『オランダ語四週間』
朝倉純孝著 大学書林 1971年12月発行
江戸時代を舞台にした小説を読んでいて蘭学が出てくると無性にオランダ語を学びたくなる。そしていつもすぐに挫折するのだけど、その際に手に取るのがこれ。昭和の中頃に発行された、見るからに古い様式の学習書であるがゆえ、かえって蘭学っぽい雰囲気に浸ることができる。江戸時代当時の本はさすがに古すぎて読めないし(でも国立国会図書館デジタルコレクションでアクセスできるのはつくづく良い時代だと思う)。4週間のカリキュラムで初級レベルを網羅し、最後の3日間は文学作品の訳読(対訳で100ページもある)というハードな学習書。白水社がエクスプレスシリーズを出すまでは、マイナー言語の学習書はこの四週間シリーズが定番だった。
『宇宙船が遭難したけど、目の前に地球型惑星があったから、今までの人生を捨ててイージーに生きたい』
水野藍雷著、KADOKAWA 2023年5月発行
なろう系らしい長タイトル。そしてタイトルどおりの序盤。中世レベルの文明と魔法と魔物が支配する辺境のファンタジー惑星が舞台。1巻ではまだ3人しか登場人物が出てこなかったんだな、と久々に読み返してみて思った。書籍化が決まる前から読んでいて、書籍は2巻まで出ているけど、作者都合で休止中。いつか再開されると嬉しい。ちなみに1巻には全体の1割も収録していないので、序盤もいいところである。
https://kakuyomu.jp/works/16816927861077048441
『ロビンソン・クルーソー』
ダニエル・デフォー著、唐戸信嘉訳、光文社古典新訳文庫 2018年8月発行
言わずとしれた名作。なんだけど子どもの頃に(おそらくダイジェスト版を)読んで以来なので、ぼんやりとしか覚えてない。遭難し、ただ一人孤島に辿り着きサバイバルする。典型的な「行きて帰りし物語」。島での暮らしは28年に及ぶ。どんな失敗をしたか、なぜそのような失敗をしたかが丁寧に語られているのが興味深いし物語にリアリティを与えている。にしても、当時のヨーロッパ人の無邪気な残酷さというか、野生のヤギを捕まえて閉じ込め1週間放置していたら餌がなくて死にかけていた、みたいなエピソードがたくさん。子ども向きの本ではどうなってるんだろうね……。
『図説 科学史入門』
橋本毅彦著、ちくま新書 2016年11月発行
7つの科学分野における歴史を、当時の図版を解説しながら概観する本。これ1冊でひととおり見わたせるのは良いのだけど、いかんせん図が少なく、やや中途半端な印象を受けた。新書1冊に盛りこもうとすると、このあたりが限界なのかも。それはともかく、科学史をひもとくと、ごく最近(ほんの100~数百年前)まで、現代ではあたりまえの知識や概念が存在しなかったことに驚く。科学者ですら100年ちょっと前だと原子の存在を信じないとか。これだけ急激に知の体系が変化し、直観とはまるで異なる事実が積み重なると、科学と相容れない人が一定数出てしまうのも仕方ないのかも、と思ってしまう。
読書が捗らない本好き。フリーランスと無職の狭間。オカメインコとセキセイインコのお世話係。好きなもの:本、web小説、生成AI
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