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千野 さんがブースト

こないだは、井の頭動物園でぼけーっとしてたら、キジ舎の前で「おー、くじゃくだぞ」「わーいくじゃくだー」と盛り上がる親子がいて、やっぱり何も言えず煮え切らない気分でした。仲よしファミリーが楽しくやってるとこに、子も連れずに動物園に来る怪しい中年が、いやそれキジですよ、なんて言えないっすよ。

しかし、動物園は鳥インフル厳戒態勢でした。難儀やね。

あとは以下のやり取りにもニヤリとした。
書物に、物語に、一度でも夢中になった経験があるなら思わず微笑んでしまう言葉ではないだろうか。

"(レイドリーがネペンテスに)信じがたいという口調で言う。「そんなに夢中になっているっていうのかい? 何千年も前に塵に還った相手なのに」
「好きになる対象は選べないもの」"
(マキリップ〈茨文字の魔法〉(2009) 原島文世訳 p.82-83 創元推理文庫)

そう、好きで、読むことによって会いたくて、だから書を手に取って開く。

ページから眼で文字をひとつひとつ拾って飲みこみ、噛み砕き、頭の中である一幅の画を織り上げているあいだ……実際の身体の周囲にある音も、色も、暑さも寒さすらも消え失せる瞬間が確かに訪れる。
私の場合は電車も乗り過ごす。
それを称して「本には魔力が宿る」と比喩されるのだが、今回ネペンテスが捕らえられた魔力というのは、単なる比喩とは種類を異にする特定の魔法だった。

書記組以外のキャラクターにも魅力が多く、若き気弱そうな女王テッサラと、その側近の魔術師ヴィヴェイの描写なんかも良かったな。

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崖に建つ王宮と、その地下に築かれた図書館。

レイン十二邦の王立図書館に勤める書記レイドリーは、同僚のネペンテスが謎の書物を構成する〈茨文字〉の翻訳に異常なほど熱中する様子を眺め、愚痴のように零した。
それを受けて空の学院の生徒、ボーンが答える。

"「亡霊に心を奪われてる。誰だってあくびが出てくるような歴史の断片にだぞ。あれを読んでいるとき、ほかのものが話しかけて、こっちには見えもしなければ聞こえもしないものを伝えてるんだ」
(中略)
「それが魔法の始まりなんだ。想像力を自由に働かせて、あとを追ってみる」"
(マキリップ〈茨文字の魔法〉(2009) 原島文世訳 p.178 創元推理文庫)

……終盤の激情・苦痛・渇望など感情全般の描き方が美しく、その点で同著者の《妖女サイベルの呼び声》に並ぶ作品だと思った。
面白かったし、私の好み。

一番良かった部分に言及しようと思うとすべてがネタバレになってしまうのが惜しくてしょうがない。
ただ、古代の世界でそのようにしか生きられなかったある人物が、これまでには考えられなかった選択をする部分……全てを自分以外に捧げてきた者が初めて己のために願ったことが何か、感慨深かったとだけ。

chinorandom.com/entry/2023/12/

千野 さんがブースト

【感想】『茨文字の魔法』パトリシア・A・マキリップ 原島文世訳

https://sasaboushi.net/blog/2023/09/02/3847/

 良いファンタジーを読んでしまった。じわじわと良くなってくるというか、冒頭でガツンと引き込むというより気づいたら先が気になっている感じ。終盤の加速感がすごかった。

 王立図書館で養われている孤児の少女ネペンテスが、謎めいた茨文字の本の解読にのめり込んでいく。そこに記されていたのは、古代の皇帝アクシスと、それに付き従う魔術師ケインの物語。茨文字の本をネペンテスに手渡したのをきっかけに彼女に惹かれる魔術学院の学生ボーン。そしてこの図書館や学園をもつ王国・レインの幼い女王テッサラと、その相談役となる魔術師ヴィヴェイ。……と、主人公的な扱いで焦点化する登場人物だけでもこの人数がおり、交互に各パートが回っていき、最後に全てが集結していく、という王道なスタイル。茨文字を解読する、本を読むという行為がフィーチャーされているファンタジー。

