「かつては『近代化は核家族化を帰結する』と言われていたが、歴史人口学の発達によって少なくとも西欧については16世紀から核家族が一般的だったことが知られ、近代化(産業化)が家族に及ぼす影響を簡潔に定式化する命題は立てにくくなっていた。家族の形態ではなく性質に着目し、同じ核家族でも家族意識の有無を目安に区別できる〈近代家族〉概念の登場は…『近代化は〈近代家族〉を帰結する』という新たな命題を可能にするものだった」20頁

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「〈近代家族〉の特徴を理念型的にとりだすと、次の8点ほどにまとめられよう。…
 (1) 家内領域と公共領域の分離
 (2) 家族成員相互の強い情緒的関係
 (3) 子ども中心主義
 (4) 男は公共領域・女は家内領域という性的分業
 (5) 家族の集団性の強化
 (6) 社交の衰退
 (7) 非親族の排除
 (8) 核家族
 これらの諸特徴のうちで最も基底にあるのは、(1)である。これは、より正確に表現すると、家族と市場(経済学的意味に限定せず、『市民社会』と言いかえてもいいような社会学的概念とする)との分離あるいは同時生成ということである」18-9頁

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「<家族と国家>…
 20世紀になると周知のように[??]、公共性は肥大化した国家に吸い上げられ、前世紀的な公共性は解体する。そして、男性も家庭に埋没する私生活主義(privatism)、さらにはナルシシズム…の時代が到来する。
 誤解してはならないのは、家族は国家の支配から免れた最後の『避難所』や対抗と反撃の拠点などでは決してあり得ず、国家と同時完成した同位対立物だということである。
 …〈近代家族〉は、近代国家と共に、近代国家の助けを借りて完成した」15-7頁

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「どのようなカテゴリーが『差別化』されるかを決定するひとつの、おそらくは最も主要な装置が、われわれがすでに近代化過程におけるその成立を見てきたような家族、…〈近代家族〉である。〈近代家族〉は『市場』(あるいは『市民社会』)の『シャドウ』であり、後者の原則である『平等主義規範』の浸透を家族の壁で遮断する。…
 換言すれば、〈近代家族〉と『市場』のセット、すなわち『近代社会』が二重規範を産み出した。この種の『差別』は、正確に『近代的』現象なのである。
 実際、歴史的には、最初のフェミニズム運動の発生は、〈近代家族〉の誕生と軌を一にしている」14頁

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「フェミニズムでは、『家父長制(patriarchy)』という語を、女性の抑圧と男性支配一般を意味する概念に拡張して用いているが、この概念も人類と共に古いか、少なくとも階級抑圧より本源的であると通常理解されている。…
 しかし、歴史社会学的考察はこの前提に異議を提出する。…女性の抑圧は、少なくともわれわれが思い浮かべるようなものとしては、近代固有の現象なのではないか」13頁

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「マルクス主義フェミニズムは、ちょうど第三世界論に『コペルニクス的転回』をもたらした『従属理論(dependency theory)』と同じ役割を、女性論・家族論において果たしている」11頁

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「近代における性の最大の特徴は、生殖との分離であると言われる。…
 しかしこの文脈でそれ以上に強調されねばならないのは、一見正反対のように見えるが、性の生殖への従属ではなかろうか。…
 性を生殖の道具とみなす心性」9頁

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「ロマンチック・ラブは中世の宮廷恋愛にひとつの起源をもつと言われるが、騎士が愛を捧げる貴婦人と、性関係をもつ妻とは、全く別の存在であった。ビクトリア朝まで時代が下がっても夫婦間の疎遠は相変わらず、夫婦はむしろ各々の同性の友人との間に友愛の情を育んでいた」8頁

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「バダンテールに対するルークスらの反論のように、これ以前の時代にも他の時代でも、母親を含めた大人はしばしば子どもを可愛いと感じ、それなりに大切に世話をしたのではあったが、『母性愛』をこれほどまでに至上の感情として神秘化し、すべての女性に『本能』として強制するようになったのは、やはりこの時代以降だと言ってよかろう。『母』とは異なったかたちではあるが、今日的な『父』もまたこの頃誕生した。一家に対する支配を半ば公的な責務としていた『家父長』に替わって、ときには溺愛に陥りそうな感情をみずから抑制しなくてはならないほどの情緒的な『父』が登場する。『父』は鞭による教育を廃し、かわりに『母』と共に子どもの内面にまで目を届かせる精神的な統御を開始した」6-7頁

