池上嘉彦『意味の世界 現代言語学から視る [改版]』(NHK出版、1978-2024)、読了。
「青木屋」と「ブルー・ツリー」では、表現しているものが違う……。そんな序章から、「言葉」と「意味」の世界を眺めていく。
日本語をメインとした豊富な用例で、「意味の類似性」や「意味の曖昧さ」、「言語と文化・思考」などさまざまな切口で分析している。
個人的に面白かったのは、第7章「センス・ナンセンス」で、「詩語とは何か、詩とは何か」に触れているところ。〈詩的表現における言葉遣いは、何らかの形で基準からのずれを示すことになる〉という見識は、俳句創作者としても実感を覚えるところだった。
ユーモアも程よく効いていて、大変興味深く読んだ。
#読書
三村純也『句集 高天』(朔出版、2024)、読了。
淡白ながら品の良さが伝わる句集。並列の句が佳い。現代語への挑戦もある。
貝寄風や住吉に海遠くなり 三村純也
一の滝高く二の滝広くあり
曲がるたび路地暗くなる秋の暮
動く看板光る看板十二月
はじめから傾いてゐる水中花
葉桜や箸は先より古びゆく
羽ばたいて走りて鳴いて鳰うらら
昃りつつ暮れつつ石蕗の花明かり
葛の葉の車窓に迫りひるがへる
自由席乗り継ぐ旅の春めきぬ
舞ひ終へてそのまま忘れ扇かな
間引菜といふトリアージされしもの
岡田一実第5句集『醒睡』読書会、オンラインで期間限定でアーカイブもご覧いただけます!
日時は2025年1月19日(日)14時~17時!
パネリストは相子智恵さん、福田若之さん、堀田季何さん、若林哲哉さん!
参加費は2,000円。
是非、ご参加ください!
お申し込みは下記リンク
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSfmdYT6dg9rfq1bo3OdYEbxqkzmFSW2VmyaNekjEsHshZD5Lw/viewform
西村義樹・野矢茂樹著『言語学の教室 哲学者と学ぶ認知言語学』(中央公論新社、2013)、読了。
認知言語学者の西村が哲学者の野矢に認知言語学について講義する対談形式の本。
西村の出す用例も豊かだが、野矢の要約力と批判力が極めてシャープ。
白眉は第4回「『死なれた』のか『死なせた』のか――使役構文の家族的類似性」と第5回「『村上春樹を読んでいる』――メトニミーをどう捉えるか」。
「使役」とは「因果」。「太郎が窓を開けた」は「太郎が窓に働きかけて(原因事象)、その結果窓が開く(結果事象)」こと。
「赤(い)」にあたる語はいろいろな言語にあるが、どの言語でも共通にその語で意味される赤さの範囲があり、それを「焦点色」と呼ぶ。「焦点色」は人間に共通している。
ラネカーによると、人間には「参照点能力」が備わっており、「メトニミー(換喩)」はその能力の現れ。「村上春樹を読んでいる」と言う場合は、村上春樹という人物が「参照点」で、彼の作品が「標的(ターゲット)」。などなど、自然言語の不思議さに立ち会える。
とても面白かったです!
#読書
岡田一実第5句集『醒睡』読書会を開催します!
【日時】
2025年1月19日(日)14時~17時
(オンライン・期間限定でアーカイブ視聴可)
【パネリスト】※敬称略・50音順
相子智恵、福田若之、堀田季何、若林哲哉
【参加費】
2000円(一律)
【参加申し込みフォーム】
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSfmdYT6dg9rfq1bo3OdYEbxqkzmFSW2VmyaNekjEsHshZD5Lw/viewform
俳人・岡田一実。俳句とか考えごととか。美味しかった話とか、読んだ本の記録とか、香水(主に量り売り)とか、旅のこととかいろいろ揺らぎつつ。幻聴があり、人生はだいたい徐行。リブ返しはちょっと苦手。体調によっては返せません。
HAIKU,for its own sake. she/they
句集に『境界ーborderー』(2014)、『新装丁版 小鳥』(2015)、『記憶における沼とその他の在処』(2018) 、『光聴』(2021)、『醒睡』(2024)。単著に『篠原梵の百句』(2024)。