「一寸ずり」って大分弁があるのですが、数年前に”道路が渋滞していて、車が inch by inchにしか進まない”という原文に対し、即座に「一寸ずり」と入力したら一発変換しないので、あれと思ってググったら大分弁だったとはじめて知ったときの衝撃。
”sip"を自動的に”啜る”と訳さないほうがいいと思う。この人は人前でずずずと音をたてて紅茶を飲むかしら、ビールを飲むかしら、と思うことが、翻訳ものを読んでいるとたびたびあります。
もしかして、ちびちび飲む、あるいはちょっと口をつけることを、最近は”啜る”っていうようになったのかな。気になっていたので、いまこっそり吐き出しました。
あと"learning disorder"。”学習障害”と訳されているものの原文はたぶんこれだと思うのですが。文脈からいって”学習障害”ではなく”知的障害”ではないかと思われるケースを見ます。
もちろんわたしもこういう間違いは散々やっていて、誤訳に気づいたときのへこみようといったらそれはもう、です。
本屋論として書かれ始めたものなので「本屋本」ではありますが、書いている最中に少しずつその本質が変わっていった感じがあり、個人的には「みんなのための本屋論」という文言がしっくりくるものになりました。本(屋)には社会を変える力がある、と信じる/信じたいみなさんに届くことを願っています。
とりあえず、今日のところは以上です。たぶんほかに言うべきこと知らせるべきことがたくさんあるはずなんですが出てこないので、思い出したらまた書きます。『ユートピアとしての本屋 暗闇のなかの確かな場所』(大月書店)、4月下旬刊行予定です。
【お知らせ】
『#結晶するプリズム 翻訳クィアSFアンソロジー』のクラウドファンディングを開始致します。開催期間は「3/31(金)23時」まで。目標金額は「500,000円」です。クィアな作品を必要としている方に無料で届けられるよう、ご支援どうぞ宜しくお願い致します。
https://readyfor.jp/projects/queersf2023
あわせてアンソロジーの表紙ラフも公開されました。ファッションSFウェブジンでもご協力くださったクィアなイラストレーターmorikaさんが再びfabulousな表紙を手掛けてくださっております!
本企画を通して、わたしたちはここにいるよ、ということを少しでも分かち合えたら嬉しいです。
EEAaO(エブエブ)はもともと「ADHD傾向のある主人公の気が逸れると並行宇宙に跳べる」というアイディアだったそうです。
はたしてこのアイディアを真っ当に実現できるだろうかと、ADHDについて調べ始めたDaniel Kwanが自分も当てはまることに気づき、病院で診断され、服薬を始めた経緯があります。
Kwanはこの映画で自分のカタルシス体験を作品で表現できただけでなく、他の人が自分の経験を語るきっかけになれたのを喜んでもいるそうです。(最近診断を受けた人や自らの傾向を疑っている人が、本作を観たときにあたかも自分の脳内で起こっていることみたい!と思った事例をちらほら聞いたらしい)
Kwanはまた、女性のADHDが見逃されてきた件にも言及しています。
https://www.salon.com/2022/04/17/everything-everywhere-all-at-once-daniels-adhd/
Electric Literatureに3月7日付で「出版業界では生きるのに必要なだけも稼げない」という記事が載っていて、それを読んで思い出したのでした。
https://electricliterature.com/i-never-made-a-living-wage-when-i-worked-in-publishing/?mc_cid=ea2913434a&mc_eid=714e07d488
昨年、米国の出版社ハーパーズで大規模ストライキが起こって、たくさんの著者も支持を表明していました。
https://www.theguardian.com/us-news/2022/nov/10/harpercollins-union-strike-publishing
今日は、グーグル日本の労働組合結成の話(https://news.yahoo.co.jp/articles/37a515933580174aee03a86e4ea4d73784cfb1ac )と、北米でレイオフされてビザ猶予期間中に幸い転職できた日本人女性(MBA持ち)の体験談(https://note.com/kaori_yamaguchi/n/nbb464c144408 )が流れてきました。
英米文学翻訳者です。訳書/トム・リン『ミン・スーが犯した幾千もの罪』(集英社文庫)カリン・スローター『偽りの眼』(ハーパーBOOKS) ウィリアム・ボイル『わたしたちに手を出すな』(文春文庫)など。