文化人類学者のジーン・レイヴと社会学習の理論家と実践家であるエティエンヌ・ウェンガーが著した一冊。
このテキストの着目すべき点は、AAの集団としての再生産過程が言語化されている点です。

ジェイムズはチャールズ・テイラーの批判が正しく示しているように、集団よりも個人に注目し、集団の中で生まれる文化や歴史を『宗教的経験の諸相』において考察しませんでした。
この点は個と超越との関係を鮮明に描き出す点で画期的でしたが、AAはオックスフォード・グループから受け継いだ集団性も併せ持っています。
では、ジェイムズでは描けなかったAAの文化的、組織的な再生産プロセスはどのようなものか。
ひいては、AAにおける「学習」とAAメンバーとしての「アイデンティティの獲得と成長」はどのようなものかを示してくれます。

ビッグブック、Not-Got、『宗教的経験の諸相』、そしてこの『状況に埋め込まれた学習』は、AAを作り出していくための必読書。つまり、現代においてステップ12を実践するためになくてはならない有益な道具となっています。

syoso.org/books/lave-wenger

コロナ禍の最中に出版された読書会実践のノウハウを詰め込んだテキスト。オンライン/オフラインで読書会を運営してきた著者らが、その経験の蓄積をまとめてくれています。

『難しい本を読むためには』でも読書会運営ノウハウがありましたが、こちらはさらに詳しく書かれており、参考になります。

『諸相』スタディ・グループでも読書会を運営しています。共に学び合う読書会はとても楽しく、刺激を得られるすばらしいものです。同時に「正解はないけど、失敗はある」ということも感じています。

syoso.org/books/takeda

ナシア・ガミーはアメリカの精神科医で、彼はジェイムズの多元主義を継承しています。

このテキストではヤスパース『精神病理学総論』を下敷きに多元論と折衷主義の違いを明らかなります。この論点から、ポストモダニズムを経た折衷主義・相対主義とポストモダン以前のジェイムズの多元主義の明確な違いを理解することができました。

多元主義は、それぞれの方法や道具の「限界」を強く意識する思考法なのです。

syoso.org/books/ghaemi

ジェイムズはパース、デューイらと共に「形而上学クラブ(メタフィジカル・クラブ)」のメンバーとして活動していました。

形而上学クラブはヨーロッパ哲学の主客二元論と訣別し、アメリカ独自の思想を作り上げることを自らの使命としていました。それは『宗教的経験の諸相』の中でも、ジェイムズの反知性主義として鮮烈に主張されています。
この形而上学クラブの思想の流れはAAの中にも流れ込み、アメリカ的な「役に立つ」スピリチュアリティを形作っています。

形而上学クラブの全貌を知るための必読書であり、AAと12ステップの源流を学ぶ必読書です。

syoso.org/books/menand

19世紀アメリカを観察し、そこに「結社の能力(Art of Association)」を見たトクヴィル。
この「結社の能力」はAAにもジェイムズにも無関係ではありません。

ジェイムズはヨーロッパ哲学とは違う、アメリカの哲学を作り上げようとする形而上学クラブのメンバーであり、アメリカ思想界の自立を目指しました。
またAAは各グループはあらゆる権力や団体から自治独立していることが12の伝統により求められています。

これらはアメリカの「結社の能力」を土台としたアイデアです。AAはトクヴィルの見たアメリカから多くのことを学び直す必要があります。

syoso.org/books/tocqueville

1960年代に出版されたジェイムズ著作集は、現在オンデマンド出版で販売されています。

『心理学について』『信ずる意志』『哲学の諸問題』はこのシリーズ以外に翻訳がないようですので、ジェイムズに強い関心があるなら持っておいて損はないでしょう。

syoso.org/books/james06

『宗教的経験の諸相』や『プラグマティズム』などはこちらで紹介したThe Library of America版選集に収録されているのですが、ジェイムズの主著である『心理学原理』は収録されていません。

Dover版が定評があり、かつ安価でよいです。Amazonからも買えます。

syoso.org/books/james05

『宗教的経験の諸相』の「哲学」の講では、カントとヘーゲルの世界観、認識論の違いを土台に、宗教に対するプラグマティックな価値判断をジェイムズは行います。

しかしこのヘーゲルの世界観、認識論をぱぱっと理解できるかというと、なかなか時間がかかるのが現実です。主著のひとつ『精神現象学』は、その述語や概念の難解さで知られています。
しかしヘーゲルは、とてつもなく突飛なことや現実離れしたことを主張しているのではありません。彼は啓蒙主義を経た近代以降の社会の中でそれぞれの個人が、どのように人間の有限性を受け入れ、有限性を肯定しながら協働して社会を作っていくかを模索しました。
そのような視点から『精神現象学』を解説するこのテキストは、分量は少ないですがヘーゲルの世界観、認識論の本質を描き出している優れたものです。

『宗教的経験の諸相』の「哲学」の講、またカーツ『Not-Got』を読む手がかりになるでしょう。

syoso.org/books/saito02

『宗教的経験の諸相』でジェイムズは何度かカントという思想家に言及します。

特に「哲学」の講では、カントとヘーゲルの世界観、認識論を比較してプラグマティックな宗教に対する価値判断を行います。しかし、カントといえば「難解」で知られた哲学者です。
しかし、『宗教的経験の諸相』の「哲学」講を理解するには避けて通れないことも事実です。

