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「ローレンス・ストーンは、イギリス、フランス、ロシアでの3つの革命の極めて重要な共通点を発見した。それはこれらの政治的、イデオロギー的な騒乱の直前に、男性の識字率が50%に達したところであったということである。これは根本的な発見であり、このことによって革命という現象と近代化の達成とを厳密に関係づけることができるとともに、同時にまだ実証されていない労働者階級の役割についての古い仮説を回避することができ、これら3つの革命の場合にそれぞれイデオロギー的内容が異なるという問題を避けることができるのである。これらの例では、大衆の識字化は争乱への道を開き、それぞれの場所での固有の内容を盛り込んだ大衆のイデオロギー的な活性化を可能にしたのだった」449頁

↑ L. Stone (1969) “Literacy and Education in England, 1640-1900,” Past and Present.

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「経済革命は、実際に近代性へ到達するプロセスの総体とつながってはいるが、そのプロセスの最後に出現する<従属的>な変数にすぎないのだ。経済革命は、論理的に、そて歴史的に先立つ政治革命と人口動向上の革命の後に出現する第3段階に過ぎないのである。
 2つの図式が、この著作で提案されている成長についての人類学的で文化的なモデルと経済学的な説明とが鮮明に対立することを示している」445-6頁

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「大衆の識字率と社会的な変容の間に論理的で経験的な関連性を見出すことは容易である。政治的な諸革命は、一般的にいって近代的なイデオロギーにおいて不可欠な要素である読み書きの能力を<男性たち>が獲得した直後に起こっている。人口学的な革命については、とりわけ<女性たち>が識字化されることによって条件づけられているように思われる。これらは当然のずれである。なぜならすべての社会において、私的な文脈であれ、公的な文脈であれ、男性たちは暴力を独占しており、女性たちは子供の出産の実際の管理を行なっているからだ。一般的に、男たちが女たちよりも早く読み書きを習得することによって——アフリカの一夫多妻制の社会における母系的な偏向のケースを除いて——政治革命がわずかながら人口学的な革命、とりわけ出生率の低下に先行することになるというのも当然のことである」444・446頁

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「アフリカの専門家たちによって通常使われる父系制、母系制の概念は、通常、財産の相続の問題(経済的基準)、もしくは社会生活においてそれぞれ父方親族、母方親族が果たす重要性(イデオロギー的基準)に着目した定義に呼応したものになっている。この本で採用した最終的な定義は、父ー子、母ー子の関係の心理的な面での相対的重要性(家族ないの個人間の関係という基準)を評価しようとするもので、より深層のレベルである心理的レベルに呼応するものである。この意味で、アフリカの家族システムは、いくつかの例外を除いて、財産の相続において父系制、母系制のいずれに位置づけられていようが、<普遍的に両義系統的[ambilinéaristique]>であると考えられるのである。
…『父系制』、『母系制』という語の正確な意味を定義するためには、基底的な心理的態度の総体を条件づけるものである家族という集団の全体的な構造から出発する必要があるのである」436頁

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(承前)「子供の方は、一夫多妻制のメカニズムによって複数の女性と子供たちのグループに分散してしまっているため、過大な評価が寄せられてはいるが遠い存在である父に属していると同時に、下位的立場にありながらも実際には夫から自由で身近な存在である母にも属しているのである。…父系制と類別されているすべての一夫多妻システムは、深い心理的な水準では、抑圧された母系的傾向をもっていると考えるべきなのである。また母系制と類別されているすべての一夫多妻システムは、深い心理学的な水準では、抑圧された父系的傾向をもっていると考えるべきなのである。アフリカの家族システムの中心的な特徴は、一夫多妻制であるために、両義的なのである。一夫多妻制であるがゆえに、すべてのシステムが心理的には<両義系統的>なのだ」435頁

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「抑圧された母系的傾向
 一夫多妻制がアフリカの家族に、分裂していると同時にしっかり接合している構造を付与している。妻たちはそれぞれ自分の家屋に子供たちと生活し、その妻たちの家屋の総体がひとつの『所帯』を形成するのである。夫であり父である男性はその間を往き来するためその存在は、支配的であっても不安定であり、中心的ではあるが同時に周縁的でもある存在なのだ。このシステムの逆説は、<女性に下位的ではあるが同時に独立した立場>を提供するということだ。妻たちはそれぞれ自分の夫がもつ複数の妻の一人にすぎないが、自分の家屋では主人であり子供たちの責任者でもある。反対に男性の立場は、優遇されていると同時に周縁的なものとなっている。男性は複数のグループからなる大きな集団の名誉ある首長ではあるが、実のところ女性たちの家屋という小区分からなる構造的に分裂した抽象的な実体にすぎない所帯のなかの生活を具体的に統御することはできない。当面のところ一夫多妻制の唯一の特徴として理解されているこのような構造が、母系原理と父系原理の対立を伴っているということは直ぐに見て取れる」434-5頁→

