@Kanata フォローありがとうございます。本全体の感想はまとめられていないのですが、『結晶するプリズム』も楽しく読ませてもらっています。どうぞよろしくお願いいたします。

あの人たちはみんな集められ、調律されて「一つの歴史を生きてきた
アイルランド民族」になるのだろうか 足りない用語は何 フレームを
成り立たせるために 何かを見ようと思えば
フレームなしというわけにはいかない。
もしも私がスクリーンで はためいているとしたら
四つの手描きのプロヴィンスの境で
レンガと木材と
私を守るこの屋根
私はフレームの断片を見つけなければ
そのあたりを歩いてみて 確かめなければ
それらを曲げて合わせられるかどうか 違う設計図に沿って
それから試してみよう 説得すれば
生垣を越えて 戻ってくれるかどうかを
そのとき私は獣の重みを感じるだろう
奴らが ずれた翼にそって もう一度出現するならば。」
アイリーン・ニクリャナーン「捕獲」「英文学評論」95号(2023年5月)池田寛子訳
アイルランド現代詩の宇宙!ぜひ、池田寛子氏の評釈とともにお読みください。
repository.kulib.kyoto-u.ac.jp

II
私が地球ではなく この地球の最近の地図で
生垣に縁どられているならともかく そうでなければもう結構
また競走するのは。学年ごとに子どもたちが 
生垣に隠れた校舎で 暗記に励んでいる
アルファベットや語尾変化を 声が遠のいていく
ひとりひとりの名前が読み上げられていくにつれ。

あんなものは地球の影にして ウィンクで雲隠れさせてやる
私の脳内の路には もう隙間がないから
ナメクジと葉っぱの会話を全部聞いておきたいから
でも私がスローエアを追いかければ 音色はどこまでも広がって
大海原を横切って懸命に進む幾艘ものボートについて行く
あらゆるドアをノックして 押し入る
フランスの道をくねくねと進んで
知らない人の奉公に向かう娘たちのそばを通って
外国の戦地にいる息子たちのそばを通って 
断頭台で祈るルイ一六世の手を握るあの人のそばも通って
そうするうちに 地球が遠ざかっていく。(つづく)

「I
まず フレームを作るために手伝って 羽と
鼻と尾びれを使って
毛むくじゃらの獣たちの場所
奴らが這い上がってきたり 空中から出現するときに備えて
フレームには裂け目も必要 種を隠しておけば葉が芽を出すから
私が跳んで逃げると 地平線が振り子のように揺れる
遥か彼方で 連なる丘は
煙のように浮遊し 平野と
谷が目の前に迫る 急降下すると 水平面が
束の間現れ 葉っぱに隠れた窪みには
命が潜み 身を寄せ合って耳を澄ませる
音楽に命を吹き込む一つの声に 弾ける歌に 嘆きの歌に。(引用つづく)

カナダの作家、エラ・メンズィーズ「雨から離れて」(「Kaguya Planet」1号)。気候変動がいちおうの「解決」をみてからのちのルワンダを舞台とする作品。冒険的な十二才の少女、酸による傷跡をもつママ、ビニール袋を咀嚼するウミガメ、「パパの葉」、ひいては世界。作家が対象に向ける視線は誠実かつシンパセティック。問題意識に裏打ちされながらも、地球上のおのおのの生命の行動原理を否定せず、ともに生きていくことの隘路を登るための方途を短い語数で模索する。

「楽しそうに読んでいる人の所に人は集まる」、というある編集者のコトバは金言だと信ずるのですが、読むことの愉楽を存分に伝える「本の雑誌」のコンテンツ「作家の読書道」のように「翻訳家の読書道」があってほしい。なければ自分がやりたいとも思っています!

