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『演劇入門』は私の「お話作り」のバイブルですね。
長いお話を作る前には毎回読み直しているんですが、演劇の舞台作り・台詞作りをエンタメ小説に適用する際の変更点もすこしわかってきて、演劇ほどの視覚的効果をエンタメ小説は有していないところがキーですね。
エンタメ小説では、舞台を言葉で説明せざるを得ない。わかりやすさのためには美しくない説明台詞も使わざるを得ない。だからと言って諦めるのではなく、台詞に役を割り振っていく。感情のため、状況の説明のため、物語の進行のため、単なるユーモアのため……。
そして、一連の会話の中でそれぞれの役をフュージョンさせる。登場人物に感情を惹起させつつそれ自体が自ずと次の状況を導くように、だとか、ユーモアで読者の認知を緩くしたところに状況説明を差し込む、だとか。
いま書いている原稿は、エンタメ小説のためで、きちんとしたエンタメ小説を書くには、私が好き勝手に書いていた二次創作よりもきちんと読者の認知に寄り添って台詞を増やしていかないといけないっぽくて、そのための台詞作り・会話作りの手法を日々考えています。

amazon.co.jp/演劇入門-講談社現代新書-平田オリ

『777』(伊坂幸太郎)

伊坂幸太郎はエンタメを書かせたらきっちり及第点を出してくれる。プロのエンタメ作家。
こわい男から逃げようとする記憶力抜群の女を、不運な殺し屋がなんやかんやあって助けるハメになってしまう密室エンタメ。伊坂は殺しのアクションを描けば軽快で、殺しのハウツーにはロジックもあり、読者が忘れた頃に姿を現すお手本のようなミステリも仕掛けられる。
映画にすると二時間に収まるし、映像としても見どころがあるだろう、こういう真っ直ぐなエンタメを読むとひたすら勉強になる。
最も勉強になったのは舞台選び。密室になったのは二十階建ての高級ホテルなのだが、高級ホテルだけあって空間にバリエーションがある。密室モノでも手札をシンプルにする必要は全くなくて、物語の要求に応じて増やしていいんだ。そういう発見があった。
数多いる登場人物の使い方も卓越している。同じ目的を有する複数の人物は要素が共通する一つのチームにまとめてしまって、読者の認知の負荷を減らしている。で、ミステリのタネはその認知の隙間に差し込んでおく。異なるチームはしっかり毛色を変えておく。重要な登場人物は一気に出し切ってしまう。重要じゃなくなったらとっとと退場頂く。見事。
amazon.co.jp/777-トリプルセブン-伊坂-幸太

『生成AI 真の勝者』(島津翔)

2024年春前後の生成AIを巡る状況を概観するには楽な一冊かしら。どの企業が誰と組んでいてどこに投資していて……という相関図を頭に描くのに使うイメージ。ラピダス社長の小池淳義氏と『半導体戦争』のクリス・ミラー氏のインタビューは必読。
ところで、フェイスブックのメタ社が開発中の生成AIであるMTIAについて「同社は、MTIAをフェイスブックやインスタグラムなどの既存アプリのコンテンツ・広告表示に利用するほか……」との記述があって、地球の限りある資源が詐欺まがいの広告へと消えていく様子が目に浮かんだ。
amazon.co.jp/生成AI-真の勝者-島津-翔/dp

『Think Fast, Talk Smart』(マット・エイブラハムズ)

会話を有意義にするための一冊。コミュニケーションのためには相手を「聴く」ことが大事だと聞かされてきた。だが、「聴く」ことが何を意味するか語られることは少なかった。本書はその「聴く」に紙幅を割いたことが特徴だ。
「聴く」とは何か。一言で言えば、相手のニーズを汲み取ることだ。この会話に何を求めているのか、どんな会話がされたら嬉しいのか。それを相手の様子から探すことである。
ただ、注意しなければならないのは、会話とは正解を探すゲームではないということだ。ニーズと正解の違いは何か? 前者は相手を思いやった言い方であり、後者は自分の満足のためのものである。会話は「聴く」行為であり、相手のためのものであり、その結果として返礼を得られる。
本書はさらに踏み込み、互いの「聴く」を導く構成まで説く。六のシチュエーションが例示されていたが、一つだけ覚えておきたい。
「何」ー「それが何」ー「それで何」の構成。まずトピックを提示し、続いて説明し、最後にそのトピックによってどんな変化が得られるか、を示す型だ。

ほら、この感想もそうなっているでしょう?
amazon.co.jp/Think-Fast-Talk-S

『Continuum』(Nik Bärtsch)

スイスのピアニストのNik Bärtsch(ニック・ベルチュ)の代表的な一枚。面白い! ミニマルミュージック的なリフレインが多いのだけれど、そこから徐々に展開していく感じが確かにジャズっぽさもある。他のアルバムも聴きたくなった。

