篠原健太『ウィッチウォッチ』がよくできてるマンガだなあと常々思っていた。先々週、とうとう全巻買った。シリアスと恋、ギャグの織り交ぜが巧みです。今風の80年代っぽいデザインを織り交ぜてくるのも絵柄として好み。作者、同世代なのですね。
週末、『彼方のアストラ』が篠原健太だということを今更ながら知った。読んだことはなかったが、昨年やったハードSF「十三機兵防衛圏」と物語設定が似ているという話題はキャッチしていた。絵柄があんましなあというのと、ジャンプコミックスでハードSF?とちょっとなめていたかもしれない。漫画家さんって作品ごとに絵柄をほんと変えてきますね。
而して5巻一気買い。一応少年誌世界のジャンプ+でよくこういう物語をやったな、と思う。なかなか読み応えはあった。滅亡した地球、クローン、記憶の改ざん、ミステリー…。「爽やかな成長譚」という味付けが少年誌的か。海外展開を狙っているのかな、だとしたら女性の描き方はちょっとな…とは思った。
https://www.amazon.co.jp/彼方のアストラ-1-ジャンプコミックスDIGITAL-篠原健太-ebook/dp/B01G1DV4VS/
インターステラー、火星の人、ゼロ・グラビティなど宇宙ものが好きな私としては結構満足できました。
文明本節用集という、室町時代の百科事典的な文献があり、日本語史を研究する人は何かとお世話になっていたりします。
国立国会図書館から『雑字類書』という名称で画像が公開されました(文明本節用集 WA16-21)。影印本は高くて入手できない割には、なぜか大学図書館で廃棄本として見ることも多く、研究室にも一冊ましましている。今回のは完全カラー、しかも錯簡が修正されたというからありがたい。
https://dl.ndl.go.jp/pid/1286982/1/4
ほんと色んな文献の画像がどんどん公開されて、ありがたいことこのうえない。
今後はTEIとかでマークアップされ、画像上の記述も検索できていくでしょう。それが研究者の作ったデータベースに直接つながっていく未来が来るんだと思います。
一握りの天才がある領域を引っ張っていくという幻想は、我らが研究の世界にもあるかな。もちろんものすごいセンスで見えなかった研究領域を切り開くように見える人はいる。しかし天才とかいう思想とはちょっと違うかな…。どんなに発想が優れていても、研究の世界は日常の一環として続けていくということが大事だといまの僕は思う。
アートや美大周辺によくある”何者かになれ”という強迫で「普通」を軽視して壊れていくのを散々見てきた - Togetter
https://togetter.com/li/2174802
一方、大学院生のころは天才幻想にとりつかれて、誰はすごいだのという井戸端会議が盛り上がるのもよくある風景。ある種の中2病、あるいはセカイ系の一形態なのかもしんないと思う。自分には隠された才能があるとか、通常の努力や関係性抜きにいきなり研究業界を背負い込んだ戦いに…とかなりがちな点で。
いつまでも大学院生の感覚を引きずった大人がいて困るという話を聞いたことがある。大学の教壇に立つ人は、まず社会的な大人でなければならないとも。社会的な大人は、日常をちゃんと生きて社会とのつながりをないがしろにしない人だと。実践は難しい。それは教育に特に言及する意味で聞いたのだけど、研究だってそういうところはある。
普通、いいじゃないか。
学生からのコメントのなかに、初めてAIだろうなと判断するものがありました。仕掛け方が下手なんでしょう、それっぽいことを書いていますが支離滅裂でした。上手に仕掛けられたら見破れるか疑問に思いますが、これは仕掛ける側の知性も相当試されますね。
逆に言うとChatGPTにうまく作文させるには、よく授業を聞いて理解していなければならないので、よい作文がならばよく理解しているということになる。だとしたら本人じゃなくても問題はない、という立論も可能かもしれません笑
そうか、ChatGPTに書かせたとしてもその書かせ方を採点するという水準もあるわけか!
