📽TAAF2024の第1弾チケット発売開始!
不思凡監督の「ストーム(原題:大雨)」は3月8日(金)夕方回と3月9日(土)午後回の上映です。楽しみだ〜
https://animefestival.jp/screen/list/2024feature3/
元ネタの「デデ・コルクトの書」もかなり気になってきた。「吟遊詩人デデ・コルクトが狂言回しとなって」とか「口承伝承が凝縮された稀有の書」とか、私のアンテナがぎゅるぎゅる反応する宣伝文だ…
https://www.heibonsha.co.jp/book/b161772.html
📚積読書:カマル・アブドゥッラ『欠落ある写本:デデ・コルクトの失われた書』(水声社)
タイムラインをどんぶらこと流れて来たのを見つけた。メインタイトルと、「デデ・コルクトの書」って確か東洋文庫に入ってなかったっけ題名だけは聞いた覚えがあるというのと、アゼルバイジャンの小説家というのに興味を惹かれて、帯のアオリに文字通りあおられて買った。オルハン・パムク(『わたしの名は紅』の)、イスマイル・カダレ(『誰がドルンチナを連れ戻したか』『夢宮殿』の)、ミロラド・パヴィチ、ウンベルト・エーコなどの名前を思い浮かべ、期待を高めている。いつ読むかはわからないが、自分の勘が当たっているといいな。
続き。「天灯」の構造のネタバレをするので一応伏せ。
成功しているかは別として、「天灯」の設計図はこんな感じで考えていました。中秋の夜の思い出話をBにするAの語りと、その後のどこかの時点で、Aの語りを踏まえつつ中秋の夜の出来事をモチーフにした食籠の図柄を第三者に語るBの語りが交互に来る構造で、Aの語りだけ読んでも、Bの語りだけ読んでも、ABを順に読んで行ってもそれぞれで話が通じるようになっている筈…!です。Aが呂颯でBが鄭和さん。
何でそういうややこしい構造にしたかと言うと、一つは呂颯が極めてプライベートな打ち明け話を始めてしまったので、その聞き手が必要になったこと、その際にアウティングみたいなことにはしたくないなと思ったこと。もう一つには、呂颯の語りを契機として鄭和さんが一人称の語りを獲得していく、みたいな話にしたかったから。現存する鄭和さん関係の碑文をはじめとする文章、とにかく個性が全然感じられなくて非常に歯痒い思いをしていたので、「いつも三人称ですかしてないで、たまには一人称で語ってみろよ」と。なので食籠の説明で三人称で語っているあたりも一応鄭和さんの語りのつもりです。成功しているかは別として…(正直、あまり自信はない…)
(今日はここまで!)
続き。
・ちなみに、馬歓と同様に鄭和に随行した費信の『星槎勝覧』のモルディブ章にはタカラガイの記述はない。馬歓くんによると「モルディブは小さい国で、宝船も1、2隻しか行かなかった」そうなので、実際には鄭和さんモルディブには行ってないかもしれない。馬歓はひょっとすると自身が行ったのかもしれないし、何だったら鄭和からタカラガイの話を聞いていたので特に書き留めたぐらい想像を逞しくしてもよかろうと思う。
なお、「タカラガイ 腐らせる」でぐぐって見つけて参考になった記事はこちら。殻を残すか身を味わうか、根源的な問題だ…
https://dailyportalz.jp/kiji/takara-gai-sagashi
・ついでに脱線すると、費信の報告は割とちゃんと報告報告していてあんまり「あれが可愛い、これが美味しい」を熱弁することはないのだが、馬歓が詳述している上に費信も珍しく言及している数少ない物産がドリアンです。多分、鄭和艦隊の上層部みんなで食べて、美味しいと評価が一致したのだと思う。
(まだ続く)
✏️創作の余談雑談:
ちょっと疲れて来たので「天灯」の鄭和さん関係のネタ語りをします。