私はシンプルで、白い服は基本的に買わない。ワイシャツも色付き。本当に必要なときだけ白。

『音と脳 あなたの身体・思考・感情を動かす聴覚』(ニーナ・クラウス)

正直、思ってたんと違ったかな。脳のはたらきそのものに割かれる紙幅が多く、期待していた思考・感情(というより、音によって形成される「社会」)は少なかった。複数の被験者の間でリズムを揃えると被験者の間に絆が生まれるという実験結果が一番記憶に残った。そういうのをもっと読みたかったが。

『Molde Jazz Festival 1972』(Keith Jarett)

長めのインプロ2曲のピアノソロ。まだピアノソロを存分に楽しむのは難しいな。両手がどう動いてピアノが演奏されているのかもうちょっと想像できるようになるといいのかも。

『会社四季報プロ500』
眺めましたといった感。四季報本体はスルーでこっちだけ読めばいいかな。

『勉強の哲学 来るべきバカのために』(千葉雅也)

頭の体操的な読書。『センスの哲学』で千葉雅也にハマったので。文庫書き下ろしの補章で提示された「制作の哲学」は『センスの~』へと繋がる思想を感じた。
内容自体に新しい発見はあまりなかったというか、お勉強できた頭でっかちクンであるところの私は割とこういうこと無意識でやってたな~と感じた。しかし、本書の意義はその無意識を丁寧に腑分けしたところだろう。自分がなにをしていたのかを言葉にしてくれると気持ちいい。ノリが合った。
amzn.to/3KYA191

『Live - A Friday Night in Tokyo』(Platina Jazz)

アニメソングのジャズアレンジ。「魂のルフラン」のサビの入りが秀逸。

『Tristeza on Piano』(Oscar Peterson)

「Fly Me to the Moon」目当てにセレクトした一枚だったが、ここしばらくで屈指の興味深い音楽体験となった。この一枚はオスカー・ピーターソンのアルバムで評判が高い方ではないようなのだが、その理由もなんとなく感じられた。彼の演奏の中のどこか聴いたことあるフレーズが頻出した。それこそ目当ての「Fly Me to the Moon」もどこかで聴いたことある感があるのだ。が、であるがゆえに、彼らしさを感じてしまうのも事実。一方で、例えば名盤とされる『We Get Requests』や『Night Train』はどれとも似ていない。そういう聞き比べ的な楽しさを感じられた。

『青春ブタ野郎はロジカルウィッチの夢を見ない』(鴨志田一)

読みました。中盤から終盤に向かうに従ってしっかりスパートを掛けて登場人物らの心理を盛り上げていく。記念写真のくだりは流石。うまくいった!→かと思いきや~の流れが絶妙。個人的にはもっと書き込みたくなったのだが、これくらいの密度でええんかなあ。ただ、土地を毎回紹介してるのは温度感を出すのに上手いな。やろうと思った。
amzn.to/3RA0ZYb

『青春ブタ野郎はプチデビル後輩の夢を見ない』(鴨志田一)

再読。似たジャンルの小説を書いてる最中に読むと「こういう書き方すればいいのね~」的な読み方になるが、それでも十分に楽しい読書。私は登場人物の外見をさりげなく書き込むのが苦手(二次創作では必要がなくて育っていないスキルだから)なのだが、さりげなくてもいいというか、ジャンルの約束に則るならむしろ堂々と書いた方がいいっぽい。というのが今回の学び。
amazon.co.jp/青春ブタ野郎はプチデビル後輩の夢を

ブログにまとめました。

はてなブログに投稿しました
240622 中年男性と年下女性のセックスを仕事で読むことについて - 箱庭療法記 yobitz.hatenablog.com/entry/20

あと、スバルの手をリリアが握るシーン、ヒナノへの声援のシーンで普通に涙がこぼれました。

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『劇場版  ポールプリンセス!!』(監督:江副仁美)

3回目。3回目ともなるとダンスそのものへの解像度も上がって、各ダンサーの演技が表している各人のキャラクターが感じられるようになってきた。特に見比べて興味深かったのは、ミオとユカリ様。確かに二人のトリックには共通するものも含まれていた。一方で、ヒナノ他三人はエルダンジュとは異なるトリックで独自性を演出していた。思うに、ミオ→エルダンジュの憧れを、エルダンジュのトリックを採り入れることで表現していたのではないだろうか。逆に、他三人にとってエルダンジュはライバルである故に独自性、と。面白かったです。

『Torio (Live Sendai, Nihon '86)』(Keith Jarett)

トリオだがキース・ジャレットのピアノを聴かせるための一枚か。ベースとドラムがピアノに奉仕している感がある。「You and the Night and the Music」がノリノリでこちらもノってくる。

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