『宗教的経験の諸相』の「哲学」の講では、カントとヘーゲルの世界観、認識論の違いを土台に、宗教に対するプラグマティックな価値判断をジェイムズは行います。
しかしこのヘーゲルの世界観、認識論をぱぱっと理解できるかというと、なかなか時間がかかるのが現実です。主著のひとつ『精神現象学』は、その述語や概念の難解さで知られています。
しかしヘーゲルは、とてつもなく突飛なことや現実離れしたことを主張しているのではありません。彼は啓蒙主義を経た近代以降の社会の中でそれぞれの個人が、どのように人間の有限性を受け入れ、有限性を肯定しながら協働して社会を作っていくかを模索しました。
そのような視点から『精神現象学』を解説するこのテキストは、分量は少ないですがヘーゲルの世界観、認識論の本質を描き出している優れたものです。
『宗教的経験の諸相』の「哲学」の講、またカーツ『Not-Got』を読む手がかりになるでしょう。