ダメだけども。でもモロバレのやつを見つけられた喜びでここに記念の一文を物しました。
最近、お惣菜などの食品販売で「おいしく召し上がってください」とか「おいしく食べてください」と言われることが増えてきた。
これって、韓国語の「맛있게 드세요. マシッケトゥセヨ」、直訳すればおいしく食べてください、という言い方の日本化ではないのか。
僕が日本語教育に携わっていた2015年くらいまでは、韓国の留学生が母語転移を起こして、こうした中間言語を作り出してしまうということは話題になっていたと思う。日本語では「どうぞ召し上がってください」のほうがいいよ、という指導をしたものだった。
観測範囲では若い女性店員から聞くことが多い。多い、というか他の属性から耳にすることはない。…ということは韓国語の影響ということだろうか。
もうちょっと事例を集めてみたい。皆さんも耳にされますでしょうか。
同じ語り手によるこれも。非常に面白いと思いますね。
一流ジャズサックス奏者が「アニソンのストーリーテリング」を解説&実演 - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=zdtdJMNSKg0
アメリカ人のサックス奏者がJ-POPのメロディについて語る動画が面白い「Perfumeの分析出てきて驚愕」 - Togetter
https://togetter.com/li/2173933
こういうのは定期的に出てくるけど面白いですねえ。言語と音楽の関係とか。
https://www.youtube.com/watch?v=gFXcwv9XISc
言語のリズム構造にも触れている。日本語は拍構造だから同じリズムが続く、というようなことを言いたい模様。
Perfumeのスイートドーナッツにメロディが、生み出す前向きさと憂鬱さがポジティブな力をくれるというエピソード、7分10秒あたりです。
こういうJ-Pop的なメロディは私たちは骨身にしみて知っている。Perfumeの初期名作らしい、スイートドーナツです。
https://www.youtube.com/watch?v=zmFUh5o7c9M
上がって下がる、そこに生まれる切ないポジティブな感じ。わかるー。わかるよ。
歴史学が基本、論であるというのは改めて考えるとかっこいい。昨年、今更ながらカー『歴史とは何か』(新版)を読んだが、当然のことながらマテリアルたる史料を並べたところで歴史は浮かび上がってこないのであって、論こそが学問の中心だ。
僕の本も、「〜の研究」というこの方面によくあるタイトルで行くかなとぼんやり考えていたところに、編集の方から「〜形成史論」はどうですかと言われて、即採用した。山のようなデータの量を見せて、ほら事実こうでしょうという研究のダイナミズムにも憧れに似た感覚はあるが、論を先に立てて証拠を集めてくるやり方が自分のスタイルであることは、言われて改めて気づいたのだった。
本を出してからコーパスや人文情報学への関心が強くなって、いまはデータに物を言わせるような研究の方を向いている。でもどこまでいっても、研究は本質的に論なのだし。「〜の研究」というタイトルもキャリアが終わるまでに書きたいが、中身としては論のほうを頑張りたいという思いは変わらないな。
ジャンプ連載の「逃げ上手の若君」、南北朝時代の成立について刺激的な説を出している。日本史研究に疎いので、専門的にはどうであろーと思っていたら、レビューが付いていた。
「足利尊氏は敢えて南朝を残した」「南北朝両立で『政権選択』が生まれた」…東大教授とジャンプが広める - INVISIBLE D. ーQUIET & COLORFUL PLACE-
https://m-dojo.hatenadiary.com/entry/2023/06/21/035122
ちょっと前に、足利尊氏は相当変なやつという人物像が語られていた。太平記にもおかしな記述があるんだとか。いつか太平記の専門家に聞いてみよう。
当時大学院生だった自分が先輩として見ていた人たちも、50代や60代となってきている。教育や研究の実践を時々伺うと、皆さん熟練のプロという感じで、一線を歩んでいるなと思うことしきり。
若い頃は、そんなの理想主義にすぎると思ったことや、厳しすぎるんではと思ったこと、逆に手を抜きすぎなんではと思ったことなどが、きちんと昇華されて参考にすべき形になっている。つくづく自分は生意気な後輩でした。
なんというか時間をかけて積み重ねていけば、青臭かった我々も何か形になっていくのだということを失礼覚悟で思ったりした。そのことはものすごい励みになるのだよね。暗闇を進んでいくときの不安さの先に希望があるというような。歩みを止めないということを明日も頑張ろう。
日本語学の研究者です。漢字音史、漢語アクセント史を文献ベースで狭くやってます。自己紹介的な論文に、「アニメ『ドラゴンボール』における「気」のアクセント─漢語アクセント形成史の断線から─」(日本語学2022年6月号)あり。データベース作ったり、自転車に乗ったり、珈琲を飲んだり、ジャム作ったりしています。https://researchmap.jp/read0135868