先日の「片手落ち」という単語を使ってはいけないのか、という疑問から始まって、Political Correctness (PC:政治的正義、政治的妥当性)、所謂、ポリコレに関する本にたどり着き、読んでみた。

本の内容としては、保守派によるPC批判が並べられた章から始まり、それに対する反論、PC論争の当事者の経験談、PC論争を乗り越える発展的な意見といった順に章立てされており、編者自身の文章は無い。

アメリカの事情に詳しくないと分からないような単語には訳者注が入っていて読みやすかった。

PC批判としては、アメリカの大学で差別的な使用を禁止する単語がリスト化されたり、差別を防ぐために多様性を認めるための授業が義務化されたりする中で、本来の古典のカリキュラムがおざなりとなった上、大学にとって最も重要であると考えられる、自由な発言が奪われているといった話が展開される。


アメリカの差別問題――PC(政治的正義)論争をふまえて (翻訳 脇浜義明)
原著 Beyond PC: Toward a Politics of Understanding (Aufderheide, Patricia, ed.)
amzn.asia/d/h8dRHAb

源利文の「環境DNA入門」を読んだ。一般向けに書かれているので、専門知識が無くても読みやすく、次世代シーケンサー(登場から時間が経ったけど、いつまで次世代って言うんだろ?)の威力を感じさせてくれる。

例えば、川に生息している生物を実際に観察することなしに、川の水に含まれるDNAから、どのような生物が生息しているか調査できる。調査の経験が無くても、非常に見つけにくい生物相手でも、一定の手順で水をサンプリングしさえすれば良いわけだ。

本文中でも古DNAの話に触れられているように、DNAの量としては極微量であるため、コンタミネーションには気を遣う必要があるだろう。

サンプリングに関わった人や、その人のペット、食べた物のDNAまで拾ってしまう可能性もある。

犯罪捜査などで使われるようになることは容易に想像されるのだが、その辺の感覚を警察・検察や裁判所がちゃんと理解できるか、また、コントロール用も含め現場のサンプリング時から専門の第三者が入る必要が出てくるのでは無いかなどと思いを巡らせた。

環境DNA入門 ただよう遺伝子は何を語るか (岩波科学ライブラリー) amzn.asia/d/fHY4yC2 @Amazonより

山本紀夫「トウガラシの世界史」を読んだ。

京大農学部から民博に行っただけあって、生物学的な話と民族学的な話が良い感じで融合している。

南米では野生種と栽培種がどちらも利用されているとか、栽培種の特徴と人為選択の関係、世界への伝搬の歴史、各地でのトウガラシ文化・料理などと、話題が豊富で楽しい。

とは言え、生物学的な話はゲノム解析以前の手法なので、現代的に世界のトウガラシのゲノムを解析して、著者の推測に留まるような伝搬の歴史を確かめてみるとか面白そう。(もう、誰かやってそうだけど)

南米から世界に伝搬したのは大航海時代以降で、積極的に利用されたのなんて、せいぜい数百年くらいと思われるのに、料理にトウガラシ無しでは考えられないような国が南米以外でも各地にあるのは面白いね。

伏見とうがらしだって、伝統の京野菜とか言われると平安時代くらいにはありそうなのにw

トウガラシの世界史 - 辛くて熱い「食卓革命」 (中公新書) amzn.asia/d/55I32At @Amazonより

アンケートが話題になっているので、意味のあるアンケート調査をする上で何を気にすべきか参考になる本として、林知己夫の「調査の科学」を紹介します。学生さんでもアンケート調査をしようと思うなら、質問を考える前に、まずは、この本を読みましょうw(そうすれば、安易にSNSでアンケート調査しますとか言って、指導教員を困らせることは無いはず?)

古い本ですが、読みやすいので、1日くらいで読めるんじゃないでしょうか?

林知己夫は統計数理研究所(統数研)という統計を専門とする国立の研究所の所長を務めた統計学者です。統数研の研究は機械学習の理論的研究のようなゴリゴリの数学が多いですが、社会調査についての研究もしています。この本は社会調査の部分を扱っているので、数学は出てこないです。安心してくださいw

SNS上で世論調査に対する不信が話題になりますが、回答者の偏りだとか、質問する側によって回答が偏るのではないかとか、そのような話は、基本的に扱われていたと思います。文系・理系を問わず統計調査に関心がある人におすすめです。

統計調査はランダムサンプリングできなきゃ無意味だと全否定する前に、ぜひ、読んでみてくださいね。

「調査の科学」林知己夫
amzn.asia/d/6ZkaJX9

メジャーの先の引っ掛ける所の金属が微妙に動くのって、押し付ける時でも引っ掛ける時でも正しい長さで測れるようにするためだったんだ!