 特徴的だと思ったのは、特に魔法の表現において用いられる省略・跳躍を効果的に使った描写。説明するのが難しいのだけれど、魔法で急に出現したり急に場所が変わったりしたことが、そのまま急に文章に落とされている、というか。客観的な説明ではない、夢の中の意識の感覚に近いような言葉が不思議で楽しい。後半、普通だったら禁じ手っぽい視点の移動とかがさらりと横行してくるのも魔術的だ。また、キャラクターが多い中でそれぞれの魅力がしっかりと作られているのも良くて、自分はテッサラが一番好き。幼さを残しながらも明らかに王の器というか、肝が据わっているのがいい。

 終盤でケインがしていることが明らかになったとき、さらに茨のシステム(?)が明かされた時にはかなり引き込まれた。怖すぎるだろ。ここまでの積み上げの構成力が凄まじく良くて、しかしその分ラストは急に終わらせた感じが若干あり、ネペンテスは結局それで良かったのだろうかとはちょっと思った。

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5月頃に訪れて
「前にあった緑のカーテンがない」
と呟いていた喫茶店、バウハウス。
よこはま動物園ズーラシアへのバスが出ているJR中山駅の、南口にある。

先週足を運んだらカーテンが復活していたので、もしかしたら洗濯したり乾かしたりする期間だったのかな、と想像した。
改めて見てみるとやはり格別な趣があり、うっすら草木に囲まれている喫茶店だから、内部からも木立を連想させる仕掛けがあると小人の小屋みたいでわくわくする。

カーテンの素材の感じと緑の色が、店内の椅子に張られた布のなめらかな赤と呼応しているから、まるでカーテンが自分の「役割」に自覚的であるようにも思える。
赤い木の実や赤い靴を隠す、森の役割を担っているのだと。

食べたのはねぎトーストだった。
視覚的にも強い印象を残す分厚い食パンの表面が焼かれ、3等分に切れ込みが入れられて、バスケットの中に横たわる。騎士に何度も両断されて倒れた布団のようなその佇まい。茶色い耳の部分は薄い層がいくつも重なったようになっていて、香ばしい香りがわずかな隙間にも蓄えられている気がする。
たっぷりのチーズに散らされた青いねぎの風味は強すぎず、じっくり噛んでいてとても安心できた。

chinorandom.com/entry/2023/12/


QT: mstdn.jp/@hirose_chino/1103962
[参照]

千野  
駅前の入り組んだ路地にある、昭和54(1979)年から営業している小さな喫茶店。 印象は「草に覆われた民家」というか、ある程度のところまで近付かないと、本当にただの草叢にしか見えない。 昔は内側にうすい緑のカーテンがかかっていたはずで、でも、先日行ったら取り外されていた。とても綺麗な緑色のカー...

ヌワラエリヤ
ペドロ茶園 Pekoe

説明書きに「レモンのような柑橘系の風味の余韻」……とあった通り、さっぱりとした爽やかな香りがする。食事にもお菓子にも合う感じ。
特に、酸味のあるドライフルーツが練り込まれたパネトーネは個人的にぴったりのお供だと思う☕
偶然棚にあったの出してきたら美味だった。

この時期はシュトレンも良いし、パネトーネも好き。

何度も読んだ宮沢賢治の「注文の多い料理店」や「どんぐりと山猫」でおなじみの存在なのに、実際、ヤマネコのことを何も知らない。

今このページを見ていた。
【あらためましてツシマヤマネコ~その2~| 九州地方環境事務所】
kyushu.env.go.jp/blog/page_001

暗くなってから活動するにはする一方、より正確には狭間の時間……と言うんだろうか、日の出前の暗い時刻や、夕暮れに起きて動いている(つまり真夜中には眠っている)場合も多いみたいで、それを指して「薄明薄暮性」というんだって。
黄昏に活動しだすのは、妖怪やこの世のものではない存在みたいで惹かれる。

冬は繁殖期だと書いてある。
この動物園の檻にいた子も、そうなのかな。

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ツシマヤマネコが変わった格好で寝ていた。

地面に対して平行にベーグル形をつくり、丸まって眠る……のではなく、まるで土下座をするように、縦方向に体を縮めて額を地面にこすりつけているみたいな。
首が痛くならないのだろうか?
鼻や顔の全体を毛で温めるのには、あれが適した姿勢なんだろうか。人間には分からないけれどとりあえず外は寒そうであった。