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「<一夫多妻>の原理が、アフリカ大陸全体に共通する特徴として地球上の他の地域とアフリカを区別しているように思われるのである。…コーランによって4人の妻を持つことが成文化され許されているイスラム諸国ですら、婚姻関係全体における一夫多妻の頻度は一般的にいって2%から4%(最大限の値)である。非アフリカ系世界全体での合法的な一夫多妻率は、婚姻関係全体の0%から4%の間であると考えることができる。アフリカではこの数値がしばしば30%に近い。…家族構造において絶対的に中核的な機能を果たしているこの一夫多妻のメカニズムが、それ自体として家族構造の可能性に或る幅を明らかに創り出しているのである」434頁

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「家族というよりは、イデオロギーとしての親族ヴィジョンから派生した慣例では、アフリカのシステムを父系制と母系制という2つの大きな類型に振り分けてきた。それは満足いくものとは言えない。…父系制/母系制というあまりに単純な二分法だけが、唯一の分類法として使用されているのである。ルシー・メイアーはその総括的な著作である『アフリカの結婚と社会変化』の付録に約90のアフリカの部族のリストを付しているが、そこで彼女が示唆していることは、それらの部族の親族システムが父系的なのか(83%の場合)、母系的なのか(17%の場合)の区別である。このような分類法ではどこにも辿りつくことはできない」433頁

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「あまりに長い期間、人類学は、家族構造という真の基本的形式の分析をないがしろにしながら、親族システムの分類に没頭してきた。…
 エヴァンス=プリチャードが提案したこの[家族関係と系譜学的関係の]重要な区別は…(各個人間の)家族システムの分析を(イデオロギー的)な親族システムと区別することを可能にするものである。この区別の重要性が認められるのが遅きに失したために、人類学は最近まで、イデオロギー・システムとしての親族関係の分析を特権化してきた。…19世紀にすでに、フレデリック・ル=プレイがヨーロッパについて提案した類型学に匹敵するようなアフリカの家族集団についての整合性のある類型学はいまだに存在しないのである」431-2頁

いわゆるeticとemicの区別に相当するのかな?

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「潜在的な母系制
 世代間の関係が権威主義的で兄弟の関係が平等主義的であるロシア家族システムは、共同体家族である同類の中国、インド北部、トスカーナ地方のそれのように厳格な反女性主義である。男性同士の平等と連帯には、一般的に女性の地位が低下するという傾向がみられる。権威主義的で反女性主義的であるこの家族モデルは、成長に適したいくつかの人類学的要素のうちのひとつしか持たないことになる。つまり成長プロセスの長期化に適した親と子供の権威主義的な関係である。
 ところが兄弟間の平等と両性間の不平等が組み合わさった理論的システムに比べて、母系制の顕著な偏向を示しているロシア家族にはこのような傾向は必ずしも見当たらない。このシステムは、父系制・縦型システムとしては、女性の地位が異常に高いのである」378頁

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「人間による生成という『歴史』概念の起源そのものに、権威主義家族構造のなかでももっとも堅固で永続性のある構造をもつだろうユダヤ民族の権威主義家族構造が関与していたことは驚嘆に価する。…
 聖書の権威主義家族は、世代から世代へと受け継がれる相続と血縁の持続を描いている。それは父・息子・孫と続く相続を通して体現される時間の線的な概念を造り出し、繰り返し産出するのである。数学的な意味で連続し、方向性をもっているこの最初の時間概念は、したがって家族と血縁の巨大な系譜の形態を可能とするものである。
 家族の歴史として具現化されたこのような歴史の動きのイメージは、16世紀に自らの似姿をこのような聖書に見つけ、それを我が物としたヨーロッパ北部のプロテスタンティズムによって再発見された。プロテスタンティズムへと改宗した大部分の国々は、権威主義家族の伝統をもち、その一般形態はユダヤ的な家族形態に非常に似ているのである。大きな違いは、ヨーロッパ北部が、ユダヤ的伝統では大いに許されているイトコ同士の結婚に対して、はるかに敵対的であるということである」365頁

