ジェニファーズ・ボディ
Blu-ray 完全版
見る前に思ってたよりもテンションは抑えめで割と暗い話だった。ただこれはたぶん性被害に遭ってしまった友人のPTSDを「悪魔に取り憑かれた」というかたちで表現したんだと思うし、彼女とどういう風に向き合っていくか、今までの関係のままではいられないのだろうかと悩む友人の話ってことだと思うからこの抑えめなトーンは正解だと思う。たぶん性被害を受けた後はたとえ本人にそんな気がなくてもああいうふうにどんな男でも自分に加害しようとしていると思えてしまうんだと思う。
カリン・クサマは『ストレイ・ドッグ』もどこか歪ながらその主張はひしひしと伝わってきてかっこいい監督だったから、スタジオ側の権力持ってる連中が下劣なバランスにしようとするからなんとか踏みとどまって矜持を保った、みたいな雰囲気もあった。正直若干の緩さやラストの展開の見せ方はあまり好きじゃなかったけど心意気は確かにある映画だった。
そしてウェイドのノンバイナリーのsiblingが字幕や吹替で「妹」とされてしまっている件はまだ日本に単数theyにしっくりくる言葉が周知されてない、日本の翻訳側が名前でしか呼ばないみたいな対応を考え付かなかった、そもそもこの作品のノンバイナリー表象が適当というか少な過ぎるのでわかりにくい、という3つの問題があると思う。「彼人(かのひと)」みたいな言葉を使ってる人はいるけどまだ浸透はしてない気がするし「ピクサー初のノンバイナリーキャラ!」と大手を振って言えるような表象とも言えないので余計話が複雑になってしまっている。ひとつひとつの問題に丁寧に対処しないと今後また同じようなことが起こり得るので、この作品に関わっている全員が、そしてこの作品を見た人全員が何かしら解決方法を考えてみるのが次に繋がる。
ただ物語の筋はあまり好きではなかった。ウェイドが能天気白人キャラ過ぎて好きになれなかったからかな。ファーストインプレッションが最悪なのはラブコメのお決まりだとしてもその後の「え、言えば良かったのに」的なセリフが癇に障ってそれ以降も考えなしに『招かれざる客』的なシチュエーションを作ったりしてて無意識な加害が目立つ。あの「アクセントが綺麗だね」のオッサンめちゃくちゃムカついた……。
あと炎族の現状は都市の連中の怠慢のせいなのにそれをエンバーが尻拭いさせられるのもよくわからなかった。行政がやるべきことを個人の努力に委ねているのに特に批判の視座が無い。
終盤は近づいて離れてなんやかんやあって仲直りが急過ぎて雑に感じてしまった。「なんとか話を畳まないと!」っていうスピード感。ラブコメとスペクタクルの食い合わせが悪かったのかな。
マイ・エレメント
監督が韓国にルーツがあること、それが作品に反映されていることは事前に聞いていたので物語をすんなり飲み込めた。コリアタウンを模したコミュニティが街の下側にあって水が流れ込んでくるという展開はパラサイトを思い出す。
違う人種とのラブストーリーをこういう形に翻案できること自体は物凄いし、いつものピクサーらしくアニメーションも半端ない。アニメ的な水とハイパーリアルな水が画面に共存していて困惑する。字幕では「メラつく」「アンビリーバブル」といった上手い訳が多くて楽しかった。”Tide and Prejudice”を考えた人にもそれを「高潮と偏見」と訳した人にも拍手。水族がどうやって線香に火をつけるのかや名札を隠しても隠してもズームされてしまうギャグなど各属性を生かした演出もてんこ盛りで抜き出せば楽しい。インド音楽っぽい劇伴もかなりカッコよかった。
トランスフォーマー ビースト覚醒
ロボ軍人に家父長のなんたるかを学ぶというストーリーに辟易しつつ斬新な展開があって変身ヒーローっぽいなと思ってたらラストにズッコケた。それは誰かが見たいと思ってた展開なんですか……?
