牛のモー将軍とか、不思議の国に迷い込んでしまった金田一耕助とか青ずきんとか、ゆるいキャラを登場させることで知られる田口犬男という詩人がいます。氏が書いているのは、幕末までの日本には「絶望」ということばがなかったために、武士たちは「困った、困った」と言いながら天下を右往左往していたとのことです。「どことなく鷹揚で、ユーモラスではないでしょうか」。そして詩人は、「絶望した」の代わりに「困った、困った」を使えばいいのだ、と微笑してみせます。ことSNSの時代には、euphemismはしっかりとスポンジになってくれるのかもしれません。