有馬アートナイト、有馬温泉界隈のあちこちにインスタレーションなどが置かれていたものですが、イベントの白眉となっていたのは、中島麦氏と岡本啓氏によるARプロジェクトでして、専用アプリをDLし、街中の特定の場所でスマホのカメラをかざすと両氏の作品が見られる、というもの(画像参照)。中島氏も岡本氏も、関西の中堅作家の中でもトップクラスのカラリストであり、色彩をいっさいの物質性なしに現出させたいというカラリスト永遠の夢をAR技術を使って叶えようとしたと言えるのですが、肝心のアプリの具合が激悪く、これじゃあ夢の可能性の一端が示されたにとどまるのでは……と思うやらなんやら 有馬アートナイトの方は(コロナ禍もあって?)翌年以降は開催されてませんが、今回の「ひかりの森〜夜の芸術散歩〜」はこの件もあってか? テクノロジー的な冒険はあまりなさそうですね
神戸・六甲山の夜間イベント「ひかりの森~夜の芸術散歩~」自然の中で楽しむ光のアート作品 https://www.fashion-press.net/news/108459
先月から六甲山上のいろいろな施設で始まっている(〜11.23)六甲ミーツアートですが、その会場群のうち、ROKKO森の音ミュージアムと六甲高山植物園を夜間開場させてアートイベントが開催されるそうで。9.23〜11.23、出展作家:高橋匡太、赤坂有芽。個人的には2020年に──六甲山上からロープウェイで降りた先にある──有馬温泉で開催された有馬アートナイトのことが思い出され
阪神百貨店梅田店ハローカルチャーで開催中のイセ川ヤスタカ「BUSTAR BULLET」展。
ラノベやソシャゲの挿絵をはじめ、近年はフィギュアやガレージキットの大手ベンダーなコトブキヤとのコラボで知られるイセ川ヤスタカ氏の個展。今回は現在そのコトブキヤが美少女×メカ×フィギュアとして展開しているメガミデバイスなるコンテンツの関連イラストを中心に、近年の氏の画業を紹介するという構成。かような「ド真ん中」の絵柄が百貨店でなかなかな規模で取り上げられるというのも、なかなか珍しいのではないでしょうか。美少女×メカというわけで、等身大以上の巨大銃砲を抱えた女の子キャラも描かれており、艦娘にKOGの艤装をくっつけた同人誌とか描いてはった頃からいい意味で変わってない
イセ川氏、もともとは京都市立芸術大学で油画を専攻し、そこからちょっと現代美術界隈に出入りしつつ、上述のようなキャリアパスを経て現在に至っているわけですが、京都市芸において集合的に遂行されていた(らしい)ペインタリーなものからのオタク文化への解析的なアプローチを活かしたのか捨てたのか、その後は「絵師」としての相貌を強めて現在に至っている。逆に現代アートの側から見たとき、イセ川氏のような「絵師」的な絵柄やメチエは現在に至るまで導入され損なっている──というか、明らかに(“アーバン”や“ストリート”と雑に呼びならわされているようなものによって)抑圧されている──ことが見て取れることから考えると、氏が本格的な絵師の方へ向かっていったことは仕方ない側面もありますし(それで一定の成功を収めているからすごいのですが)、かかるキャリアパスによって、依然として現在のキャラクターアートにとってのミッシングリンクであることをやめていないわけでして。12日まで
中島氏の「シルバー」が「銀」と異なるものとしてあるのは、日本画における銀箔との違いを念頭に置くとわかりやすいかもしれません。(中世〜)近世の日本の絵において銀箔は記号的な空間における虚空を意味していたのですが、中島氏のシルバーは銀箔が持つかかる意味的な機能を横目に見つつ、しかし銀箔≠(アクリル絵具における)シルバー、という唯物的な事実性を強調することで、日本の絵画史にも(間接的にせよ)コミットしようとしている──江戸琳派の画家な酒井抱一が《夏秋草図屏風》(1822、画像参照)において風に吹き飛ぶ葉っぱをその銀箔の上に描きこんだことから日本画の近代が始まったとする横田忠司(1945〜99)の所説と照らし合わせる必要があるでしょう──。中島氏が、自身の画業でこれまで前景化してこなかった歴史的パースペクティブをもかような形で視野に入れようとしていることに、改めて瞠目したのでした。11日まで