ロボ同士の戦いは明らかにもう手札がない感じでほぼ間違いなく良い感じになるはずのフェイタリティ描写ですら作品内で被っていて制作側の疲れを感じる。誰がどう強いのか未だにわからない。
ただ音楽のセンスは確実に良くなったと思う。ビー復活のシーンは歌詞もついててちょっとアガった。ただこの復活も全くロジックがわからなくて「かえってきた!」感はバンブルビーの知名度と人気に全乗っかりな感じでもっと工夫してよと思う。オプティマスがビーに「ドライブインシアターで拾ったネタを使い回すな!」みたいな説教するとこはめちゃくちゃ笑ったけどね。
アルプロのオーツミルク、コーンフレーク入れた後の牛乳みたいでちょっと美味しかった。
ピーター・パン&ウェンディ
あまり評判を聞かないからハードル下がってたのもあるかもしれないけど結構グッときてしまった。デヴィッド・ロウリー作品の中でも一番かも……?
アニメ版の方をほぼ知らないけどピーターとフックが親友っていうのはすごく良いと思ったしあの結末もアツい。ジェームズの「ピーター」からの「何も思いつかない」にみんな「ウッ」てならない?大人になるのもいいし、それより大事なことがあるなら大人にならないのも良いってバランスだった気がする。タイガー・リリーがめちゃ強戦士なのも良いし子どもたちもさまざまな人種・特性の子たちがいて色んな子どもが見ることを想定できてる。
森の撮り方とかかなりグリーン・ナイトだったけど一番好きだったのはア・ゴースト・ストーリー的なウェンディの人生ダイジェスト。板から飛び降りる時は未来も見るというか想像?しててピアノ弾いたり飛行機に乗ったり作家になったり色々してるけど夫的な存在は出てこないところがめちゃくちゃ良い。大家族に囲まれてはいたけど異性との結婚が当たり前じゃないと明示されててこれもグッときた。
ビリヤニ食べてみたいって今までに5〜6回思ったことあるけど一度も食べられてない。なんか全部とても辛いと聞いている。一般的な中辛よりちょっと下くらいなら食べられるんだけど。
@abarabou
前々から気になってはいたんですがたしかあばらぼぅさんが最近名前挙げてた気がして見る順番繰り上げました!
小物の使い方自体もそうだしウェディングドレスを見つけて、次のシーンではもうそれで引きずってるっていう、編集のテンポも良かったですね。レストランでプロポーズしてるカップルいたけど男性の方どう見てもオッサンでしたよね……?チケットも目隠しも全部キツい!「行くな!」と序盤からヤジ飛ばしてました 笑
ミーガン・フォックスは特にタンクトップになってるイメージが強いので着込んでいくのもそうだしワイシャツとスラックス?の合わせ方が妙にファッショナブルなのも良かったです。ジェニファーズ・ボディもチェックしてみますね👀
ティル・デス
上質なフェミニズムホラー。
「死んでもなお迷惑をかけ続ける男の死体」という設定だけで勝ちなところがある。「六壁坂」を思い出した。若干の中弛みはあったけど展開の作り方が丁寧だし、ひとつひとつのモチーフに気が利いてて「上手い!」ってなる。弾のない銃でサスペンス作るのカッコいいな。「輪」の使い方やウェディングフォト?にナイフぶっ刺さるのも良い。
基本丁寧なんだけど「いやそれは見つかるだろ」っていう雑な隠れ方とか車の下を引きずられていく死体を撮るためだけのカメラとか、なんか緩いところもあってそこも含めて好きだった。主演のミーガン・フォックスの静かなキレ方も良くて「さっさとこのファッキン・ピース・オブ・シットと繋がれた手錠を外しやがれ(バンッ🦶)」のとことか最高。
クレジットには名前がvとかvaで終わるような人が多かった印象。一人はブルガリア出身の人ってわかったけど東欧系のスタッフが多く関わってるのかな?ロケの関係?アメリカ単独制作ではあった。