「こんにちは」「寒いですね」などと話しかけてみたけれど、沈黙が返ってくる。
他の多くの動物たちと同じで夜行性。

平べったい金属の鎖が連なった太めの黄金色のネックレス……を総括して「ヤクザネックレス」って頭の中で勝手に呼んでいるんだけど、正式な名称が「喜平ネックレス」である他にもいろいろ間違っているのに、幼い頃にドラマか何かで抱いた印象がなかなか払拭できなくて困ってる。

でも、絶対他の人には通じないだろうと思って「ヤクザのような感じを醸し出せるネックレス」とダメ元で職場の人に説明したら、難なく分かってもらえて面白かった。

綺麗で新しいお手洗いが好きな気持ちと、古い建物に宿泊するのが好きな趣味、当然両立するのが難しい。邸宅見学などで当時のお手洗いを観察するのは楽しいけど、全然、使ってみたいわけじゃない。
でも最近は残せる場所は大切にしつつ、浴室なども含めた水まわりだけ全面的にリニューアルしてくれている宿屋も少なくないので、個人的にありがたい~と思う。

ここ数年だと「古い建物+新しいお手洗い」で印象に残った宿が2つある。

ひとつは伊香保温泉の近代遺産、大正期の木造旅館の趣を強く残す「横手館」(写真1)で、古い客室の内部にはトイレが無いのだけれど館内の共用お手洗いがとても綺麗。
一旦部屋から出ないといけない些細な不便さに納得できれば、この手の建物好きにはかなりおすすめ。山の上なので夏は冷房設備なしですが涼しく、冬はありがたいことに暖房もよく効いて暖かかった。

もうひとつは中山道、岐阜県の馬籠宿にある旅籠「但馬屋」(写真2)。
明治期に再建された宿屋で、建物内の階段はどんなに気を付けて歩いてもギシギシと大きくきしむ、どちらかというと音の面で留意が必要かもしれない古い宿。
でも共用お手洗いは個室の数も多く、清潔で安心できます。旅の疲れで爆睡できるなら夜間の音もすっかり聞こえなくなる(自分の体験談)。

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公共のお手洗いがどれくらい清潔であるかによって、嘘みたいだけれどその日の気分すら左右される……!?
と気が付いたのはわりと最近の話でした。
綺麗だととても嬉しいし、あんまり綺麗じゃないと、すごく悲しくなる。

首都圏とは名ばかりの中途半端な田舎(神奈川県内の陸の孤島)から、行きたい科があった東京都の私立高校に進学してみて、かなり感銘を受けたものといえば「お手洗いの新しさと清潔さ」だったのを思い出していた。
初めて足を踏み入れたとき、え、なんかここデパートの3階より上にあるトイレみたいだな……と感動した。
そこはかつて女子高だったのが共学に変わった歴史があり、雑多な制作棟(アトリエとか)もあって校舎自体は古かったけど、お手洗いだけはピッカピカだった。

そもそも大昔に通っていた私立幼稚園も異様に建物が古く、90年代後半にもかかわらず、明らかに汲み取り式設備に頑張って最低限手を加えましたみたいな様相を呈していたのを覚えている。
しかも昼間なのにおかしなほど暗くて(電灯すら無かったかも)、夏だろうとそこだけ寒くて、怖かった。幼心にあの場所には行きたくないといつも思っていた。
それがなんというか「原初の記憶」に刻まれているせいなのか、なおさら外で綺麗なお手洗いに遭遇するのが嬉しい、のかもしれないです。

自室の机の上やその周りにいつもたくさんのメモが散らばっている。
落ち葉みたいに重なり、積もっている。

それらは多くが「行く」「買う」「渡す」「借りる」「返却する」「読む」「書く」などに関係する言葉たちで、ほとんど名詞や目的語がそのまま書き留められているだけなのだけれど、大抵の場合は見ればその意味も併せて思い出す。
でも、たまに何の意図で過去の自分が書き残したのか全く分からない、朝には忘れ去られてしまった深夜の走り書きも……ある。

だいぶ前の例だとなんとなく面白かったのが『ジュリアン』だった。
これは神奈川の藤沢にある喫茶店の名前。多分、寝る前に調べて行きたくなったからメモに店名だけ書いておいたのだろうと思うものの、次の日の寝起きの頭では文脈から完全に切り離された『ジュリアン』に理解が及ばなかったのか「ジュリアンって誰だっけ……」と午前中ずっと考えていた。
思い出してからそこにはちゃんと行った。
写真の筐体ゲームテーブルがあり、カレーがおいしかった。

