中原中也の英訳、アメリカの研究者が挑む 「ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん」どう訳す?║好書好日
https://book.asahi.com/article/15432331
いわゆるオールタイムベストを択ぶとはどのような営みなのか、以前考えて書いた比較的長いエッセイがありますので、興味をお持ちの方はここからご覧ください。
SFマガジンオールタイムベストアンケート、投票してみました。
海外長編
1.ケイト・ウィルヘルム『杜松の時』
2.スタニスワフ・レム「完全な真空」
3.マイクル・ビショップ『時の他に敵なし』
4.アンナ・カヴァン『氷』
5.ロバート・シルヴァーバーグ『夜の翼』
国内長編
1.時里二郎『名井島』
2.大江健三郎『同時代ゲーム』
3.山尾悠子『飛ぶ孔雀』
4.筒井康隆『美藝公』
5.山野浩一『花と機械とゲシタルト』
海外短編
1.マイクル・ビショップ「宇宙飛行士とジプシー」
2.ジョン・ヴァーリイ「残像」
3.ジェフ・ライマン「オムニセクシュアル」
4.フリッツ・ライバー「ラン・チチ・チチ・タン」
5.ジョン・クロウリー「消えた」
国内短編
1.荒巻義雄「性炎樹の花咲くとき」
2.中井紀夫「山の上の交響楽」
3.小川一水「漂った男」
4.村田沙耶香「トリプル」
5.山本修雄「ウコンレオラ」
海外作家(順位なし)
〇テッド・チャン
〇J・G・バラード
〇サミュエル・ディレイニー
〇シオドア・スタージョン
〇サマンサ・ハーヴェイ
国内作家(順位なし)
〇筒井康隆
〇秋山瑞人
〇伊藤計劃
〇大滝和子
〇三五千波
@biotit おお、朗報ですね。本が出てアメリカでサイン会などをしていたなどは知っていたのですが、候補になったことは橋本さんの情報で知りました。しばらくは自分の同人誌の作業にかかりっきりで申し訳ないことにすぐには読了できないかもしれませんが、紹介される価値のある作家であると信じています。クラリオンのワークショップにもいたそうですね。
GRANTAに掲載された“Manifest”でも強く感じたが、女性の皮膚感覚、なかでも広義の違和感を掬い上げる手つきは卓越していると思う。体からはじめて母乳が流れ出る「光景」を主人公はほとんど他人事のように冷静に観察するが、本篇にあっては自分の身体とその外側との境界線は、つねに揺らいでやまないものとして描かれる。「自分のこのからだはほんとうに自分のものなの?」という感覚を一度でも抱いたことのある人にこそ読まれてほしい。
Nightmare Magazineに寄せた掌編“Things Boys Do”では赤ん坊はビクスビイ「きょうも上天気」やエムシュウィラー「ベビイ」にあらわれる〈恐ろしいこどもたち(アンファンテリブル)〉のように周囲の人間を破滅におとしいれる、あるいは混乱を意に介さず自身の愉楽を貪る無邪気な存在としてあった。けれども本作は悪夢的な結末のあるアイデアストーリーではない。勇敢なる自身の母親との交流、そして和解を前提としたパートナーとの小さくも重要な対話を通し、母としてのアイデンティティをゆるやかに獲得していく結尾に一級の文学と認められうる美点が存するといえる。(了)
The Best Short Stories 2022: The O. Henry Prize Winners(Anchor)より、Pemi Aguda“Breastmilk”。作者Pemi Agudaはナイジェリアの女性作家で、アフリカSFの年間傑作選に作品が採られながら国際文芸誌GRANTAにも登場、2022年にはいわゆる第一席は逃したもののO・ヘンリー賞も本篇で受賞という期待の新鋭。筆者はジェフ・ライマンのウェブ上の文章でこの作家のことをはじめに知った。
第一子を産んだばかりの、けれど自分の乳房から母乳が出てはくれない母親を主人公とし、母や子、パートナーをふくむ家族や病院関係者との関わりを繊細きわまりないタッチで描いていく。周囲の人間や世間が一方的に規定する「母親とはこうあるべき」という像に主人公が違和感を覚えていくさま、夫婦別姓を「許可」し、「ジェンダーに理解がある」と自分では考えているものの内実は抑圧的に振る舞うパートナーの存在。2010年代以降その勢いが明確に目に見えるようになってきた、「抑圧されてきた女性作家が声を上げる作品」の世界的な興隆、本篇もそうした大きな運動のなかで捉えたくなってしまう。(つづく)
本好き、旅行好き。 海外詩/翻訳文化論/日本文学普及/社会言語学etc.文章のアップはSNSよりも主にブログのほうで行っています。よろしくお願いします。https://air-tale.hateblo.jp/