『 何故エリーズは語らなかったのか』(森博嗣)読了。

このシリーズの人間観察眼が大好きです。

まず、"戸籍"ではなく"個籍"というものがある世界、近未来が舞台とはいえさすがだなと。

それから、"人の妬みというのは、綺麗に取り除くことができない。"
この描写もいいなと思いました。

2作続けて森博嗣を読みましたが、自分が思うようには本心や事実や自分の存在を隠すことはできないという点が共通していたような気がします。

今、教育と発達について勉強中で、そういった観点から嫉妬心の育つ背景について興味があるので余計に楽しめました。

大人になって他人と比べる価値観から抜け出すのは至難の技ですね…

『情景の殺人者』(森博嗣)読了。

シリーズ3作目。このシリーズは現代社会の問題を物語に乗せてくれていて読みやすいのです。今回もそこここに散りばめられていました。

個人的に一番刺さったのは
SNSのの発信に真実はどれだけ含まれているのか?
誰もが発信者になれるし、いくらでも情報を探せる時代のパラドクス。

肝心な所がぼやかされていたりトリミングされていたり、美化して誇張されていたり。でもよく読めばそんな箇所もわかってしまったり。
意外と本音や真実は隠しきれないものですね。

『地図と拳』(小川哲)

購入したのは昨夏なのですが…やっと読む時間が出来ました。

舞台は義和団事件あたりから戦後の満州で、始まる前から終わりが見えている人がどう行動するのか、普通の人々と何が違うのか、とても興味深かったです。日帝の酷さには目を覆いたくなりましたが。

『ゲームの王国』にも通じる強烈な個性の登場人物たち、日本人、中国人、ロシア人、それぞれにとても引きつけられました。未来が見えてしまう人々が普通の人から理解されず煙たがられるのは、いつの時代も変わらないのかもしれません。

今も沈みゆく日本に警鐘を鳴らしてくれている人々を思い浮かべながら。

『つめたいよるに』(江國香織)

国語の読解授業でこの短篇集に収録されている『鬼ばばあ』と『子供たちの晩餐』を扱ったのをきっかけに手にしました。どの作品もとても短いけれど必ず私の心の琴線に触れる感じで…人生のそれぞれタイミングの孤独や淋しさが束ねられていました。

江國さんは私より一回りくらい上で、中学生だった私たち世代が憧れたバブル時代の若い大人の人だったと思うけれど、(私たちにはその憧れた大人時代は来なかったのだけど)だからなのかな、孤独が際立つ時代背景も印象的でした。でも、老齢期の孤独と動物の人への眼差しはファンタジーと温かさに包まれています。

私たちは大きな時間の流れの中で、ほんの一瞬のこの世に生まれて、誰にも言えない経験を胸に元のところに戻るのだろうな、と感じる作品でした。

『赤い砂』伊岡瞬

久しぶりにすっきりしたミステリーを読んだ気がします。
警察ものだけど爽やかで。
真っ直ぐな主人公いいですよね。
同じ主人公で続編あったらいいのにな。

『同調圧力-デモクラシーの社会心理学』キャス・サンスティーン

読み終えたのはひと月前です😅
ご無沙汰してました。

アメリカでの調査ですが、集団極性化やカスケードの起こる条件、法の表出機能など、とてもとても!興味深かったです。日本語(訳)が少し難しかったですが。

個人的には"高等教育における多様性とアファーマティブ・アクション"のまとめがとても良かったです。日本でも理系大学で女子枠設置というアファーマティブ・アクションの流れがあり、これも賛否あります。私自身、賛同したいものの腑に落ちない面もありました。そんなモヤモヤを解消してくれた気がします。

それから、集団に同調する人は自己利益を求め、異論を唱える人は自分の不利益も辞さない、という調査結果になんだかほっとしたのでした。

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』ブレイディみかこ

話題になった作品をやっとやっと読みました。噂通り良い作品でした。
イギリスの抱える様々な問題を思春期の子の目を通して見せてくれますが、どれも日本で今起きていることと共通しています。

語彙の幅が広く綺麗な言葉選び、だけど今風、という素敵な文章なので
主人公と同世代の中高生に読んでもらえたらいいなと。細々やっている教室の中学生向け季節講習で紹介しようかなと思います。

『超新星起元』(劉慈欣)
この作品も劉慈欣作品に通底する全ての子の未来を想う大人、教師の描かれていました。

世界が激変した時、自分の持てるものを子どもたちに伝える方法を考えるか、失われたものを嘆くか。自分の不安や嘆きを抑え子どもの前では晴やかな表情と未来への展望を見せることができる、それが感情のコントロールができる大人だと。

ただし、未来は決して大人たちの願った通り、予想した通りにはならない…ですよね。未来は子どもたち、未来の世代にしか創ることができないですもんね。

本棚を一つ増やしました。
猫さん、本棚の入っていた空きダンボールを気に入ってしまう。

保護した時はすぐに空に行ってしまうかもと思っていましたが、なんだかんだ2ヶ月経ちました。

猫姐さん、家に招待しました。
ノミ駆除ほぼ完了しました。
ほとんど寝てます。
先住犬とはまだまだ微妙な距離感ですね。
歯がほとんどないので液状おやつとふやかしフードで様子見しています。
のんびり過ごしてくれるといいな。