『純粋理性批判』や『道徳形而上学原論』といった著作をいきなり読んで挫折するよりも、このような概説書から読むことをおすすめします。著者の熊野氏は丁寧かつ簡潔に、カントの思考の枠組みを示してくれるのでとても良いです。

syoso.org/books/kumano01

ビッグブックが前提としている精神医学はアメリカの精神分析なのですが、刊行から80年が経過するとそのことも忘れられている感があります。
現代のDSMやICDの概念、もしくはトラウマやPTSD、ナラティブやオープンダイアローグなどが12ステップ成立に影響を与えたのではありません。なぜなら、それらはビッグブックが刊行された時代には存在しなかったからです。

ビル.Wやアーネスト・カーツがどのような精神医療の概念を前提として発言しているのか。また、ユング博士の立場はどのような立場なのか。
そのような、AAメンバーにとって大切な問いへの重要な参照テキストになるでしょう。

syoso.org/books/fujiyama01

依存症業界では有名な斎藤学氏の著作。
『諸相』スタディは神秘主義の講でこの著作からの引用をしました。

にしても、これはジェイムズの言う「二度生まれ」型の人間の精神の危機を精神医学の立場から見事に描いていると言える名文です。

では、この二度生まれ型の人間に決定的に不足している「自己愛エネルギー」を、12ステップではどこから得るのか。
それが、セッション14で扱うテーマとなります。

syoso.org/books/saito

アナール学派に属する歴史家である著者のフランチェスコ研究をまとめたテキスト。

これを読むとフランチェスコをはじめとする托鉢修道士たちは、「祈る人」として修道院の中に篭るのではなく、「祈り、かつ働く人」として都市で活動した事実がわかります。
それはヤコブ書をその土台にもつAAの霊性にも当てはまります。また、托鉢修道士たちの霊性は、『宗教的経験の諸相』でジェイムズが描くプラグマティズムを前提とした、現実の生活の中で働く霊性でもあるでしょう。

12&12でフランチェスコに触れたAAメンバーの次のステップにおすすめの著作。

syoso.org/books/legoff

なんでも、ビル.Wが入院したときに読んでいた本の一つだとか。

どうやら初期AAで流行っていた一冊のようです。12&12に「フランシスコ平和の祈り」が出てくるのですから、そうであっても不思議ではありません。

この本の原典の最古の版は1390年だそうで、アシジの聖フランシスコの没後150年後に書かれた彼の伝記です。

フランシスコ自身はほとんど著作を残していませんので、貴重な証言集になるのでしょう。欧米のキリスト教文化ではよく読まれている一冊、霊性の修養に役立つでしょう。

syoso.org/books/francesco

山谷に民間ホスピス「きぼうのいえ」を創設した山本夫妻をめぐるノンフィクション・ドキュメント。

この本の内容は様々な角度から学ぶことができますが、霊性の持つ負の面という観点を描き出すという観点からも意義があります。

ジェイムズは回心をはじめとする宗教現象の有用な面に多数言及しますが、その裏の負の面にも言及をしています。そういった霊性をめぐる様々な論点を理解するためにも、有益な一冊です。

syoso.org/books/suenami

禅というのは座禅を中心とした修業で自力で悟りを得るものだと、このテキストを読むまで勘違いしていました。

『宗教的経験の諸相』の中の「受動性」という概念を理解させてくれたのもこの本です。その概念の豊かさ、そして概念の実践としての禅という新しい理解を開いてくれました。

禅という宗教現象を知りたい方にぜひおすすめしたい一冊。

syoso.org/books/fujita

ジェイムズの認識論は多元論とともに根本的経験論があります。
それは主客の二元論を拒否し、人間の日常生活の親密な経験を擁護する思想でした。

なぜジェイムズが『宗教的経験の諸相』の特に「哲学」の講において、執拗に主知主義を批判し経験を重視するのか、その重要な点を理解するためにはこのテキストが必要です。

syoso.org/books/james04

「人間というものはよほど意味を求める欲求が強いらしく、苦悩しつつある時でさえ、そこに何ほどかの意味を感じたいらしい。いったい何のために毎日こんなに苦しんでいるのであろう、と彼はつぶやく。苦しむことで何事かが得られるなら、何かの目的が果たされるなら、苦しみもまだ耐えやすいのだ。」p.133

『生きがいについて』には上記のような一文があります。そして、その「苦しみの意味」をジェイムズが描く「回心(Conversion)』によって得た愛生園のハンセン病患者たちの実例が描かれます。
このテキストは『宗教的経験の諸相』の内容が確かに日本でも起き、人の苦悩を解決したという証(あかし)になっています。

syoso.org/books/kamiya

現代思想23年10月号は「スピリチュアリティの現在」特集。

どの論考も非常に参考になりますが、柳澤田実氏の『感情が「現実」を作る時代――なぜニューエイジというアメリカの病はこれほど根強いのか』は『諸相』スタディのなかでも取り上げました。

ジェイムズの「二度生まれ」と「一度生まれ」という概念、また自己放棄(self-surrender)や「健康な心」という概念を理解するためにも役に立ちます。

syoso.org/books/gendaishisou23

アメリカの反知性主義の歴史を知りたければ、まず参照すべき必読書。
AAを理解するには反知性主義を避けて通るわけにはいきません。12の伝統、12の概念がなぜ生まれ、どのような意図を持っているのか。
AAメンバーはもう一度、伝統と概念を学び直す必要がありそうです。

syoso.org/books/hofstadter

ユングといえば、ビッグブックにも登場するAAの理解者の一人です。ユング博士なしにAAは成立しませんでした。


そんなユングとジェイムズの影響関係はこれまであまり取り上げられることはありませんでした。しかしユングはたびたび『宗教的経験の諸相』に言及したことが知られていること、またユングの研究テーマからもジェイムズは無視できるものではないはずです。
このテキストはユングとジェイムズの関係を明確に論じており、両者に多大な恩義があるAAメンバーにも非常に有用でしょう。

syoso.org/books/ogiso

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