ヴァレリー・ペラン『あなたを想う花』読了。フランスでベストセラーと聞いて、どんなものかと思って読んでみた。
各章が短く、場面が頻繁に切り替わる。いくつかの話が並行して進み、現在と過去が行ったり来たりするので、やや読みにくいが、同じ場面を2人目の視点から描いている箇所もいくつかあり、物語に奥行きを与えている。基本的には恋愛物だろうが、後半は犯人探しのミステリー仕立て。
割と波乱万丈のストーリーなのだが全体に気品のようなものが感じられるのは、登場人物の心情にあまり深入りしていないからだろうか。たとえば、主人公ヴィオレットが愛娘を失ったときでさえ、取り乱した描写はない。著者が映画の脚本家なのも関係しているかもしれない。
墓碑に記す言葉が各章の冒頭に掲げられている。第85章のは「千の風になって」の歌詞になったもの。