『隣の国の人々と出会う』(斎藤真理子)

韓国語はよくわからず、日本語の詩にはあまり興味が持てず、な私ですが、引用されていた韓国語の詩(日本語に訳されている)に感銘を受けるという貴重な体験をしました。たくさんの死を詩に刻む、朝鮮半島の歴史と声の重みに触れられて良かった。

英語を介さない外国語のやりとりというものにもすごく魅力を感じました。
中国語、もうちょっと頑張ろう!
韓国語もいつか…

『宇宙人のしゅくだい』(小松左京)

教室の生徒さんと読む本を探していたら、小松左京さんの児童書があると知って嬉しくなってすぐに読みました。

未来人や宇宙人、そして過去の子どもにも会える短篇集。コミカルな調子だけれど、戦争の恐ろしさや地球のかけがえの無さをSF作家ならではの視点で語りかけてくれています。

1980年代の作品ですが、今の子どもたちにも大人たちにも心の栄養を与えてくれそうです。

昨年の夏に保護した猫さん、
推定年齢は15歳を軽く超えていそうなのだけど、このところいよいよご飯を食べなくなって衰えが加速している感じで。

心の準備をしつつ、少しでも食べてくれそうなものを試す毎日です😢

先月撮った、まだ普通に動けていた猫さんの写真です。

『異邦人』(カミュ)

何度目か?です。今回は作品中の植民地主義的なものを意識して読みました。現代の実社会にもある、あまりに自然に隣国の人々やルーツの異なる人々を見下す描写やその源について考えてみたかったので。
読む度にハッとさせられますね。

『SNSの哲学/リアルとオンラインのあいだ』(戸谷洋志)

電子空間に放った言葉はどんなに時を経ても劣化せず消去もできない重みを持っていること、言えることと言えないことの区別など、個を確立していく過程で必要なことが詰まっています。中高生の生徒さんと一緒に読みたくなりました。

『老神介護』(劉慈欣)

時を超えた5つの短篇集。
現代の人類は現代の人類以外にはどう映るのか、視点の多様さはさすがです。

中でも、教育費が高騰を続け階層の移動が不可能になった超格差社会のそのまた先を描いた
『扶養人類』
は、現在とあまりにリアルに地続きなSF作品でした。

『素直な戦士たち』(城山三郎)

"IQはおいくつですの"
"一五三! わぁ、すてき、すてきですわ"(p7)

お見合いの一幕から始まる
"わたしの英才づくり"(p15)

息子を東大文一入れるため育児書を読み漁り新しい学説に飛びつく母親、期待を一身に負う長男 、邪険にされる次男…。

教育ママ、という言葉が誕生した頃(1970年代)の作品です。

自分の子どもの教育には夢中であっても教育一般に対して関心を向けることができず(p145)、そんな自分の未熟さにも気付くことができなかった母親が酷なまでに描かれていました。ちっとも古くなく、サスペンスのような怖さです。

『プリンセス・トヨトミ』(万城目学)

関東人が知らない大阪人の秘密。
嘘のような本当の話?
本当のような作り話?
この境目が絶妙で終わりまで一気に読みました。
日本史オタクでもなければ、大河ドラマも見ない人だけど、これはとても面白かったです。
現代版の大坂夏の陣、いかがですか?

『能力で人を分けなくなる日』(最首悟)

80代の最首さんと10代の若者の対話。信念を伝えてくれる人生の大先輩との交流は、若者の抱える生きることに対する漠然とした不安を和らげてくれるのではないかと。

"頼り頼られるはひとつのこと"

この対話自体がそれを体現してるようでした。

『華氏451度』(レイ・ブラッドベリ)

家が燃えなくなった未来でのファイアマンの仕事は本を焼くこと。諸悪の根源は本。
本は少数派に不安を与えて、多数派の楽しい日々を脅かす。
"いかにも聖人ぶったえげつない連中には、人に罪悪感を抱かせるという才能があるんだ。"(p192)

新聞は見出ししか読まない、動画は早回し、外国語や哲学なんて無駄、そんな世の中を1950年代の近未来小説は見事に予測してます。

どんなに本を焼き尽くしても"頭の中に図書館をもつ人"(p255)はどこかで生きている。

読後感が若い頃に読んだ『デミアン』(ヘッセ)になんだか似ていました。

『琥珀の夏』(辻村深月)

始めは緩やかな感じのミステリーかな?と思ったのだけど、読み進むほどに大人の都合に振り回される子どもの痛みに向き合う作品なのだと印象が変わっていきました。

カルト団体の中の学校が舞台。自分で選んだわけでもなくそこに居なければならなかった子どもたち。その教えを信じて育つ以外になかった…。

たとえそれが一般的なものの見方であっても、誰かの信じているものを自分が信じていないというだけで"キレイゴト"とバカにする、これは人の尊厳を脅かすものだ、とはっきり書かれているのが印象的でした。

読み終わった感想は、読み始めよりずっと良くて重かったです。

『カラフル』(森絵都)