『みんなが手話で話した島』
ノーラ・エレン・グロース

遺伝的に聾唖の人が多い島の話です。聾唖でない人も島民みんなが自然に手話を身につけた事で島全体が円滑に回っていた実話。聾唖であったかどうかが個人の特徴として印象に残らない社会のあり方を見ると、障害は困難の無い方の集団が作っている壁だなと改めて感じました。

今の日本だと、なぜ少数派のために私たちが学ばないといけないの?という空気なので壁を減らしていくのは難しいですね。

帯を見て本を手に取ることはほとんどありませんが、この本は帯に円城塔さんのお名前があってつい、でした。

『ヒロシマ・ノート』(大江健三郎)

大江さんが亡くなられて増版が決まり、すぐに予約しました。広島G7サミットの前に読みたいと思って。

この作品が書かれた時、大江さんは30歳くらいだと思うのですが、
"真に広島的な人々"
の威厳に圧倒されている様子がわかります。

John Hersy の『HIROSHIMA 』
にも通じるものがありました。事実は大変重いです。でも私たち大人は出来る限り知ろうとし、子ども達に伝えていかなくてはと思いました。

憲法改正や防衛増税を言う為政者の厚顔無恥さに、以前にも増して怒りがこみ上げてきます…。

『君が見たのは誰の夢?』(森博嗣)

WWシリーズの新作、読了です。
たまたま先日読み終えた『復活の日』(小松左京)と同じく、ウィルスと人類の存亡(子孫を残す)がテーマになっていますが、全く違ったアプローチでした。書かれた時代の違いでしょうか。

もう一つ、集団の意思のようなものについて、両作品とも触れていて、比べて考えるのが楽しかったです。

科学は人がより長く生きられるように発展してきたけれど、その結果、今どうなっていますか?
この先、人類はどんな姿で存在することになるのか、読後あれこれ考えています。

『復活の日』(小松左京)

コロナパンデミックが始まった頃に読みたいなと思い、やっと今頃読み終えました。

60年近く前に書かれた作品ですが、この3年を実況しているのでは…と思わせるような描写に背筋がゾクっとしました。大衆の反応など、まさに。

"たかが"風邪でしょ
"たかが"インフルエンザ

この3年で良く目にしました。
未知の脅威を前にした時の世間の反応は、作品に描かれている通りでした。

いつかのSF作家会議でケン・リュウさんが、未知のウィルスを前に人類は一致団結しなければならないのに残念なことに排除や分断にエネルギーを使っている、というようなことを話されていたのを思い出しました。

学者の良心の描かれ方も印象的で。
人の知性を諦めず真実を伝えようとする学者さん、現実にもいらっしゃるな…と思いながら読みました。

昨年末、実家からもらってきたツルコザクラの種、適当に撒いたら少しだけ綺麗に咲いてくれました。

後ろにあるのはルッコラ。もうすぐ種が獲れます。

我が家の近所の桜、雨続きでほとんど散ってしまいました。

『哲学のなぐさめ』(ボエティウス 松崎一平 訳)

寝る前に少しずつ読んでいます。
小説とは違って、歌(詩)と散文がセットになって交互に出て来るのと、哲学との対話なのもあって、聖書のような感じがします。1日終わりに少しずつ読むのにちょうど良いです。読みながら寝落ちしてしまうことも笑
(私には難しいことも多いので咀嚼に時間がかかることもあります…。)

色々考えてしまう、でもあまり変な考えになりたくない、そんな時期なので助けられています。

読み終わるのに時間がかかりそう。でも、読み終わっても折りに触れ本棚から出してくる感じになりそうです。

ブルース・リウさんのリサイタルに行ってきました。

ショパンコンクール2021の3次予選で演奏された≪ドン・ジョバンニ≫からのバリエーション、本当素晴らしくて生演奏を聴きたいとずっと思っていて、昨日願いが叶いました。

技術がすごいのは言うまでもありませんが、弱音がとても綺麗でうっとり。

アンコールも5曲も弾いてくださって。個人的には
バッハのフランス組曲と
ショパンの3つのエコセーズ
が特に良かったです。

アンコールの最後の
リストの ラ・カンパネラ
は日本人向けサービスかな。

これから行かれる方も楽しんでくださいね。

5月に『劇場版PSYCHO-PASS サイコパス PROVIDENCE』が来ると知り、サイコパス3の復習中です。

シリーズ始めから、常守朱と宜野座伸元がお気に入りです。PSYCHO-PASS シリーズは魅力的なキャラクターが多すぎますね。小畑ちゃんも好きです。

-PASS

psycho-pass.com/

『ユートロニカのこちら側』(小川哲)

読了です。多くの人びとが望むのは、安全で、責任の伴わない自由を満喫することができる世界。この世界に疑問を抱くものは排除されても仕方がない?

"自由の解釈をめぐる戦いだ"

作品中の印象的な言葉です。
そもそもの言葉の解釈の違いから、相手と話が噛み合わず途方に暮れること、ありますね…。

このところ、よく考えて発言している人ほど非難や中傷の的にされることが多く、言葉が機能不全を起こしているように感じていたので、ヒントをもらえました。

そしてやっぱり、小川さんの文章好きです。(読むたびに言ってます)

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