あまりきちんとは記録できていない……ながら、例えば昨年冬の散策でかなり印象に残った渋ビルといえば「クラタビル11号館」が挙げられるかもしれない。神戸市中央区にあります。
珍しくちゃんとブログにも写真を載せていた1件。
浴衣レンタル店やアンティークショップなどが入ったビルになっていて、道路に面した正面入口から内部に足を踏み入れると、真ん中が四角いドーナツみたいな吹き抜けになっている。
この時点でえ!? 面白いかも……!
と思ったんですよね。外からだとそんな風には見えないので。
吹き抜けがあるので階段も、その空間を遮らないように真ん中を空けてぐるっと配置されている。
あの、あれ、エッシャーが版画『上昇と下降』で描いたペンローズの階段みたいな……一種のだまし絵みたいな様相が展開されているのだった。
四分円形に張り出したちっちゃなベランダ的部分があったり、微妙にガス灯をなどを模しているのか洋風の照明器具があったりと、見どころが多い。
壁、レンガ風にしてあるところとそうではないところの対比も好きだった。
廊下の天井の方を飾る丸い照明が謎に2色(白と橙)なのは、偶然なのか意図的なものか不明……。もしもわざとなら相当にお洒落だし、これもまた渋い。こだわりを感じる。
あとは今年の1月半ばに名古屋で発見したこのあたり……もう相当に強烈な魅力を放っていた小さなビル1階の扉。
確か新栄町駅~千種駅の中間あたりだったかな。
そう、これ、何らかの会社? 事務所? が入ったビルの出入口のもので、観音開きになる仕様だったんです。実際に開けて覗いていないから正確なところは分からないけれど、おそらくは細い上り階段に続いている。
しかも他の部分はタイルだったりモルタルかコンクリートっぽいごく普通の壁だったりするのに、ここだけに木の素材を使っていて、良すぎた。畳みかけるように視界に飛び込むのは味のある磨りガラス。
引、の1文字。
正方形の金属のパーツ。
この世界のどこかに、これを製造した場所がかつて確かにあったのだと想像するだけで、ときめいてしまった。自分に強大な力さえあればもぎ取って持って帰りたいくらいだから。
一般公開されているわけではないので中に入れてくれと頼むこともできないのがやはり市井の建築散歩の難しさというか、本当により深いところまで調べたいなら、それこそ研究会として活動しなければならないのがこの手の建物なのであった。
こっそり扉のところだけこうして記録。
左側に写っているあやしい影は私と同じく散策趣味の友人です。
妖怪じゃないよ~。
#名古屋 #散歩 #渋ビル