今、内閣府が安倍元首相の国葬儀に関することを「有識者(じゃないのも一部にいるが)にヒアリングした報告書「故安倍晋三国葬儀に関する意見聴取結果と論点の整理」をざっと眺めていた。以前Twitterで言ったことの繰り返しになるが、もともとこの国葬儀は「ある人物の業績を評価して、国葬儀の対象に選んだ」というより「拙速に国葬儀の対象に選んだ後、その人物の業績を後付けで説明した」という印象が強い(選挙や内閣支持率のことを念頭に置いていないと言うこともなかろう)。別言すれば国葬に値する人物であったことを「実際に国葬を行うこと」で証明しようとしたのが今回の政府の動きだろう。要するに順序が逆なのである。古諺に「棺を蓋いて事定まる」というが、その後に様々な問題が噴出したせいで、その蓋も覆うことができなくなった末の混乱であったと思う。
あと、国葬儀に賛成、反対の立場の違いはあれ、「国葬儀の対象になる人物を選ぶ基準を作ることは無理」「弔問外交の成果は云々すべきではない」というところは結構一致していたのも興味深かった。
https://www.cao.go.jp/kokusougi/kokusougi.html
厚労省が出した「宗教の信仰等に関係する児童虐待等への対応に関するQ&A」をパラパラ読んでいる(リンク先PDF注意)。安倍元首相殺害事件から思わぬ方向で動き出したこの問題、もちろん無策のままよりはマシだが、極端な事例よりも、日常的な制約(しつけの範疇に入ってしまいかねないこと)をどう見るかというのは、結論の出ない問題だ。白黒付けるのができる事例の方が実は少ないのだ。
僕が過去にこの問題に関わったのは、「宗教的信念により無輸血治療を希望する患者に病院がどう対処するか」という某大学病院マニュアル作りに参加したことくらいだ。「成人」はある意味「愚行権(キツい言い方だが)」があるので対処は簡単なのだが、「子ども」および「遺言状が書ける程度の年齢」への対処というのが難しいと、その委員会で知った。「子ども」の場合にはいざとなれば「ネグレクト」として親権を取り上げ、児相と弁護士が立つ、というのもそのマニュアルにあった。もう一つ「裏マニュアル」としては、信仰心が薄い(もしくは無い)保護者を捕まえて「治療(手術)同意書にサインさせる」こと。これが一番トラブルにならないのだが、これも最終手段なのでね・・・。
記者会見に参加しました。結構本気で民主主義の危機だと思っています。
というのも、学術会議法を第三者による会員推薦や政府による任命拒否が可能になる方向で変えてしまう提案が今、なされているわけですが、これが通ってしまうと憲法23条「学問の自由」が主観法および客観法としてフルに効いていた組織がなくなるからです。
無論、それで人々が日常の不便を感じるレベルにはすぐにはならないでしょう。しかし、自民党のみの提案を入れた今の方針の提案が通ってしまったら、民主主義が損なわれないようにするための安全装置は確実に一つ消えます。
https://mainichi.jp/articles/20221227/k00/00m/040/311000c
‘声明では「会員選考と活動の独立性は、世界のアカデミー(学術機関)の常識」とした上で、「この原則を蹂躙(じゅうりん)し学術会議を政府の御用機関に改変することは、国民の幸福と人類社会の福祉に反することになりかねない」と指摘した。
海外のアカデミーに詳しい隠岐さや香・東京大教授は記者会見で、ロシアのプーチン大統領が2010年代に科学アカデミーを改革していた例を挙げ、「独裁的な方向に向かう時は学者の任命権や発言権が真っ先に攻撃の対象になる。民主主義では政府の人事・任命などにおびえずに自由に発言できることが大事。先例として未来に残すべきではない」と述べた。’
学術会議巡る政府方針「任命拒否上回る介入」 守る会が撤回要望 | 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20221227/k00/00m/040/311000c [2022/12/27]
新聞の渡辺京二さんの訃報の記事を『逝きし世の面影』(平凡社ライブラリー、2005)に挟み込む。彼の『北一輝』(朝日新聞社、1978)も買ってはいるが、実は未読。実は北一輝って、僕にとってはなかなか食指が動かない対象なので。
僕が渡辺さんの名前を知ったきっかけは恐らく石牟礼道子『苦海浄土』の解説「石牟礼道子の世界」ではなかったか。石牟礼さんの残酷で美しい曼荼羅めいたこの作品の「創作秘話」を教えてくれたものとして記憶に残っている。少し引用すると「『苦海浄土』は聞き書き謎ではないし、ルポルタージュですらない。(中略)石牟礼道子の私小説である(p.309)」「すると彼女はいたずらを見つけられた女の子みたいな顔になった。しかし、すぐこう言った。「だって、あの人が心の中で言っていることを文字にすると、ああなるんだもの」。この言葉に『苦海浄土』の方法的秘密のすべてが語られている。それにしても、何という強烈な自信であろう(p.311)」
