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「『世界の幼少期』は、世界規模での識字率の歴史と現状を扱っているが、これは発展というものをもっぱら経済的進歩として捉えようとする通常の把握に対して、識字化こそが発展の原動力であるとの主張」20-1頁

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「トッドがその人類学の体系を本格的に世に問うたのは、1983年の『第三惑星』においてである。そこで彼は全世界に存在する8つの家族型を網羅して、その分布図を提示し、家族型とイデオロギーとの密接な関連を主張した。…果してこの著作は、『決定論』との激しい非難にさらされることになる」19頁

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「アメリカ型の家族(絶対核家族)も日本型の家族(直系家族)も、伝統的な農民の家族のタイプであって、さしあたり通時的な前後関係はないのである(さしあたり、というのは、最近トッドが始めた、家族制度の変遷の通時的研究では、絶対核家族が最も古い形態であるという、逆説的な結果が出ているらしいからである)。ただ近代性というものは、アングロサクソンによって形成された側面が最も強いため、絶対核家族的な人間関係(個人の独立性、自由主義)が近代的人間関係を代表するように見え、また家族が一つの経営体を構成しなくなった現代の都市型サラリーマン社会では、3世代同居の直系家族型の家族構造よりは、核家族の方が優勢になるという事情もあるため、ここに歴史的進化を見たがる傾向が生じたと考えられよう」17頁

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「ヨーロッパと日本は、ユーラシア大陸の東西両極端に位置するが故に、この大陸の大部分に広がっていった父系共同体家族への転換を免れたという共通点を持つということなのである。ヨーロッパと日本はこのようにして、世界史の観点からすれば周縁的であるという点で共通している」3頁

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「日本の直系家族の同類は、フランス南部、ドイツ、スウェーデン、スペイン北部、ないしスコットランドに数多く存在する」1頁

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Todd, Emmanuel et al. (2001=2001) 『世界像革命——家族人類学の挑戦』藤原書店

「『ナショナリズム復活仮説』が想定しているような能動的姿勢の登場は、さまざまの証拠と矛盾する点があまりにも多い。われわれの理解する『新中間大衆』は、私生活中心ということを含んで受身の政治的反応を示す性格をもっている。…攻撃的なナショナリズム、狂熱的な伝統主義は、彼らにとって最も縁遠いものであろうと思われる」248頁

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「急進主義が挫折したさらに根本的な原因は、新中間大衆そのものの中にあった。…新中間大衆を支えているのはまさしく産業化であり、しかも行政化によって補強された戦後型産業化である。彼らの享受している『豊かさ』は単に所得水準の上昇ばかりでなく、彼らの生活の安定を保障し彼らの働く産業を保護する各種の制度や措置によって支えられている。彼らの要求に反応しつつそれらの制度や措置を調整し存続させているのは実は行政であって、新中間大衆を『亜有産化』させているのは、行政的『温情主義(パターナリズム)』である。…新中間大衆は、行政を批判するものの、自ら行政を作り出している。新中間大衆は自らの中に矛盾を含んだ存在である。
 この意味で、新中間大衆は、近代社会の古典的理念としして描かれてきた『市民』ではない。…新中間大衆は、行政依存的であって自立的ではなく、私生活中心的であって社会指向的ではない。クリストファー・ラッシュの表現を借りれば、そこには『新しい温情主義(ニュー・パターナリズム)』への依存と『自己愛志向(ナーシシズム)』との混在がある。新中間大衆はある意味で『市民』とは裏返しの存在ですらある」234-5頁

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「『批判性』が、新中間大衆の政治行動の第3の特徴を構成し、かつての中流階級との大きなちがいを生み出している。中流階級は体制の管理者階級であり、とくに産業社会を支える『手段的』価値観の自覚的な担い手であった。しかし現在の新中間大衆は、従業上の立場からいえば必ずしも管理者ではない。さらに価値観の点でいえば…『手段的価値』から…『即時的価値』に傾きつつあって、少なくとも産業社会を支える新しい文化的リーダーとなることはありそうにもない。新中間大衆は、産業社会の受動的な受益者ではあっても、能動的な推進者ではない。
 新中間大衆は、『豊かさ』を享受する一方で、それを達成した現在の産業社会、さらにそれを支えた近代科学に対して懐疑の気持ちを抱き始めている。社会のさまざまな面で進行する組織の複雑化に対して不満をもち、組織の上層で管理にあたる行政エリートに対する反感を抱く傾向もみえる。要するに、産業社会の構造は明らかに即時的価値の要求にはそぐわないのである。行政エリートはまさしく『手段的価値』を代表する存在であり、このような潜在的不満が向けられるべき対象である。…新中間大衆のもつ批判的性格は…社会主義の対資本主義批判よりもさらに根本的な問題にかかわっており、産業化を支えてきた手段的合理性そのものに向けられている」232頁