読了です。仕事柄、入試問題で作品の一部をつぎはぎのように読んでいましたが、一作品きちんと読むのは初めての森絵都さん。

コミカルというか、軽快に物語は進みますが、その軽快さが中高生と肉体の死、魂の死との近さを物語っているように思いました。大人が思うよりずっと死に近いところに彼らはいます。
大人にもっと気づいてほしい…

『心理学をつくった実験30』(大芦治)

教育心理学について勉強中なのですが、たまたま子どもが持っていたので借りて読みました。ミルグラムの服従実験やハーロウのサルで行った愛着実験など有名な実験が載っています。
心理学初心者の私にはどれも簡潔にまとまっていてわかりやすかった。
認知の歪みの仕組みなどが示されていて面白いです。
ミルグラムの服従実験は、いかにして人が残酷になれるかを証明していて人の恐ろしさがわかりますよ〜。

『 何故エリーズは語らなかったのか』(森博嗣)読了。

このシリーズの人間観察眼が大好きです。

まず、"戸籍"ではなく"個籍"というものがある世界、近未来が舞台とはいえさすがだなと。

それから、"人の妬みというのは、綺麗に取り除くことができない。"
この描写もいいなと思いました。

2作続けて森博嗣を読みましたが、自分が思うようには本心や事実や自分の存在を隠すことはできないという点が共通していたような気がします。

今、教育と発達について勉強中で、そういった観点から嫉妬心の育つ背景について興味があるので余計に楽しめました。

大人になって他人と比べる価値観から抜け出すのは至難の技ですね…

『情景の殺人者』(森博嗣)読了。

シリーズ3作目。このシリーズは現代社会の問題を物語に乗せてくれていて読みやすいのです。今回もそこここに散りばめられていました。

個人的に一番刺さったのは
SNSのの発信に真実はどれだけ含まれているのか?
誰もが発信者になれるし、いくらでも情報を探せる時代のパラドクス。

肝心な所がぼやかされていたりトリミングされていたり、美化して誇張されていたり。でもよく読めばそんな箇所もわかってしまったり。
意外と本音や真実は隠しきれないものですね。

『地図と拳』(小川哲)

購入したのは昨夏なのですが…やっと読む時間が出来ました。

舞台は義和団事件あたりから戦後の満州で、始まる前から終わりが見えている人がどう行動するのか、普通の人々と何が違うのか、とても興味深かったです。日帝の酷さには目を覆いたくなりましたが。

『ゲームの王国』にも通じる強烈な個性の登場人物たち、日本人、中国人、ロシア人、それぞれにとても引きつけられました。未来が見えてしまう人々が普通の人から理解されず煙たがられるのは、いつの時代も変わらないのかもしれません。

今も沈みゆく日本に警鐘を鳴らしてくれている人々を思い浮かべながら。

『つめたいよるに』(江國香織)

国語の読解授業でこの短篇集に収録されている『鬼ばばあ』と『子供たちの晩餐』を扱ったのをきっかけに手にしました。どの作品もとても短いけれど必ず私の心の琴線に触れる感じで…人生のそれぞれタイミングの孤独や淋しさが束ねられていました。

江國さんは私より一回りくらい上で、中学生だった私たち世代が憧れたバブル時代の若い大人の人だったと思うけれど、(私たちにはその憧れた大人時代は来なかったのだけど)だからなのかな、孤独が際立つ時代背景も印象的でした。でも、老齢期の孤独と動物の人への眼差しはファンタジーと温かさに包まれています。

私たちは大きな時間の流れの中で、ほんの一瞬のこの世に生まれて、誰にも言えない経験を胸に元のところに戻るのだろうな、と感じる作品でした。

『赤い砂』伊岡瞬

久しぶりにすっきりしたミステリーを読んだ気がします。
警察ものだけど爽やかで。
真っ直ぐな主人公いいですよね。
同じ主人公で続編あったらいいのにな。

『同調圧力-デモクラシーの社会心理学』キャス・サンスティーン

読み終えたのはひと月前です😅
ご無沙汰してました。

アメリカでの調査ですが、集団極性化やカスケードの起こる条件、法の表出機能など、とてもとても!興味深かったです。日本語(訳)が少し難しかったですが。

個人的には"高等教育における多様性とアファーマティブ・アクション"のまとめがとても良かったです。日本でも理系大学で女子枠設置というアファーマティブ・アクションの流れがあり、これも賛否あります。私自身、賛同したいものの腑に落ちない面もありました。そんなモヤモヤを解消してくれた気がします。

それから、集団に同調する人は自己利益を求め、異論を唱える人は自分の不利益も辞さない、という調査結果になんだかほっとしたのでした。

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』ブレイディみかこ

話題になった作品をやっとやっと読みました。噂通り良い作品でした。
イギリスの抱える様々な問題を思春期の子の目を通して見せてくれますが、どれも日本で今起きていることと共通しています。

語彙の幅が広く綺麗な言葉選び、だけど今風、という素敵な文章なので
主人公と同世代の中高生に読んでもらえたらいいなと。細々やっている教室の中学生向け季節講習で紹介しようかなと思います。

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