・子供の頃の鄭和さんがタカラガイで買い物した話は、上田信先生の『シナ海域蜃気楼王国の興亡』で「少年時代の鄭和もそうしてたかも」と書いていたのを全面採用。なお、鄭和自身も建立に関わった鄭和の父を顕彰する石碑で、父の子は男二人、女四人とあり、鄭和さんには文銘という兄がいるまではわかっているけど、女きょうだいが妹かはわかりません。そこは私の好みを優先させました。末っ子で可愛がられ慣れている鄭和さんの図も、それはそれでアリだが…
・鄭和さんにお小遣いくれたの、最初はお母さんにしていたのですが、最終的に祖父にしたのは、鄭和さんの祖父と父はハッジの称号を持っているので、メッカに巡礼したことがあるらしいから。「この貝は南の海からはるばるもたらされたのだよ」とか旅の話と一緒にしてくれる。
・タカラガイを浜に積んで腐らせる話、ここで読んだと思った本に載っていなくて焦りまくったが、ふと思いついて馬歓の『瀛涯勝覧』を見たら、モルディブの章に言及があったのでそれを根拠にしました。サンキュー。馬歓くんの観察眼にはいつも助けられている。
(続)
✏️創作の余談雑談:
「天灯」の参考に読んでいた呉存存『中国近世の性愛』に、馮夢龍の「情史」には同性愛者を扱った章もあると紹介されたので、「ひょっとすると、同じく馮夢龍が編んだ、「男女の恋愛を大胆に歌った民謡アンソロジー」という触れ込みの「山歌」にもあるのでは?」と読み返してみたら、数首並んでいるのを見つけた! 元祖馮夢龍推しの大木康先生は、同性愛については積極的にマーカー引いてくれる訳ではないので、自分の目が節穴だと見逃してしまう。
ということで、「三十年経った古米はただのカスだし、三十年経った家具は役立たずだし、三十年経った尻でどうしてやれるだろう」というしょーもない歌と、「この歌を「三十歳になって味わいが完全になった」と言っていたやつが聞いたら「尻を馬鹿にするものだ」と言っただろう」という馮夢龍のしょーもないコメントを味わいつつ、この良さをどうやって語ろうかと考えているうちに一日が終わってしまった。しょーもないけど、こんな短いのに、若くない同性愛者(特に受)への世間の侮蔑と、冗談まじりながらそれへ反論するコメントで多角的に状況を描いて一瞬で構造を見せるキレキレぶりは健在だと思うし、「天灯」書いた後で読んだけど答え合わせ的なことができて良かった。
(出典は大木康『馮夢龍『山歌』の研究』p568)
📙「三宝太監西洋記」、読んだ人みんなに「つまらん」とか「文章が下手すぎる」とかボロクソ言われていて、実際「西遊記」はじめ諸々を臆面もなくパクったりしてはいるので、パクってもアレンジ効かせているだけで「すごいやる気に満ちている!」と感動するし、他の小説に文章コピペされてる旨の論文を読むと「お兄ちゃんになったな…!」と嬉しくなってしまう。
なお、文章は下手というより、「Aが言うとBがこう答えるのでAはこう言い、…」的な全然彫琢してないシンプルな文章を繰り返すことが多いので(人によってはそれを「下手」と言う訳だけど)、中国語初心者の私でも頻出する動詞とテンプレ言い回しを覚えれば何となく筋が追えてしまうメリットもある。美辞麗句ギンギンの文章だったら絶対に読めなかった。
(続き)
と言うことで、黄鳳仙は鄭和を南監から解放し、三人のところへ連れて来る。「お前たち三人揃ってどうして捕まったのだ」と尋ねる鄭和に一人(仲人になると言った人。張狼牙と言う厨二っぽい名前)が、王蓮英の術に敗れたこと、唐状元と結婚できるなら黄鳳仙が術を破ると言っていることなどを説明する。すると鄭和はあっさり「何のデメリットもないのだから結婚しなさい。私が式を取り仕切ろう」と言うので、二人は結納を交わし、密かに黄鳳仙の私邸に赴いて一夜を過ごす。翌日、唐状元が監獄に戻ると、王蓮英が鄭和と三武将を共々火炙りにすると命じた話が伝わって一同詰みかけるが、唐状元が策を講じて、王蓮英に「明人は死を恐れないが、馬や武具をともに焼かないと祟って出るらしい」と伝えるよう黄鳳仙に頼む。と言うところで第47回終わり。