『逝きし世の面影』も色々毀誉褒貶がある書物だが、今度じっくり読んでみたいと思う。
私が岩田氏を「学者崩れ」と厳しく批判するのには、アパ以外にも実体験に基づいています。以前私が非常勤をしていた大学で、岩田氏は専任講師でした。3月に出た来年度の冊子のシラバスには名前があったのに、4月に大学に行ったら張り出された時間割に名前はありませんでした。不祥事があったのです。
詳細はさすがに遠慮しますが、それでも「保守」人脈で?別な大学に拾われたらしいのに、それも待遇が不満とかで辞めて、今は何をやっているんだか。youtuber? 岩田氏にとって学問とは、仲間とともに追究するものではなく、自分が出世するための踏台でしかなかったのでしょう。
歴史修正主義者が「有識者」扱いされるのは今までもあったことですが、それがますます怪しい人物になっていっている、西尾幹二氏のように「本業の研究はまともなのに…」という人からさらにおかしくなっているのは、日本がいよいよダメな国になっている証左のように思われてなりません。
https://twitter.com/hayakawa2600/status/1606576080886075392
「日本学術機構」なるもっともらしげな団体理事を称している岩田温氏、自分の作った団体をそう称しているだけという、はなはだ怪しい人物なのに、「有識者」扱いなのが呆れるよりほかにありません。アパホテルの「真の近現代史観」でデビューした人だよ!
岩田氏の団体についてはこちらのツイート参照。 https://twitter.com/fzk06736/status/1605938283573579777
アパホテルの「真の近現代史観」については当時、ブログで批判したのでご参照ください。岩田氏の「論文」、坂口安吾一点しか参考文献がなくて、それで「論文」とは何なのか。
https://bokukoui.exblog.jp/10388920/
それにしても、まっとうな研究者を法解釈を捻じ曲げてまで嫌がらせをしておきながら、どう考えても怪しい、ネトウヨの学者崩れみたいなのを「有識者」としてありがたがるというのは、まことこの国の権力者の体たらくをよく表しています。真理などどうでもよく、耳に心地よい追従を重用する典型的暗君。
前にも書きましたが、日本学術会議は、WWII以後、「滝川事件」、「天皇機関説事件」などの、学問に対する弾圧の反省として、憲法に「言論の自由」とは独立して、わざわざ23条で「学問の自由」を明記し、その「学問の自由」を制度的に保証するものとしてつくられたものです。
ところが安保法制の際の「報復」=「みせしめ」として、「任命拒否」問題が起こり、岸田政権になっても、この「政治的」報復を撤回するどころか、学術会議の構成そのものに政府が介入できる「法改正」を表明。
これは、直接的には、大学を軍事開発に動員する、という目的がある。
以前にも書いたが、学術会議全体としては、今のところ「軍事開発」に協力することは「望ましくない」という立場。
しかし、工学系を中心に、「デュアル・ユース」の名の下に軍事開発に関与して巨額の研究費を獲得したい部分もすでに存在している。
来るべき法改正は、学術会議が軍事研究への協力への「障害」とならないよう、「介入」できるように設定するつもりだろう。
しかし、同時に、憲法23条に基づいた「学問の自由」は骨抜きにされることになる。
従って、学術会議問題は、たんに研究者に関わるだけでなく、日本国憲法体制への全面的な攻撃の重要な一環をなしている。。
このところ、寝る前に『学研の図鑑 LIVE 昆虫』(2022年)を眺めて童心に戻って楽しんでいる。監修は、NHKラジオの「子ども科学電話相談」でお馴染みの丸山宗利先生。
この図鑑の何が凄いかって、全て「生きている時の写真」で、標本がないんだよね。驚き。
あと、改めて昆虫の生態の摩訶不思議さに虜になっている。特に「擬態」と「寄生」のメカニズムには驚かされる。神様のデザインとしても、ここまで凝ったものは作らないだろうと思う。例えばナナフシなんて、そこまで枝に似せなくてもと思うし、「狩りバチ」の餌食になる虫って、前世でどんな悪いことをしたら、とまで思う。大人も楽しめますね、図鑑は。本屋で時々「プレゼント包装はいたしますか?」と訊かれますが。