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「西ヨーロッパに特徴的な家族タイプを分析することによって、ヨーロッパ大陸のテイクオフをウェーバーの宗教的分類よりもうまく説明することができる。それは権威主義で女性主義、縦型で双系制の人類学システムが持つ根底的な働きによって引き起こされたのである。1300年頃、権威主義家族は、西ヨーロッパ全体の人類学的総体の40%を占めていたともに、北ヨーロッパでは支配的な家族システムであった」363頁

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「18世紀に確認できるスコットランド(権威主義家族構造)とイングランド(絶対核家族)の発達の違いは重要である。それは自然環境から独立して機能する人類学要因の重要さを示すものとなっている。イングランド・システムは、スコットランドやドイツ・モデルほどの活性力はもっていないとしても、教育的な有効性ではヨーロッパ第2位の水準を示しており悪いものではない。このことは、ヨーロッパの近代化において中心的ではないが重要な要素である産業革命を説明するものなのである」358頁

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「このどちらのタイプ[絶対核家族と平等主義核家族]においても両親および母親の権威が、権威主義家族に特徴的に見られる非常に高い水準まで達することはない。いずれも縦型の双系制タイプが示すような強い教育上の力量を発揮することは望めない。核家族型は識字化の発達の中心ではなく、むしろ伝播を受容する地域を形成する」357頁

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「生活水準の向上や平均所得の増大として掲示できない『経済的』でも『物質的』でもないテイクオフ…その非物質的、文化的な成長は、心性の革命のかたちをとって進行する。それはまず識字率の向上として現われる。…次にそれは死亡率と出生率の低下として現われる。身近な生物学的な環境を制御できるようになるのである。第3の段階で成長は、ようやく工業製品の製造による物質的な富の増加として現われる」298頁

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「世界でヨーロッパ以外に権威主義家族構造が伝統的なシステムとして見られるのは、3つの大きな地域に限られているようだ。日本、韓国・朝鮮、そしてイスラエルである。…権威主義家族は<縦型>で<不平等的>であると分類できる。…
 ところで兄弟間の不平等は、ほとんど常にその補足物として比較的高い女性の地位を生み出すことになる。このタイプは双系制で、両性の関係が比較的平等である。なぜなら女性による<相続>が実際にしっかりと受け入れられているからだ。…
 血族家系の理想に不可欠な兄弟間の不平等、男性間の不平等は、実は男性の優位性を前提とする価値体系に呼応しているわけではない。権威主義家族は長男とその弟たち、つまり相続者と非相続者を生み出す。男性に一義的に価値を見出すのではなく、男性たちを格差によって区別するのである。
…日本の家族は両親の双系制の特徴を非常にはっきりと示している。ユダヤ文化はユダヤ性の母系による継承を理想としており、しかも息子がいない場合は娘による財産の相続をしっかりと認めている。バスク文化は、他の権威主義家族にもまして財産の母系による相続を伝統としている。これほど意識的ではないが、ゲルマンの諸家族構造も実際上はそれほど違わない」349-50頁

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「<西欧>の家族構造のほとんどは実際、母系家族と父系家族に同等の価値を見出し、子供の出産において男と女に同等の価値を付与する双系制である。しかし、そこには微妙な差異が存在し、双系制の度合いにも違いがある」346-7頁

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「逆に文化的成長は、人間理性の普遍性に与るものである。識字化は、ある種の人類学的システムによって促進されるとはいえ、人類全体に共通する潜在力の現われであることに変わりはない。政治的な価値がかなり大幅な閉鎖性を互いに見せているのに反して、文化的な領域での交流は、諸文明の間で実に容易に進行するのである。このためにシステム同士が隣接している場合、文化伝播の現象が起こるのである。それも相互作用をおこすシステムの人類学的タイプとは関係なく伝播が発生するのである。
 地理的には隣接しながら、家族システムが異なる2つの地域があるとしよう。そこではイデオロギー的には異なる夢が生きられている。だが文化的な成長は、固有の素質と異なる傾向に従うことになる。しかしそのなかで文化的に恵まれている地域が、文化的な成長において相対的に恵まれていない地域に不可避の影響を与えることになり、隣接しているということだけで大衆の識字化の伝播が促されるのである」324-5頁

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