最初読んだ時はあんまり意味が取れなかったけど、もう一度読み返したらわかって来たので、あまり省略なく意訳してみた。唐状元が悩む件、「楊家将演義」の宗保さんエピ踏まえてそう(というかパクってそう)だが、こうして見るとキャラも展開もそれなりにアレンジが効いていて、当初の印象ほど丸パクリではなかった。あと女性陣のアタック戦略と男性陣の反応もそれぞれ書き分けられていて、この辺は、まあそこそこ面白いのでは?(今回は以上)
📙「三宝太監西洋記」読書メモ:
女人国の監獄に捕らえられていた鄭和の部下三人は鄭和の行方について話し合うが、黄鳳仙が来たので口をつぐむ。しかし黄鳳仙が彼らに茶を捧げるので唐状元が驚いて「王蓮英のところから助けてくれた上にお茶まで」と言うと、黄鳳仙は「彼女は最初あなたを好いていたが話し合いがうまくいかなかったので怒ったのだ。男は妻が欲しいし、女は夫が欲しいから」と解き明かす。ひとりが「あんたも夫が欲しいのか」と尋ねると黄鳳仙は「仲人もいないのに結婚なんて」と言うが、相手が「自分が仲人になると言ったら?」と重ねると「釣り合いが取れた相手なら」。そこで相手が「唐状元ならあんたにお似合いだろう」と水を向けたところ、黄鳳仙は「唐状元が私を夷狄の女と蔑むのでは」と返す。実は文武両道で智略に優れた黄鳳仙も密かに唐状元の風采に惚れて、彼と結婚するべく一計を講じたのでした――と言うことで、下を向いて無言の唐状元に「私と結婚するなら王蓮英の術法を破ってやる」と言うので、唐状元は「言いなりになって夷狄の女と私通する罪か、どうしたものか」と悩んだ挙句、「鄭元帥をここにお連れしてくれれば言う通りにする」と答えましたとさ。(続く)
【今回のお話】
さて、女人国の将軍の王蓮英が攻めて来るので船団側も武将が迎え撃つが、二人が相次いで負けて捕まってしまう。王蓮英は捕らえた二人を見て「明の男はイケメンの筈なのにこの連中はブサイクだわ」と内心不満。ところが三人目の唐状元(文官ではなく武状元)が眉目秀麗ないい男なので、王蓮英は「私はこのいい男な状元と絶対に結婚してみせる!」と彼を破って捕らえると手元に置いて縷々口説くが、唐状元が「このろくでなしめ」と取り付く島もなく怒鳴るので恥じて怒り、彼を幽閉する。そこへ王蓮英が唐状元を手元に置いていることを知った女王から派遣された武将の黄鳳仙が現れ、彼を女王の監獄に連れ去る。
唐状元は同じ監獄に先に捕まった二人の武将がいるのを見て、「鄭元帥はどこにおられるか」と尋ねると相手は「南監というところにおられるらしい」と答える――
ようやく鄭和さんの行方がわかった!ので、今回はここまで。
📙「三宝太監西洋記」読書メモ:
久しぶりに読んだので、途中経過をだいぶ忘れています。
【これまでのあらすじ】
女人国の女王は鄭和が宦官で陽根が無いことを知ると激怒し、彼を牢屋にぶち込んでしまう。一方、船団では鄭和が一向に帰って来ないので偵察の部隊を出すが、飲むと妊娠する川の水を飲んだため皆懐妊して腹痛で使い物にならなくなる。(西遊記あたりで聞いた話だな)そこで宦官一人武将二人の三人組が薬となる泉の水を守る仙女のところへ派遣される。三人はそれぞれ仙女といちゃいちゃするが、宦官は「自分には無いけどあいつらは凄いぜ」みたいなことを言って、(この辺よく判らないけど仙女たちを仲違いさせて?)無事泉の水を手に入れる。(だいぶうろ覚え)
🎞去年見逃し映画チャレンジ第3弾「窓ぎわのトットちゃん」をようやく見て来ました。
冒頭の提灯行列の掴みでぐっと引き込まれ(まだ太平洋戦争は始まっていないので、中国戦線の勝利とか?)、後は言葉では全く説明しなくても場面の経過で全てわかるように描いている演出と観客への信頼がすばらしかった。
あと、今風の価値観や観客の共感を得るような改変を加えず、見ていて思わずどん引くような、当時としては相当に上澄みの、文化資本の高い「いいお家のお嬢さん」の目に映る世界をひたすら再構成する覚悟も特筆すべきかも。そしてそれを可能にするために、スタッフロールの「ポリオの会」はじめとする協力者とともに考証もしっかりやっているらしいのも。あの「豊かさ」(実際に金銭的に裕福かは別として)の描写があるから、素晴らしいトモエ学園に通える特権性が際立ち、観客の居心地の悪さ(そうではない人たちが沢山いるのだろうという気づき)を引き出せていたと思う。
