報を広報する場であって、批判的な記者も招く開かれた記者会見の代替にはならない。
国が大事だと考える情報を広報する活動はあっていいだろう。だが、それをもって「対話」が成立したと語るなら、それはちょっと違うんじゃないかなあ。そこに懸念を感じる。
https://nordot.app/1106914794108191481
12月8日、イーロン・マスクは米国のX/TwitterのPremium+ ユーザー向けにGrok AIをリリースした。
記事によれば、ハルシネーション(幻覚=AIの嘘)がそうとう残ったAIになっている模様。パレスチナ情勢でも嘘ばかり言うそうだ。想定の範囲内ではある。
https://www.vice.com/en/article/7kxqp9/elon-musks-grok-ai-is-pushing-misinformation-and-legitimizing-conspiracies
Refaat Alareer氏に関する補足
詩を日本語で読みたい人向け
https://mimei.maudet.net/4150
ガザで開催されたTEDxでの講演 "Stories make us"
https://youtu.be/YsbEjldJjOw
Refaat Alareer氏はイスラエル軍から殺害予告の電話を受けた。意図的な殺人か。
https://twitter.com/Gaza_Shaheed/status/1733107761037078879
"Refaat はイスラエル情報部から電話を受け、避難先の学校で彼の居場所を突き止めた。彼らは彼を殺すつもりだと告げた" [参照]
阿佐ヶ谷、晴海トリトンスクエア、仙川など、都内に複数店舗を構えていた書店の「書原」だが、営業を続けているのは今やつつじヶ丘の1店舗だけ。
つつじヶ丘の店舗も2024年1月24日で閉店することを知った。
「会社の事業は続ける」としている。
棚に主張があって頭が活性化する種類の本屋だった。閉店は寂しいなあ。
https://www.books-shogen.jp/
この詩を投稿したパレスチナの詩人Refaat Alareer(レファト・アラレア)は、ガザ空爆で殺された。
https://twitter.com/itranslate123/status/1719701312990830934
「私が死なねばならないなら、この物語を語り継いでほしい」
If I must die
let it bring hope
let it be a tale
覚えて、語り継ごう。
国連総長は約50年ぶりに国連憲章99条発動で安保理に働きかけた。だが米国の拒否権発動で停戦決議は流れた。
せめて、この詩が人々に届いてほしい。
下記はRefaat Alareerの死を伝えるGuardianの記事。
https://www.theguardian.com/world/2023/dec/08/palestinian-poet-refaat-alareer-killed-in-gaza
GoogleがAIで巻き返しを図る。
米国時間12/6に大規模言語モデル"Gemini"を発表。チャットAIのBardと、スマートフォンPixel 8 Proの上で利用可能に。GPT-4以上の性能としている。
Googleは2014年に買収したAI開発企業DeepMindを、2023年4月にGoogleのAIチームGoogle Brainと統合。AI戦略を立て直していた。
"Gemini"発表Blogの日本語版。
https://japan.googleblog.com/2023/12/gemini.html
Google / Alphabet CEOのSundar Pichaiは「Geminiは今年初めに Google DeepMind を設立したときに、私たちが抱いていたビジョンを初めて実現したもの」と述べ、Googleの巻き返しを強調。
DeepMind CEOのDemis Hassabisは「Gemini はGoogle Research のメンバーを含む Google 全体での大規模な共同研究の成果です」と「Google全体」を強調。内部ではいろいろあったのだろうが、OpenAIに負けない態勢を作ろうとしている模様だ。
「Pixel 8 ProでもGemini提供」の発表Blog↓
https://japan.googleblog.com/2023/12/feature-drop-december-2023.html
ITジャーナリストです。
仕事リスト:https://note.com/akiohoshi/n/nebac412b6c12