この季節、「恒例行事」として卒論指導にいそしんでいるが、毎年僕の性格で一番悪いところを自覚する季節にもなっている。それは一言で言うと「体育会系」というか「下士官根性」というか「姑根性」というか(一言で言っていない)。要するに「俺はそれくらいは耐えてきた。お前らも耐えろ」とつい思ってしまうという、しばきあげ主義。自分が良くも悪くも「研究者養成大学」で育ったので、知らず知らずのうちにパワハラ体質になってしまったのだと自分でも思う。でも僕の指導教員の先生方はそういう人であったということは全くないから、この性格の悪い差は自己責任だよな。東大、京大くらいだと、ろくに指導もせず放置しておいて「君、この程度なの?」と突き放すような人が多いから(笑)、僕の場合は、見捨てられる不安から過剰適応してしまったんだよなあ・・・。
親切な方からの情報提供。僕には謎の団体だった「日本学術機構」というのは元々「一般社団法人日本歴史探究会」という名称で、やはり岩田温氏が設立した団体だそうです。こういう紛らわしい名前、一言で言うと「セコい」よねえ。JAROに訴えたくなるくらいだ(笑)。「著述業」とかの方がまだ信用できる。
てか、はっきり言うと、この人が「有識者」として国葬をめぐる議論に政府から呼ばれる、というのからしておかしいんだが(政府からすれば数少ない「味方」でしょうけど)。今朝の朝日新聞読んで、国葬をめぐる有識者諮問会のメンツを見て驚いちゃった。
https://houjin.jp/c/1120905005254
https://twitter.com/nichinichibijou/status/1605487608162762752
権力者が国民を舐めている、まさに然りと思います。世界のほかの国でも類を見ないんじゃないでしょうか。
私がここで想起せざるを得ないのが、過去にも権力者が国民を舐め切った政治をした結果、国を破滅に追いやったことがあるということです。このグラフは第二次大戦期の日独尾生活水準比較ですが、ドイツは戦時中でも末期までそこそこのラインを確保しているのに、日本は日中戦争以降ダダ下がり。
もしも失敗から学ぶならば(全然内閣支持率も上がらなかったし)、もうよほどのことがないと(皇族以外の)国葬は行われないでしょうね。にしても「日本学術機構代表理事・岩田温」が気になりすぎる(笑)。こんな名称、公的な組織と思っちゃうじゃないか(今のところググっても何も出てこないし、岩田氏が勝手に作った組織のようですね)。こういう「いかにも公的な機関を装う名称」として、「神社本庁」を連想しちゃった。学生で時々「官庁の一種じゃないんですか?」と勘違いするのが出てくるんだよな。ある意味向こうの「目論見通り」だろうけどさ。/安倍氏国葬「常識的対応」「しこり残った」識者評価分かれ 政府公表 | 毎日新聞
今のブーストの件、面白いな。
イーロンマスクの"I will resign as CEO as soon as I find someone foolish enough to take the job! "のfoolishを「愚かな」「馬鹿な」とするのは違うんじゃないか、という話。
確かにそう訳されたら引っかかるし、「酔狂にも〜しようとする人」というのは意味としてまさにその通りだなと思う。
ただそれはそれとして、日本語で「愚かな」「馬鹿な」と形容詞で訳されると違和感があるのに、「こんな仕事引き受けようっていう馬鹿がいるならすぐにでもやめてやるよ」と名詞のまま訳すと、むしろ「酔狂にも〜」に近くなるような気もして、面白い。
あくまで私の語感ではということだけど。
取り消しになりました。当然だと思うけど
安倍元首相銃撃事件 容疑者の鑑定留置再延長の決定を取り消し | NHK | 安倍晋三元首相 銃撃
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221220/k10013929361000.html
「文化相対主義」とかは、専攻している学問のせいで骨身に染みるほど「お勉強」してきたけど、「女には絶対教育を受けさせない」政体は「野蛮」以外でどう表現するべきか。
イランなどは「女は男と隔離されて教育や医療を受けるべき」との国是でもって、女性教員や女医が増えたというのかあるが、「道徳警察」などの制度は言わずもがな。
「自由な体制のくせに、女性国会議員の割合がその程度の日本に偉そうに言われたくない」と言われたらぐうの音も出ないのだが。
「タリバン、女子の大学進学を禁止 アフガン」
https://www.afpbb.com/articles/-/3444200?act=all
川瀬貴也。大学教員。宗教学者。専門は日韓近現代宗教史。宗教学、思想史、近代文化史、社会学の周辺をぐるぐるしているつもりです。発言は個人の見解であり、所属とは無関係です。