現代詩文庫『時里二郎詩集』に再録される山尾悠子エセーでは、『名井島』について「コレハ最良質ノ言語SFトシテ読ムコトモデキルカモ、と雑音(ルビ:ノイズ)めく考えも頭の隅をよぎる」との一文が。――現代詩を、時里二郎を発見しよう。

「カモガワGブックスVol.4」に寄稿した、村上春樹のジャンルフィクションへの言及に着目した論考をブログに公開しました。エリスン、シルヴァーバーグ、ル=グィン、ラヴクラフト、マシスン、ジャック・フィニイ……。英語圏のジャンル小説作家からの影響は、やはり検討するに値するテーマなのかも!?air-tale.hateblo.jp/entry/2024

「MONKEY」最新号のどうぶつ小説リスト。こういうのは内なる幼児性を刺激してしまうので、オフラインで(いい意味で子どもっぽく?)あれこれおしゃべりするのに適する気もします。ラッセル・ホーバンがふたりで三冊採られていますね。

ジャン・ジュネのとある本を読了。自分の読書体験のなかでは、最高の一冊と言い切れると思う。これから数十年、こうした書物について思考できますように。

Eiléan Ní Chuilleanáin、大学の紀要みたいなものに掲載された「捕獲」を読みましたがとても面白い…!!

おそらくですが、SFセミナー、遊びに行く予定です。登壇される方、頑張ってください。ひさびさにお会いする方がいましたらよろしくお願いします。

異なるジャンルに手を出しても、現在の自分の関心がミウォシュに収斂していくのではないか、というよろこばしい期待。

四元康祐のシンボルスカ、志村正雄のジョン・バースLost in the Funhouse、筒井正明のヴォネガット『スローターハウス5』など、訳稿があるというなら読みたいものがたくさん。

「文芸ピープル」刊行以降、辛島デヴィッドさんはあの種のジャーナリスティックでinformativeな記事ってどのくらい文芸誌に寄せているのでしょうか…。川上弘美の翻訳について扱ったもののあとに発表されたものがあるとすれば、読めていないことになる。

トーキョーブックガールさんのinstagram見ていると日本文学にも詳しくかつ英語でも多くのポストをされているように見受けられますが、こういう方にもっとフォーマルな場での日本文学紹介の長めの記事とかお願いできれば心強いような気がするのですが…。

イン・イーシェン「鰐の王子さま」(井上彼方、紅坂紫編『結晶するプリズム』)。象徴の散りばめられ方が好ましく、(訳題ともあいまって)ページ数以上の読みごたえを感じさせる寓話的一作として仕上がっている。「剥き卵のようなわたしの心はどこ」という呼応の声に魅力があるとここは言い切りたい。本作にはアラバスターの色を放射する白い鰐が登場するが、白は清浄と同一視されるだけではなく、アルビノのような「異常さ」ともときに重ねられてきたのではないか。つまるところこれは解放の寓話なのだ。

Chester Anderson のThe Butterfly Kid読まれている方います…?ebookのサンプルを読んでいるのですが、飲み物に麻薬を入れるという意味でspikeという語が使われていたりと、スラングめいた言い回しが多ければ通読できるかどうか…。

2019年にreprintされていて、2019年に執筆されたピーター・S・ビーグルの序文がついています。

ジェニー・カッツォーラ「「パーティトーク」(井上彼方、紅坂紫編『結晶するプリズム』)。作品内で提示されるさまざまな境界(人と獣のそれをも含めて)がstaticではなく、ゆらぎ、ゆらめきが感じ取れる点に丁寧さを感じる。こういう作品をもっと長くしたようなものがヤングアダルトのアンソロジーに入っていたらなんだか面白そう。

ヴォンダ・マッキンタイア「火の河」
キャサリン・マクレイン「失踪した男」
ジュディス・メリル編「英国、SFを揺るがす」
ヨゼフ・ネスヴァドバ「忌まわしき雪男の足跡」
キム・スタンリー・ロビンソン「米と塩の歳月」
キム・スタンリー・ロビンソン「ブルー・マーズ」
マーガレット・セントクレア「イドリス・シーブライト選集」
ジェイムズ・サリス「最後のひとこと」
クレイグ・ストリート「血まみれの男」
シオドア・スタージョン「スタージョン短篇全集全巻」
ジュリー・フィリップスによる伝記「ジェイムズ・ティプトリー・Jr」
ジェイムズ・ティプトリー・Jr「世界の壁を上へ」
ロバート・F・ヤング「ヤングの世界」
チェスター・アンダースン「バタフライ・キッド」

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