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『よろこびの歌』(宮下奈都)

ギブ。
本作を読みながら自分の好みを改めて言語化してみると、私は基本的に人間賛歌が好きで、その中でも、ネガティブスタートでネガティブの中にポジティブを見つけ出す物語よりも、ポジティブスタートでポジティブをいったん喪い再び手に入れる物語に惹かれますね。別の観点から言えば、人は既に何らかを喪っているのだから殊更にその(物語にあらかじめ組み込まれた)喪失を強調するのではなく、持てる状態から始まって後から喪った方が輝くでしょう。
本作の主人公らは、大切な何らかを喪った(あるいはそもそも手に入れ損ねた)女子高生たちで、彼女らは31歳のおじさんとは違ってそこまで達観していないので、喪失が強調されるのは共感できるものの、小説の技法の問題として、同じパターンが3回続いて流石にページをめくる手が止まりました。

『ロジカル・プレゼンテーション』(高田貴久)

2004年に初版が発行されて2023年に27版まで数える名著。後世に「仮説思考/論点思考」と呼ばれることになる思考フレームワークを説明する。本書の特徴は、そのフレームワークに埋め込まれるファクト/示唆/仮説の説明の方法を、実際の「提案」の技法(プレゼンテーションの技法)に昇華した点だ。この一冊で「提案」に必要な技術が揃う。
「仮説=相手の疑問(知りたいこと)に答える仮の答え」
と定義されるのだが、重要なのは「相手の疑問(知りたいこと)に」という前半部分だろう。私は、仮説の立案/その検証が自己目的化することがある。折々に触れて視野を広く持ち直して「相手の疑問」に答えられているかを見つめ直したい。
内容としては私には既知のことが多かったので詳細は割愛する。
amazon.co.jp/ロジカル・プレゼンテーション――自

『Bye Bye Blackbird』(Keith Jarrett)

これはとにかく表題曲で1曲目の「Bye Bye Blackbird」と最後の「Blackbird, Bye Bye」に尽きますね。キース・ジャレットが亡きマイルス・デイヴィスに捧げた1枚なのだが、マイルスも演奏していたスタンダードナンバーを切なく物悲しく贈る。ヘビロテしています。

『A Love Supreme』(John Coltrane)

「聞きやすさ」(メロディーの明確さなのかな?)から良い意味で離れてフリーな演奏を感じた。

『Night Train』(Oscar Peterson)

映画『オスカー・ピーターソン』を観るに当たって聴いた一枚。このアルバムはとにかく「Hymn To Freedom」に尽きますね。公民権運動のために作られた曲。非常に厳粛な気持ちになる。そういう背景を知って聴くとなおそうだが、知らずともこの曲で勝負できるほどの名曲。また、「C Jam Blues」がブルースと名付けられていながらアップテンポで、こういう種類のブルースもあるのかと発見だった。

はオンライン講座では母音を徹底的に。独学ではいつものHSK1級の動画を。

感動したエピソード、一個だけ書かせて。1950年代、60年代のアメリカでは黒人差別の嵐が吹き荒れていたわけですよ。黒人であるオスカーが用を足そうとすると、オスカー自身が演奏しているホテルの警備員が言うんですね。「黒人のトイレは外だ」と。それに対してプロデューサーであり、白人でもあるノーマン・グランツがね、答えるんですよ。「今日このホテルは、俺が借り切っている」と。
あと気に入ってる「バス」のエピソードは映画なんだけど、映画過ぎるのでみんな実際に観て。

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『オスカー・ピーターソン』(バリー・アヴリッチ)

ダバダバ泣いてしまった。ドキュメンタリー映画でありながら、ジャズのコンサートのような体験。余計な言葉よりは、実際に観て聴いて味わって頂きたいです。いいタイミングで観ることができました。
oscarpetersonmovie.com/

『鑑識レコード倶楽部』(マグナス・ミルズ)

厳かであり、即物的でもある小説だ。男たちがレコードをパブの奥の部屋で聴くだけ。コメント、批評はなし。ただ聴くだけ。主宰が定めた厳密なルールに則って進行するはずだった会は、しかしながら、厳密過ぎるが故に……。人々は自らの信念に沿って倶楽部の活動に携わっていく。小説全体を通して、彼らのひとりひとりが、聖域とでも呼べるような不可侵な領域を持っていることが描写される。その意味で、非常に厳かだ。そして即物的でもある。この小説に比喩はない。レコードの音楽の感想にも比喩はない。人々の精神活動は動詞によって表現される。
ありふれた話にも思えるし、決してありえない話にも思える。小説冒頭で、その瞬間にとあるレコードを聴いているのは自分たちだけだと評するシーンがあるのだが、本作を象徴している。誰にも開かれている話だが、どこにもない。
amazon.co.jp/鑑識レコード倶楽部-マグナス・ミル

『We Get Requests』(Oscar Peterson)

いかにも「ジャズ」という感じの曲のショーケース。どの曲もコンパクトで聞き飽きない。1曲目「Quiet Nights Of Quiet Stars (Corcovado)」はタイトルの通り、静かに幕を開けるが、自由自在な演奏が気持ちいい。最後の「Goodbye J.D.」でも自由自在だが、こちらはアップテンポなのが好対照。
思うが、この一枚はトリオだが、トリオだとそれぞれの楽器の聴き所を(そう意識せずとも)追いかけやすく、カルテットだと楽器同士の相互作用を楽しめて、クインテットだと細部よりはダイナミズムを浴びる印象だ。もっと幅広く注意深く聴くともっと高い解像度で聞けるんだろうが。

いま聴いているのは、アルバム『On Impulse: John Coltrane』から「Impressions」(by ジョン・コルトレーン)
open.spotify.com/track/5Zxl1Bn

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