裏を見たら、押し付ける時は、先の金属の厚み分だけ引っ込むように、ちゃんと溝ができてた。

てっきり、安物だから、ちゃんと固定できてないのかと思ってたよ。

君とは長い付き合いなのに、ずっと、その心配りに気づいてあげられなくてごめんね。

昨晩、工具の本を読んでて、初めて知りました。これって、常識なのかなぁ?

「DIY工具50の極意」西野弘章
amzn.asia/d/631I91X

ゲーム理論で有名な囚人のジレンマで冷戦時の軍拡競争が説明されたのは有名だけど、あれって、その数理的構造を見ることで、軍拡競争の愚かさを露わにすることで、囚人のジレンマから抜け出す方法やロジックを考えるべきだという話として、僕の中では理解していた。でも、いまだに、ゲーム理論で考えれば軍拡するのが合理的みたいな正当化に使われていないかな。

ゲーム理論に対しては、大学の頃に「ゲーム理論―批判的入門」という本で友達と勉強会をして、それから意識が色々と変わった気がする。

複雑な問題をゲーム理論の問題って捉えた瞬間に、説得力のある方法で簡単に判断できてしまうのが最初はすごいと思ったんだけど、要は、色々と考慮すべき面倒な問題を無視する方便としてゲーム理論が使われているってことなんだよね。これはゲーム理論の問題ではなくて、使う側の問題なんだけど。

ということで、本の紹介。翻訳は微妙。とはいえ、世間に出回るのはゲーム理論って楽しい・すごいみたいなのばっかりだから、こういう批判的に学ぶ本は一読の価値があると思う。


「ゲーム理論―批判的入門」
ショーン・P.ハーグリーブズ ヒープ、ヤニス ファロファキス
amzn.asia/d/0H1nYUh

パンダといえば、「パンダの死体はよみがえる」は遠藤さんが講義に来られる時に読んで面白かった記憶がある。昔なんで、あんまり細かく覚えてないけど。

動物の遺体をひたすらに集めて永久保存し、研究に使おうという話を中心に、パンダに限らず動物の遺体と格闘するお話。

遠藤さんといえば有名なパンダの“第七の指”の話も、当然、入っている。

他にも本を出されているんで、これが一番おすすめかどうかは分かんないですが、一応。

「パンダの死体はよみがえる」遠藤秀紀
amzn.asia/d/aYqDkl6

というのか分からないですが、一時期、短めのサイズの辞典を読むのにハマっていたことがありました。

辞書・辞典というと、収載数が多い方が正義とされることも少なく無いですが、短すぎず長すぎず読み通せる分量というのは、精神的に疲れた時や就寝前の読み物としておすすめですw

良くも悪くも盛り上がりが無いので、過度に眠気の到来を邪魔することもないし、物語の登場人物に思いを寄せて悩むというようなこともありません。そうそう、読み終わらないので、次の本を探す手間も無いです。本のテーマや解説の書き振りとの相性や読みきれそうな良い具合の分量というのには個人差があるので、最初は本屋さんなどで中を見ながら選ぶと良いでしょう。

読むと言っても、暗記を目的とするわけでは無いですし、研究するわけでも無いので、用例の隅々まで読むわけでは無いです。

ということで、過去に読んだもので、ぱっと思いついた物の紹介ですw

「語源海」 杉本つとむ amzn.asia/d/2dQyHA5
* 過去から現代に至る用例がいくつも収載されていて、意味の変化を追うのが楽しい
* 前書きの音形の変化の話だけでも目から鱗が落ちる
* 日本語の語源と漢字の字源は別物というのが、よく分かる
* 一番のお勧めで、みんなに買わせてるw

民主主義の起源について言及する投稿を見かけたので、それに関して僕が面白いと思って以前から知人に勧めている本を紹介します。

題名からは数学パズル系の本に見えるかもしれませんが、集団における意思決定の象徴ともいえる選挙やその一手法である多数決がテーマとなっています。内容は歴史の流れに沿いながら、数理的に解説しており、いわゆる"理系"の人にとっても納得しやすいかと思います。数理的と言っても算数パズルレベルの話なので、数学が苦手な人でも楽しめますよ。まぁ、ちょっと読み進めるのが難しいところがあるのは否めないですが、読み飛ばしても特に問題ないです。

つい、理系と書いちゃいましたが、こういう学問があることを知ると、文系・理系という枠組みが無意味なことも分かると思います。

この本を読んでから、僕も自分なりに集団の意思決定手法について考えるようになりました。その話は、また機会があればw

ぜひ、皆さんも頭のトレーニングと思ってパズル感覚で考えてみてはいかがでしょうか?

少なくとも、一読すれば、多数決を金科玉条のごとく扱うことに違和感を覚えてはもらえるのではないかと思います。

「数と正義のパラドクス 頭の痛い数学ミステリー」ジョージ・G・スピロ
amzn.asia/d/h8FV1iv

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