過去の自分が書いた謎のメモは詳細を思い出せない場合、本当の意味で、時空の隙間から部屋に滑り込んできた存在に変わる。
もしかしたらジュリアンは忘れてはならない友達の名前で、思い出してあげないと二度と会えない誰かなのかもしれない。呼ばれている。

陽が落ちてから外を歩くとき、電気で光る首輪をつけている犬を見かけたら、ラッキーポイントが加算される。

だいぶ前にそう定めていて、けれど具体的に何ポイント集めたら何が起こるのか、どんな幸運に見舞われるのかまでは考えていなかった。なので、ただラッキーポイントだけがどんどん加算されていく。
今日見たものは、オレンジ色をした、ポン・デ・リングみたいな光を首にまとった犬……。

かれこれ3年くらい会っていない友達がしばらく仕事を休んでいて、今は「ネイルの勉強」をしているのだと共通の知り合いに教えてもらった。
働いたり休んだり新しいことを学び始めたり、そうして生きている知人の話を聞くと楽しい気分になるのはどうしてだろう。
いずれどこかのサロンに勤めるのか、独立したいのかは今度直接聞いてみることにして、どちらにせよお客さんとして爪を彩ってもらいに行くのが待ちきれない。

それから、別の友達のご両親が江東区で経営されていた庶民的なイタリアンのレストラン、2023年12月をもって閉店してしまうのだと伺った。
人間がやっているお店なので永遠に続かないのはもちろん分かっている。でも、考えるとやっぱり寂しかった。
近く皆で訪れる予定だから、最後は一番高いお肉料理を頼み、ワインを開けて、胸に記憶を刻んでおきたいな。

未定になっていた1月の予定、高知ひとり旅にしようかな、と予定を立てて諸々予約するなどしました。
今のところ
12月→福島の山に宿泊
1月→高知ひとり旅
2月→網走ひとり旅
3月→千葉でBBQと宿泊
みたいな感じになりそう!

高知は喫茶店めぐりと牧野植物園を主なお目当てにして、あとは何に出会えるか自分の足で現地をウロウロしてみてのお楽しみ……にする。
往路は鉄道(岡山のりかえ)、復路は飛行機。

現地のスーパーマーケットにはどんなものがあるかなと探していて、多分ご当地感があるのは「エースワン」「サンシャイン」「サニーマート」あたりになるんでしょうか。
素泊まりなので何か適当に買ってみて旅館で食べようと思います。 [参照]

千野 さんがブースト

小春日和が続いて陽射しも多いせいなのか、秋に増やした多肉やサボテンがいい感じに育っています。秋に増やしたのものは数個。

まずは、ブレインカクタスこと脳みそサボテン・青海波。これは本当に形が脳みそっぽくて面白いです。それから、この時期によく見掛ける緋牡丹。黄色やオレンジ色にも惹かれつつオーソドックスな赤色を。あと、リトープスにも挑戦したいと思って追加。これに関しては全く取り扱いに慣れていないので未だにひやひやしている。最後は花キリン・ミリーエンペラー。蕾がついた状態で売り場に並んでいたものなので、少し経つと小さな花が咲いてきました(画像4枚目右)。

ウチワ系サボテンとかは適当に放置していても大丈夫……むしろ勝手にどんどん増えてゆくんですけど、多肉類は冬場に霜でやられる個体も出がちなので、今年は過保護にしようと思っています。手入れをサボるのが悪いんだという説も多々あるんだけど、予告なしで急激に雪が降る時とかも普通にあるからなあ。

……人間も、気温差にはご注意。


#雑談 #植物 #多肉 #サボテン

千野 さんがブースト

点滅社さんから発行された『鬱の本』にエッセイを寄稿させていただきました。「毎日を憂鬱に生きている人に寄り添う」ことをテーマに、さまざまな方のさまざまな体験や考え、そして救いになった本にまつわるテキストが収められています。谷川俊太郎、山崎ナオコーラ、町田康、大槻ケンヂをはじめ、超豪華な執筆陣に、こっそり混ぜていただいてます。すでに梅田の紀伊國屋書店には置いてありました。12月5日にはジュンク堂にも入荷されると思います。