とにかく良かったし、良い作品を浴びると元気になるので、だいぶ元気になりました。良かったです。
映画「トム・オブ・フィンランド」、多分制作も配給も観客も青少年にこそ見て欲しいと思っているのにR18指定になった経緯は、今読める記事だとこのあたりがまとまっているかしらん。当初は、2箇所にごくちょろっと性器が写ってるだけでR18ですらなく「区分対象外」(=映倫は知らぬ存ぜぬ扱いなので一般の映画館では実質上映不可)の通知をされていたとか、ほんとどこが「表現の自由」の国なのかという感じ。記事中で映倫の人が配給の人に言う「あなた方が問題提起して世論を変えてくれ」という発言、中国の検閲官のロジックと同じだし。(彼らも「我々は別に検閲したくないが世論が許さないので」が建前らしいので)
>これが18歳は見ちゃダメ?成人映画に区分された映画『トム・オブ・フィンランド』について考える(水上賢治)
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/8c8bed07e6cc9ecf78e0ecf36fba1829d3274f43
こないだ書いていた二次創作、書いているうちにドメ・カルコスキ監督の「トム・オブ・フィンランド」を思い出して、描き終わったら見直そうと楽しみにしていたのに配信が無くてくずおれている。同性愛が犯罪だった時代からゲイアートを描き続けたフィンランド人のイラストレーター、トム・オブ・フィンランド(本名トウコ・ラクソネン)の伝記映画。端正で地味で、燻んだ色合いと寒そうな風景が美しく、しょぼくれた感じのおっさんが限りなく魅力的な、良い北欧映画なのです。全般に抑制されていて、性愛描写も全然大したことないのに、何故かR18なのだけど。
https://www.magichour.co.jp/tomoffinland/
中国本土ではこの1月12日に公開の不思凡監督作「大雨」の主題歌。どう見てもちびっ子のパパ無事でない…
東京アニメアワードフェスティバル2024の長編部門にノミネートされているので、3月には池袋のどこかで見られる筈。
https://weibo.com/7751245549/4986761275510501
🎞️「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」と「首」を見ました。
★ゲ謎(褒めてないです)
きわめてロジカルな映画だな(観客の不穏感を煽るウェットな演出含め)とは思ったものの、映画としての絵力が私には全く感じられず、ちょっと期待外れだった。戦前の帝国主義や戦争との連続性を描いているという感想を読んでいたけど、作中ではかなりの部分セリフで説明されてしまうので、そこを!演出で描け!と思ってしまった。加えて、村の中では加害者も被害者も既に「人間」ではなくなっているので全滅上等みたいな、心というか魂のない作りも受け付けられなかった。多分「人間」のままだと残酷すぎるというエンタメ的配慮とは思うのだが、今、イスラエルがガザでやってることを考える時、ゲ謎のそういう処理に私は同意したくないと思った。
★首
見ている間は「今でもホモソな職場で日常的にやってるようなクソな足舐め競争(一時期そういう職場に居てクソほど見た)をえんえん見せられましても」と最悪な気分で時計を見ていたが、見終わったら結構爽快な気分なので、良い映画だったのだと思う。同性愛描写は思ってたのよりはだいぶ控えめだったけど、ドライでテンポの良い残酷描写は性に合うので、そこは楽しく見られたし、スタッフロールに「造園」とか出るような大作邦画としてその両方をやったのは成果では。
マキノヤヨイです。創作集団こるびたるの中のひと(もしくは外のひと)。ここは、主に創作活動のゼミ発表的な使われ方をしている場です。