『宗教的経験の諸相』の「哲学」の講では、カントとヘーゲルの世界観、認識論の違いを土台に、宗教に対するプラグマティックな価値判断をジェイムズは行います。
しかしこのヘーゲルの世界観、認識論をぱぱっと理解できるかというと、なかなか時間がかかるのが現実です。主著のひとつ『精神現象学』は、その述語や概念の難解さで知られています。
しかしヘーゲルは、とてつもなく突飛なことや現実離れしたことを主張しているのではありません。彼は啓蒙主義を経た近代以降の社会の中でそれぞれの個人が、どのように人間の有限性を受け入れ、有限性を肯定しながら協働して社会を作っていくかを模索しました。
そのような視点から『精神現象学』を解説するこのテキストは、分量は少ないですがヘーゲルの世界観、認識論の本質を描き出している優れたものです。
『宗教的経験の諸相』の「哲学」の講、またカーツ『Not-Got』を読む手がかりになるでしょう。
5月の『諸相』スタディは今週土曜日、5月4日20時から。
QT: https://fedibird.com/@syoso_aa/112227896398380151 [参照]
『宗教的経験の諸相』でジェイムズは何度かカントという思想家に言及します。
特に「哲学」の講では、カントとヘーゲルの世界観、認識論を比較してプラグマティックな宗教に対する価値判断を行います。しかし、カントといえば「難解」で知られた哲学者です。
しかし、『宗教的経験の諸相』の「哲学」講を理解するには避けて通れないことも事実です。
『純粋理性批判』や『道徳形而上学原論』といった著作をいきなり読んで挫折するよりも、このような概説書から読むことをおすすめします。著者の熊野氏は丁寧かつ簡潔に、カントの思考の枠組みを示してくれるのでとても良いです。
次回ミーティングのお知らせ
4月27日(土曜日)
20時30分より
詳しくは諸相HPをご覧ください。
https://syoso.org/bbsg
ビッグブックが前提としている精神医学はアメリカの精神分析なのですが、刊行から80年が経過するとそのことも忘れられている感があります。
現代のDSMやICDの概念、もしくはトラウマやPTSD、ナラティブやオープンダイアローグなどが12ステップ成立に影響を与えたのではありません。なぜなら、それらはビッグブックが刊行された時代には存在しなかったからです。
ビル.Wやアーネスト・カーツがどのような精神医療の概念を前提として発言しているのか。また、ユング博士の立場はどのような立場なのか。
そのような、AAメンバーにとって大切な問いへの重要な参照テキストになるでしょう。
BBスタディ・ガイドの公式Mastodonアカウントが始動しました。
依存症業界では有名な斎藤学氏の著作。
『諸相』スタディは神秘主義の講でこの著作からの引用をしました。
にしても、これはジェイムズの言う「二度生まれ」型の人間の精神の危機を精神医学の立場から見事に描いていると言える名文です。
では、この二度生まれ型の人間に決定的に不足している「自己愛エネルギー」を、12ステップではどこから得るのか。
それが、セッション14で扱うテーマとなります。
『諸相』スタディ・メンバーのnote。
『諸相』スタディのスタディ一覧Googleカレンダーにも掲載しています。
https://syoso.org
QT: https://fedibird.com/@cornerstone_ga/112268902075736450 [参照]
ひいらぎさん(心の家路)が記事中で『諸相』スタディを紹介してくださいました。
ありがとうございます。
https://ieji.org/2024/13556
アナール学派に属する歴史家である著者のフランチェスコ研究をまとめたテキスト。
これを読むとフランチェスコをはじめとする托鉢修道士たちは、「祈る人」として修道院の中に篭るのではなく、「祈り、かつ働く人」として都市で活動した事実がわかります。
それはヤコブ書をその土台にもつAAの霊性にも当てはまります。また、托鉢修道士たちの霊性は、『宗教的経験の諸相』でジェイムズが描くプラグマティズムを前提とした、現実の生活の中で働く霊性でもあるでしょう。
12&12でフランチェスコに触れたAAメンバーの次のステップにおすすめの著作。
なんでも、ビル.Wが入院したときに読んでいた本の一つだとか。
どうやら初期AAで流行っていた一冊のようです。12&12に「フランシスコ平和の祈り」が出てくるのですから、そうであっても不思議ではありません。
この本の原典の最古の版は1390年だそうで、アシジの聖フランシスコの没後150年後に書かれた彼の伝記です。
フランシスコ自身はほとんど著作を残していませんので、貴重な証言集になるのでしょう。欧米のキリスト教文化ではよく読まれている一冊、霊性の修養に役立つでしょう。
山谷に民間ホスピス「きぼうのいえ」を創設した山本夫妻をめぐるノンフィクション・ドキュメント。
この本の内容は様々な角度から学ぶことができますが、霊性の持つ負の面という観点を描き出すという観点からも意義があります。
ジェイムズは回心をはじめとする宗教現象の有用な面に多数言及しますが、その裏の負の面にも言及をしています。そういった霊性をめぐる様々な論点を理解するためにも、有益な一冊です。
禅というのは座禅を中心とした修業で自力で悟りを得るものだと、このテキストを読むまで勘違いしていました。
『宗教的経験の諸相』の中の「受動性」という概念を理解させてくれたのもこの本です。その概念の豊かさ、そして概念の実践としての禅という新しい理解を開いてくれました。
禅という宗教現象を知りたい方にぜひおすすめしたい一冊。
ジェイムズの認識論は多元論とともに根本的経験論があります。
それは主客の二元論を拒否し、人間の日常生活の親密な経験を擁護する思想でした。
なぜジェイムズが『宗教的経験の諸相』の特に「哲学」の講において、執拗に主知主義を批判し経験を重視するのか、その重要な点を理解するためにはこのテキストが必要です。
「人間というものはよほど意味を求める欲求が強いらしく、苦悩しつつある時でさえ、そこに何ほどかの意味を感じたいらしい。いったい何のために毎日こんなに苦しんでいるのであろう、と彼はつぶやく。苦しむことで何事かが得られるなら、何かの目的が果たされるなら、苦しみもまだ耐えやすいのだ。」p.133
『生きがいについて』には上記のような一文があります。そして、その「苦しみの意味」をジェイムズが描く「回心(Conversion)』によって得た愛生園のハンセン病患者たちの実例が描かれます。
このテキストは『宗教的経験の諸相』の内容が確かに日本でも起き、人の苦悩を解決したという証(あかし)になっています。
『諸相』スタディはスタディ・ミーティングを行う #AlcoholicsAnonymous の特別グループです。
毎月第1土曜日20時からZoomで、W.ジェイムズ著『宗教的経験の諸相』をつかったスタディ・ミーティングを開催中