Todd, Emmanuel, 「はじめに」1-3頁
「アメリカ型の家族(絶対核家族)も日本型の家族(直系家族)も、伝統的な農民の家族のタイプであって、さしあたり通時的な前後関係はないのである(さしあたり、というのは、最近トッドが始めた、家族制度の変遷の通時的研究では、絶対核家族が最も古い形態であるという、逆説的な結果が出ているらしいからである)。ただ近代性というものは、アングロサクソンによって形成された側面が最も強いため、絶対核家族的な人間関係(個人の独立性、自由主義)が近代的人間関係を代表するように見え、また家族が一つの経営体を構成しなくなった現代の都市型サラリーマン社会では、3世代同居の直系家族型の家族構造よりは、核家族の方が優勢になるという事情もあるため、ここに歴史的進化を見たがる傾向が生じたと考えられよう」17頁
「トッドによるプロテスタント像の転倒…形成期の資本主義の精神を体現するイデオロギーという、ウェーバーが確立したイメージに真っ向から対立して、トッドは、プロテスタンティズムとは何よりも、直系家族地域に群立する小貴族たちのイデオロギーであると言う。その救霊予定説は絶対的な神の意志と霊の救済の不平等を内容とするものであり、権威と不平等の価値観に根ざすものだからである。それゆえこれは直系家族地域に広がったが、自由と平等の価値観に立脚する平等主義核家族地域には頑として受け入れられなかった。当時のカトリック教は、トリエント宗教会議によって、救済の平等と人間の自由意志の観念に基づいて再編成された、自由と平等の価値に立脚するイデオロギーであった」44頁
「日本の直系家族の同類は、フランス南部、ドイツ、スウェーデン、スペイン北部、ないしスコットランドに数多く存在する」1頁