『グイン・サーガ 9 紅蓮の島』
栗本薫著、ハヤカワ文庫 1981年12月発行
表紙はモンゴールのミアイル公子。天使のように無垢で優しく、義兄と慕うパロ公子の謀略で殺されなければならなかった子。その刺客に使われ、それゆえに母国パロからの離反を決意するマリウス。そのマリウスに関わる、この後も度々登場することになる宿屋兼居酒屋の《煙とパイプ》亭。この店はパイ皮をかぶせて焼いた壺入りの羊のシチューが絶品なんですよね。パイ皮を熱々の壺入りシチューにかき落としたのをフウフウ吹いて食べるの。トーラス名物。美味しそうな食べ物に事欠かないグインサーガの中でも屈指の人気料理。グインサーガの魅力の一つは、王侯貴族や将軍や大魔道士など世界を動かす人びとだけではなく、下々の庶民の生活や文化風俗も丁寧に描いているところだと思う。
『小説を書く人のAI活用術』
山川健一・今井昭彦・葦沢かもめ著、インプレス 2024年10月発行
生成AIに小説を書かせるとなぜかつまらない、毒にも薬にもならない文章が出力される。コツを掴めればそんなこともないんだけど、どうやって小説を書かせたらいいか、小説作成のアシストにどう使えばいいか、本書に掲載された具体的な例が参考になると思う。文系人間の多くは具体例の多くから帰納的に学びやすい傾向があるので、興味のある初心者にはこういう本は参考になると思う。
で、この本、先月発売されたところなのに、なぜか読んだことがある? よく見たら、Kindleで公開されていた『ChatGPTで小説を書く魔法のレシピ』の加筆修正版だそうな。そっちで読みづらかった部分も改善されていけど、多くの部分は最新情報へのアップデートなので、Kindle本を持ってれば改めて買わなくてもよさそう。
『iPadショック』
林信行著、日経BP社 2010年6月発行
初代iPadが日本で発売されたのは2010年5月。当時の日記を見ると5月10日に予約し5月28日に受けとったようだ。日本でのiPad発売とほぼ同時に出たこの本は、iPadが世界に与えるであろう影響を数多く取り上げている。著者はアメリカで先行販売されたiPadを使い込み、多くの人にも使わせた上で、iPadがどのように使われていくか、様々なシーンを想像する。そこから15年近く経ってみると、やはりiPodやiPhoneほどのインパクトはなかったように思う。当時予測できていなかったのは、スマホが大型化してタブレットPCのニーズを多く取り込んでしまったことだろうな。当時のiPhoneは画面が小っちゃかったものね。
『すでに起こった未来』
P.F.ドラッカー著、上田敦夫他訳、ダイヤモンド社 1994年11月発行
未来予想はできない。しかし社会や経済における出来事とそれがもたらす変化にはタイムラグが生じる。少子化が進むと学校の入学者数が変化し、その十数年後には労働力人口にも波及するように。ドラッカーはそういった変化を「すでに起こった未来」と呼んだ。
"重要なことは「すでに起こった未来」を確認することである。すでに起こってしまい、もはやあとに戻ることのない変化、しかも重大な影響力をもつことになる変化でありながら、まだ一般には認識されていない変化を知覚し、かつ分析することである。"
40年以上にわたって書かれた論文集。
『社会言語学入門 改訂版』
東照二著、研究者 2009年10月発行
本書を目にするまで「社会言語学」という分野があることすら知らなかった。夕方ブックオフに立ち寄ったとき、ふと棚を見るとこの本が「買って!買って!」と呼んでいたのだ。経験上、そういう本は現在もしくは近未来の自分が必要とする確率が極めて高い。
で、社会言語学は、従来の主流言語学のように言葉を社会や文脈などの外的要因から切り離して言語を調べていくのではなく、言語が社会的な文脈でどのように使われ、変化し、影響を受けるかを分析していく。なぜ友達と話すときと上司と話すときで言葉遣いが変わるのか、なぜ地域によって言葉のアクセントや言い回しが異なるのかといった、言葉の多様性や変化を、社会的な視点から解き明かそうとするのが社会言語学、らしい。面白そう。
読書が捗らない本好き。フリーランスと無職の狭間。オカメインコとセキセイインコのお世話係。好きなもの:本、web小説、生成AI
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