髙島屋大阪店ギャラリーNEXTで開催中の中島麦「SILVER painting 2023」展。近年はアクリル絵具を直接支持体に流して描いた絵画を多く手がけている中島麦氏ですが、昨年からシルバーを用いることが多くなったそうで、全て今年に入ってからの新作で固めた今回の個展でもシルバーが様々な形でアクセントを与えた絵画が大小十数点出展されています。
金属色を使う理由は、光を受け反射する表面(図)としての色と、非色彩・虚空として背景(地)の両方を併せ持ち、色材の粒子が独特の表情を作り出す「シルバー」に、新しい方向性と大きな可能性を見出しているからだ(←ステイトメントより)とのことで、色彩でも非色彩でもある──そのことを色材という唯物的な位相において見出しているところに、画家としての中島氏の資質を見出すことができる──シルバーを新たに導入することで、カラリストとしての自身の画業に新たなマイルストーンを置いてみせたと、さしあたっては言えるでしょう。
「Proof of X」展、上述したエキソニモの圧勝(←何にやねん)ぶりが印象的でしたが、もうひとつオモロかったのがRhea Myersの《Is Art》。ディスプレイ上に「This token is art」とだけ表示されていたのですが、
「Is Art (Token)」は、アーティストが持つ指名権、つまり何かをアートと名付ける力を、アート作品の所有者に委任する作品です。アートか非アートかという主張は、プロックチェーンの力によって担保、保証されます(←ステイトメントより)というもので、「指名権」を購入して何かをアートと指名すると、それがブロックチェーン上に記載されることになるのだとか。「芸術とは何か」という問いを「何が芸術か」に超転換させたデュシャンの衣鉢を継ぎつつ、かかる自己言及的≒超越論的問いの起源としてのカントに始まる諸問題をブロックチェーンにあえて(?)丸投げしてみせたことで、カント〜デュシャン〜ブロックチェーンという謎の系譜学を(捏)造ったことになるわけで、これもなかなかヤバい。
いささか旧聞に属する話ですが、
9月1〜3日に大阪国際会議場で行なわれたart stage OSAKAで、NFTの基幹技術であるブロックチェーンを用いたメディアアートのグループ展「Proof of X」が開催されていました。「用いた」といっても、ストレートに用いたというより──それはNFTアートというパッケージで別のグループ展にうんざりするほど出てました──ひと捻り加えた作品が多かったのですが、その中でもエキソニモの出展作品《Proof of Non-Existence》がクリティカル過ぎ。ステイトメントの冒頭の一節「100%オフチェーンの作品を作りたいと思った(つまり“普通の作品”とも言えるが)」の時点で爆笑不可避だったわけですが、出展されていたのはシルクスクリーンの原版で、実際のNFTアートのように複製することもできる。しかも念の入ったことに、この内容をPCにプログラミングすると「「ブロックチェーン上での非存在」を証明すること」ができてしまうそうで、こんなんズルいわー(←褒め言葉)
北辻良央氏の(近年の)油絵に空目 <RN
QT: https://misskey.io/notes/9jgf9n0u69 [参照]
日本画家・福田平八郎の大規模回顧展が大阪中之島美術館で、写実に近代的な感覚を吹き込んだ優品が一堂に https://www.fashion-press.net/news/108552
2024.3.9〜5.6。福田平八郎(1892〜1974)の回顧展、関西では17年ぶりとなるそうで。大阪中之島美術館はみんな大好き《漣》を所蔵してますから、会場としてはうってつけでしょう。さて……
水都大阪・中之島の水辺をのぞむ「Art Beat Cafe NAKANOSHIMA」2023年10月12日(木)オープン予定 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000115665.html
朝日放送(テレビ朝日の関西におけるネット局)が本社ビルの一角に作るそうですが、「Art Beat Cafe」っていうから、TOKYO ART BEATが一枚かんでるものと空目 《店内には、ギャラリーエリアやステージがあり、創意あふれる発信のための利用が可能です》とのことですが、朝日放送が自前で持ってるコンテンツというと、漫才とプリキュアくらいだから(ry←←
しょせん 僕は ネズミだよ
好事家、インディペンデント鑑賞者。オプリもあるよ♪