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落合恵美子(1989)『近代家族とフェミニズム』[初版]勁草書房

「欧米(とりわけ英米独まで)では、近代家族のリスクの高まりで、近代家族を維持することを諦める人が多数となる社会となった。一方、日本では、リスクがあっても近代家族を維持しようとする人々がまだ多く」659頁

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「自由や平等、自己実現の桎梏であったはずの近代家族のあり方が、生活上、そして、心理的に社会的包摂を保証するものとして人々の目に映るようになる。
 たとえば、性別役割分業規範は、女性の仕事での自己実現を妨げ、家事労働を押しつけるという不公平を生み出す。逆に言えば、このシステムの中に入ってしまえば、つまり、安定した収入のある夫と結婚できれば、仕事をしなくても生活できる保証が得られることになる」657頁

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「『男は仕事、女は家事』という近代家族の規範に沿った家族を形成したくても、それが不可能な人が増えるという現実が出現する。…
 近代家族規範が予定する生活を、経済的に形成・維持できない人々が大量に出現する。これが、社会の構造転換が家族に与える影響の1つの帰結である」656頁

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「家族の消滅論…ベックは、家族をゾンビ・カテゴリーと呼び…ギデンズは貝殻制度…と呼んだ」655頁

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「1970〜80年代日本社会は、『近代家族』の頂点にあったといえよう。(近代化で先行した北西ヨーロッパ、アメリカ社会は、1920〜60年代が近代家族の時代と言うことができる。落合が述べるように、日本の近代家族の時期は『圧縮』されているので、時期は短いにしても、欧米諸国と同等の近代家族が形成されたと考えられる」652頁

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「近代社会の形成とともに欧米で広まったカ家族のあり方を日本では『近代家族』と呼んでいる(欧米ではこちらを『伝統家族』と呼ぶ)。…
 性別役割分業を近代家族の不可欠の特徴とするかは議論の余地がある。…
 …筆者[山田]は、扶養やケアといった生活上の責任と愛情や生き甲斐といった親密性の供給が結合しているところに近代家族の最大の特徴があると判断している(この結合はパーソンズの家族論の中に滑り込んでいたものである」651頁

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「国家と家族が、人々の生活(心理的、経済的)にとって特権的な存在になった…近代社会は、人々が1つの『国家』と『家族』の一員であり、かつその関係が選択不可能、解消困難であることを前提として、さまざまな社会制度が組み立てられている」650頁

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山田昌弘「日本家族のこれから——社会の構造転換が日本家族に与えたインパクト」649-62頁

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「同棲における関係持続性というテーマは実証研究では定番のものとなっている。アメリカでは、同棲経験者がその後結婚した際の離婚率の高さが研究者の関心を集めた…現在のところはセレクション効果であるという見方が有力である。つまり、自由な関係性への志向性の度合いが同じレベルにある人たちを比べた場合、同棲経験それ自体がその後の結婚の解消を促進する、という証拠はない、ということである。
 …L. バンパスとH.-H. ルーによれば、アメリカでも親が同棲関係にある子どもの割合は増えており、かつそのために子どもにとっては家族関係が不安定化していることが実証されている」580頁

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「経験的な証拠はランダムマッチングの普及を示唆していない。多くの国では学歴同類婚がいまだに広範に見られる…
 …趣味行動と恋愛行動は、いずれも『自然で自発的な選好の結果』であると誤認されやすいが、その実好みが構造化されている可能性が高いという点で共通点がある。
 …実証研究の成果からは、排他的関係性における同類結合が減少しているというはっきりとした証拠は出てきていない。アメリカでは、恋愛関係、同棲、結婚という関係性の移行に沿ってパートナーとの同類性が増していくという『選別仮説(winnowing hypothesis)』が検証されている」578-9頁

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