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「新中間大衆は、かつての階級システムが『非構造化』した結果生まれてきた。ちょうどそれと同じように、先進産業諸国の政治システムも非構造化しつつあるといえるだろう。
 このようなイデオロギー後退の背景の下で大きな決定要因となるのは、新中間大衆固有の特性であるが、実はその特性は、『保身性』と『批判性』という2つの相反する面をもっている。かくて新中間大衆政治の第2の特徴は、『保身性』の表面化である。…新中間大衆は、いずれも何らかの形の既得権益に関わっており、失うべき何物もないという無産者の状態にはもはやない。その意味で彼らは『亜有産者』であり、大繁栄期に成立した体制の側に立っている。彼らの願うのは、現状維持であって革命ではない。
…しかし他方、彼らの保守党支持も強くはない。伝統への愛着を媒介としたイデオロギー的忠誠心は次第に薄らいで、既得権益への関心が最大の理由となる。…新中間大衆は保守化しているのではなく保身化しているにすぎない」229-30頁

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「われわれのいう『新中間大衆』は、これまでいわれてきた意味での中流階級ではない。それは伝統的な意味の労働者や農民の大きな部分を含んでさらに拡大しようとしている、人口の巨大な中央部分である。その動向は、中流階級のそれからは類推できないし、労働者階級や農民のそれからも類推できない。その動向は、明らかに複数の要因を含み、それらの中に相矛盾するものもある。
 新中間大衆の登場の生み出す第1の明瞭な帰結は、階級イデオロギーに基く政治の衰退である」226-7頁

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「かつての中流階級は、次第にホワイトカラーがその主体となるような形に変化したが、そのホワイトカラー層の拡大と共に中流階級の輪郭は徐々に溶解して、ブルーカラーや農民と混り合っていく傾向を示している。その中であらためて析出してくるのが行政的エリートである。しかし行政的エリートは、かつての中流階級に比べて範囲が狭く、世襲的権威・文化的威信などての点で後退し、一般的な正統性の点で力をもたない。…管理的役割と文化的指導力を併せもっていたかつてのような中流階級はもはや存在していない」197-8頁

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「日本SSM調査とそれに基く研究論文は、さまざまの貴重な資料を提供しているが、全体としてわれわれの『階層非構造化仮説』を支持しているように思われる。とくに、自分自身を下層とも上層とも判定しかねる階層非斉合型の人々が、少なくとも50%以上存在することがクラスター分析によって示されているのは興味深い。…日本社会の中間部分を占めているこれらの厖大な人々は、従来の分析概念ではとらえきれない。彼らは、一元的な階層尺度上の中位者ではないという意味で中流階級ではないし、また今田・原論文も説明しているように、ホワイトカラーだけでなくブルーカラー、農民、自営業主が多く含まれている。それは、構成からみてほとんど『大衆』そのものである。しかし同時にそれは、かつての大衆社会論が主張したような、上位者・指導者としてのエリートに対立する下位者・追随者としての『大衆』ではない。このようなすべての意味を含めて、この厖大な層を『新中間大衆(ニュー・ミドルマス)』と呼ぶことにしたい」194頁

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「日本社会でいわば中間に位置している50%の人々については、階層の非構造化が生じている。別な角度からいえば、すべての次元で中位を占めるような階層は日本では存在していないのであり、階層構造化は少なくとも日本社会の中間部分で崩れているのである。…今田・原のクラスター分析について、統計技術的な批判の余地はあるだろうが、その結論が『階層非構造化』の方向を示唆していることは明らかであろう」190-1頁

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「戦後の先進産業社会に生じつつあるのは、各次元での階層化の非整合化、非構造化というところにある。より具体的にいえば、かつて全次元にわたって下流と明確に区別されていた『中流階級』が輪郭を失っている。…伝統的な意味での中流階級の輪郭は消え去りつつあって、階層的に構造化されない厖大な大衆が歴史の舞台に登場してきたようにみえる。今後の主役の役割を占めるのは、おそらくこの厖大な大衆であろう」188頁

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「経済的次元での『行政化』、政治的次元での『平等化』、文化的次元での『反ブルジョア化』は、純粋の市場経済ならば生み出したはずのダイナミックスをそれぞれの仕方でおし曲げようとする。これらの傾向はいずれも、資本家階層を中核とする上流階級の優位を危くする可能性を含んでおり、資本主義社会の階層構造には明らかに不安定性が含まれていた。…シュムペーターやダニエル・ベルも、各次元間の跛行状態に明らかに危険を読みとっている。しかしそのような不安定性は、これまで必ずしも致命的な形で顕在化していない。それはなぜだろうか。
 私は、その1つの大きな理由が、中間階級の働きにあったと思う」179-80頁

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「現在の先進産業社会では概して構造化のメカニズムが崩れつつあるように思われる。そこから生まれてくるのは、いわゆる『中間階級』についてはその崩壊であり、ふつういう意味での『新中間層』についてはその輪郭の溶解であり、そして…『新中間大衆(new middle mass)』の登場なのである」172頁

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「構造化が強い場合の1つの典型が、『階級』、とくにマルクス主義的な意味での『階級』である。私なりに定義すると、

  階級とは、事実的構造化が強力に作用し、とくに各層間の不連続性が顕著で、2層ないし3層に社会が大別されている階層化状況をさす。

 『階級』は階層構造化の有力な例ではあるが、そのすべての場合をつくすものではない。すべての次元の階層化が整合的であって、しかも階層館の関係が連続的流動的であることはありうる。社会的流動性(social mobility)の高い社会が構造化の強い社会であることは可能であり、流動化と非構造化とは同じではない」171頁

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