短編〈ホアズブレスの龍追い人〉に出てくる強いお酒……
苦い、金色のワームスプアー。

"豊かにけむる黄金のなかで熟成して、鉱夫たちに筋肉の痛みを忘れさせ、果てしなくつづく冬に彼らから不思議な物語をすこしずつ引き出していく。"
(マキリップ〈ホアズブレスの龍追い人〉(2008) 大友香奈子訳 p.12-13 創元推理文庫より)

金色をした苦みのあるお酒。
身近なものだとビールなどがまず思い浮かぶ、でも本文の感じからすると、どちらかというとブランデーやウイスキーに近い質感であるような気がする。
寒さを紛らわせたり、気付け薬にしたり、怪我の傷口に吹きかけたり。

"「なかになにを入れたんだい?」
「黄金」
「火、石、暗闇、たきぎの煙、冷たい木の皮のにおいがする夜の空気」
「すべてよ」
「それと龍の心臓が入ってる」"

こちらの世界だと、例えばシングルモルトウイスキーを舌で溶かすように味わって、そこに灰色の煙、樽の気配、重なる地層の土や、潮騒と海の風までもが溶け込んでいるのを感じる時がある。
だから島の娘、ペカ・クラオが上の台詞で語ったようなものたちがワームスプアーの中にもある、とはっきり思い浮かべられるし、叶うなら本物に触れてみたい。

この地球には実在しないお酒。

冷蔵庫内のジャガイモからつやつやの白い芽がたくさん出始めていて、危機感をおぼえたので取り除いてからニョッキを作りました。

そうしたら成形した生地をお湯に投入後、茹でられている姿が完全に「幼虫」で、しばらく無言になった。違うって自分に言い聞かせてもやっぱりイモムシさんに見える。
いや、確かに芋でできてはいるんですけど……

薄力粉でも作れるレシピを参考にしましたが強力粉を使ったほうが好みそうなので、次からはそうします。今回は家の中になかった。
柔らかめが好きな人はむしろ薄力粉使用の方が合うのかもしれない。

あとは今年の1月半ばに名古屋で発見したこのあたり……もう相当に強烈な魅力を放っていた小さなビル1階の扉。
確か新栄町駅~千種駅の中間あたりだったかな。

そう、これ、何らかの会社? 事務所? が入ったビルの出入口のもので、観音開きになる仕様だったんです。実際に開けて覗いていないから正確なところは分からないけれど、おそらくは細い上り階段に続いている。
しかも他の部分はタイルだったりモルタルかコンクリートっぽいごく普通の壁だったりするのに、ここだけに木の素材を使っていて、良すぎた。畳みかけるように視界に飛び込むのは味のある磨りガラス。
引、の1文字。
正方形の金属のパーツ。
この世界のどこかに、これを製造した場所がかつて確かにあったのだと想像するだけで、ときめいてしまった。自分に強大な力さえあればもぎ取って持って帰りたいくらいだから。

一般公開されているわけではないので中に入れてくれと頼むこともできないのがやはり市井の建築散歩の難しさというか、本当により深いところまで調べたいなら、それこそ研究会として活動しなければならないのがこの手の建物なのであった。
こっそり扉のところだけこうして記録。

左側に写っているあやしい影は私と同じく散策趣味の友人です。
妖怪じゃないよ~。

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あまりきちんとは記録できていない……ながら、例えば昨年冬の散策でかなり印象に残った渋ビルといえば「クラタビル11号館」が挙げられるかもしれない。神戸市中央区にあります。
珍しくちゃんとブログにも写真を載せていた1件。

浴衣レンタル店やアンティークショップなどが入ったビルになっていて、道路に面した正面入口から内部に足を踏み入れると、真ん中が四角いドーナツみたいな吹き抜けになっている。
この時点でえ!? 面白いかも……!
と思ったんですよね。外からだとそんな風には見えないので。

吹き抜けがあるので階段も、その空間を遮らないように真ん中を空けてぐるっと配置されている。
あの、あれ、エッシャーが版画『上昇と下降』で描いたペンローズの階段みたいな……一種のだまし絵みたいな様相が展開されているのだった。

四分円形に張り出したちっちゃなベランダ的部分があったり、微妙にガス灯をなどを模しているのか洋風の照明器具があったりと、見どころが多い。
壁、レンガ風にしてあるところとそうではないところの対比も好きだった。
廊下の天井の方を飾る丸い照明が謎に2色(白と橙)なのは、偶然なのか意図的なものか不明……。もしもわざとなら相当にお洒落だし、これもまた渋い。こだわりを感じる。

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