ヴァレリー・ペラン『あなたを想う花』読了。フランスでベストセラーと聞いて、どんなものかと思って読んでみた。
各章が短く、場面が頻繁に切り替わる。いくつかの話が並行して進み、現在と過去が行ったり来たりするので、やや読みにくいが、同じ場面を2人目の視点から描いている箇所もいくつかあり、物語に奥行きを与えている。基本的には恋愛物だろうが、後半は犯人探しのミステリー仕立て。
割と波乱万丈のストーリーなのだが全体に気品のようなものが感じられるのは、登場人物の心情にあまり深入りしていないからだろうか。たとえば、主人公ヴィオレットが愛娘を失ったときでさえ、取り乱した描写はない。著者が映画の脚本家なのも関係しているかもしれない。
墓碑に記す言葉が各章の冒頭に掲げられている。第85章のは「千の風になって」の歌詞になったもの。
#名刺代わりの小説10選 (続き)
●R is for Rocket(Ray Bradbury)
宇宙へのあこがれ、宇宙飛行士に選ばれた喜び、家族や友人との別れをSF界の詩人がつづったリリカルな短編。大学生のときに読んだけど、冒頭部の英語のリズムが心地よすぎて暗記してしまった。
●Cat’s Cradle(Kurt Vonnegut)
世界の終わりとボコノン教。奇想天外なブラックユーモア。
●Never Let Me Go(Kazuo Ishiguro)
淡々とした語りで徐々に明かされる恐ろしい世界。切ない。Kindleで読んだけど、ペーパーバックも買った。
●Where the Crawdads Sing(Delia Owens)
美しい自然、人種差別、貧困問題、ヒロインの成長などなどをミステリーの形式を借りて見事に描いた傑作。
#名刺代わりの小説10選 というタグを見かけたので便乗。
たしかに読んだはずなのに細かい内容を思い出せないこともよくあるけど、読後感がいつまでも消えずに残る本がある。そんな本を集めた。
●モンテ・クリスト伯(アレクサンドル・デュマ・ペール)
●レ・ミゼラブル(ヴィクトル・ユゴー)
希代のストーリーテラーによるドキドキハラハラ、波乱万丈の物語。
●ドグラ・マグラ(夢野久作)
信頼できない語り手による摩訶不思議なストーリー。読めば読むほどわけがわからなくなる。
●スロウハイツの神様(辻村深月)
読み終わった途端に最初から読み返したくなる。辻村さんの小説を読んだのはこれが初めてだったけど、読み終わってから辻村さんはミステリー作家だと知って大いに納得した。
●疾走(重松清)
普段の作風とはまったく違う恐るべき作品。これ、本当に重松さんが書いたの?
●エディプスの恋人(筒井康隆)
『家族八景』『七瀬ふたたび』の続き。七瀬三部作の壮大すぎる締めくくり。
(続く)
#読書
恩田陸の『鈍色幻視行』と『夜果つるところ』を読んだ。
『鈍色幻視行』は、クルーズ船という密室の中で、いわくつきの小説『夜果つるところ』をめぐるさまざまな謎について語り合う人たちの話。いわくつきなのは、この小説を映像化しようとすると、必ずスタッフが不慮の死に見舞われてしまい、制作中止に追い込まれるからだ。
登場人物が多いのでメモを取りながら読んだけど、読みごたえたっぷり。人物描写がうまい。ミステリーなのか、ファンタジーなのか、よくわからないが、恩田陸の手練れを堪能できる一風変わった作品。高校生が歩行祭でひたすら歩き続ける『夜のピクニック』もそうだけど、場を限定した小説を書くのが得意みたいだね。
次に『夜果つるところ』を読む。飯合梓が書いたということになっているが、もちろん実際の作者は恩田陸。こちらは墜月荘という遊廓を舞台に繰り広げられる流血ありの荒々しい話。カバーを裏返すと、飯合梓版の表紙になる。
締めくくりの文が両作品間で共鳴しているので、読み比べてみて。
『鈍色〜』を先に読んだけど、『夜果つる〜』のネタバレがあるので『夜果つる〜』を先に読んだほうがいいかもしれない。
#読書
『世界でいちばん透きとおった物語』
たしかにすごかった。これは執筆が大変だったろうね。単に技巧に走るのではなく、物語としてきちんと成立しているのがいい。ネタバレ厳禁なので、これ以上は書かない。
歌を読み歌を詠まないエセ歌人
楽器練習 仏語学習
フルートに副専攻のバイオリン
音大生のニセモノ爆誕