シモン・アンタイの偶然が織りなす抽象絵画。エスパス ルイ・ヴィトン大阪で回顧展「Folding」展が9月28日から開催へ https://www.tokyoartbeat.com/articles/-/simon-hantai-espace-louisvuitton-osaka-news-202308
2023.9.28〜2024.2.4。6月末までジャコメッティ展を開催していたエスパス ルイ・ヴィトン大阪ですが、次はシモン・アンタイ(1922〜2008)なんですね。個人的にはクロード・ヴィアラらによるシュポール/シュルファス運動との関わりで名前だけは聞いたことがあるけど、作品は見たことあったっけ……? となるところでして 。いずれにしても、アンフォルメル以後のフランスの現代絵画については、接する機会自体が稀なので、遺漏なく拝見したいところです。
アラン・バディウは『聖パウロ』において、〈原罪〉概念を罪一般と全く異なるものとして再定位しています。パウロ/バディウにおいて〈原罪〉とは、様々な属性を書き込まれた有限な存在としての人間を、それらから解放するものとしてあり、従って〈原罪〉において人は平等である、とされるわけで。
《重力の光》に戻りますと、この作品が遂行的に見せているのは、かかる〈原罪〉がキリスト教の少なくとも最初期にはありえた(かもしれない)ことであり、「ホーム」とは〈原罪〉によって、あらゆる属性に基づいた共同性から解放された存在たちの共同体であるということであると言えるでしょう。ところでこのような(未だ来らざる)共同体は、昨今の〈多様性〉とは真逆のものであることに注意する必要があります──〈多様性〉とは、有限な存在としての人間をそれとして措定することであり、従属・隷属が支配することになるからです。
個人的には、とりわけ石原海氏の《重力の光》がクリティカル。北九州市で犯罪者や家出した人々を更生する活動を長年続けている「抱撲」なるNPO法人の世話になった人々が出演して、新約聖書に書かれたイエスの受難〜磔刑〜復活のくだりを再演するという映像作品ですが、合間合間にその抱撲を主宰している聖職者──2015年に安保法案に反対する学生運動を率いていたSEALDsのリーダーだった奥田愛基氏の父親でもある──がイエスについて語る/語り直すシークエンスが差し挟まれ、そこではキリスト教における〈原罪〉というモーメントが強調されていました。そこだけ取り上げると体のいいキリスト教紹介ビデオといった趣ではあるのですが、映像の中でイエス役を演じているおじいちゃんが薬物中毒で傷害事件を起こしていたこと、さらには同展自体が既述したようにポストコロニアリズムの現在に焦点を寄せた作品が多かったことと合わせると、この作品における〈原罪〉は別種の意味を帯びることになる。
スイート、ビター、あるいはホープが示される多様な「ホーム」。山本浩貴評「ホーム・スイート・ホーム」 https://bijutsutecho.com/magazine/review/promotion/27637
国立国際美術館で開催中の「ホーム・スイート・ホーム」展(〜9.10)についての山本浩貴氏による展評。以前の記事ですが、もうそろそろ会期末なので。ポストコロニアリズムの重要概念である〈ディアスポラ〉(故郷喪失・離散)を軸に、出展作家/作品における「ホーム」のあり方/ありようを記述するものとなっています。同展は当方も6月末に見に行ったのですが、見る前は「ホーム・スイート・ホーム」って、そんな15年ほど前のMOTアニュアルじゃあるまいし…… と思っていたし公言もしてたんですが 、実際に接してみると上述したポストコロニアリズムの知見を踏まえつつも超展開された作品たちが、ちゃんと現在に届きうる射程を持っていたように見受けられ、意外と悪くなかったです。
京都各所で多彩な企画を開催。3回目の「Art Collaboration Kyoto」がプログラム全容を発表 https://bijutsutecho.com/magazine/news/market/27711
2023.10.28〜30、国立京都国際会議場とのこと。アートフェアに加えて、グループ展「BEYOND GLITCH:壊れた世界で現実を描き直す」(キュレーター:グレッグ・ドボルザーク)展など、様々なプログラムが予定されているそうです。¥3,000
ところで、ぁれこれもしかしてart KYOTOと会期かぶってる? と思ったんですが、向こうは10.6、8、9だそうで。しかしそれにしても京都は春先のArtists’ Fair Kyotoも入れると明らかにこの手のアートフェアが乱立し過ぎで総倒れフラグが立ちまくっているので、誰かが音頭を取って統一した方がいいんじゃね? と一鑑賞者的には思うところですが……
私立大学の定員割れが初の5割超え 短大は9割、小規模校苦戦 - 日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE2838B0Y3A820C2000000/
《都市部の大規模校に入学者が集まったことなどから、小規模校や地方で定員割れが広がった可能性があるとみている》って、受験生の人口が減ってるのに大学も入学定員も相変わらず増えてるんだから、そらそうよとしか言いようがなく。特に美大芸大の類は小規模校が多いから、今から身売りしてマンモス私大の美術学部として生き残ることを考えた方が良さそう? 美術学部がないのにアートセンターがある慶應義塾大とか、どうでしょう。ぃゃ特に誰に対して言うてるわけでもないんですが
(私立じゃないんですが、京都市立芸術大学と京都大学の合併話ってのがあったらしく)
展覧会めぐり、前場は大阪国際会議場で今日から始まったArt Stage Osaka 2023を見て回りました。昨年から始まったこのArt Stage Osaka、前回は堂島リバーフォーラムで各ギャラリーがブースを出展するというアートフェア形式だったのですが、今回は複数のディレクター/キュレーターによるグループ展三本建てとなっています──
・アジア各国の絵画作品を紹介する「World Art Osaka: Painting Now Redux─アジアの「いま」をめぐる」(ディレクター:遠藤水城)詳細はまた後で論じますが、個人的にはグループ展として面白かったのは遠藤氏ディレクションの「Painting Now Redux」展と、ブロックチェーン技術を用いたメディアアートのグループ展「Proof of X」展でした。他は、まぁ個々の作品レベルでは興味を引かれる作品もありましたが……
・日本の若手現代アーティストを紹介する「Japanese Contemporary: すべてが計算される世界でまだ祈るべきものは残されているのか?」(キュレーター:高橋洋介)
・NFTやデジタルアート作品をフィーチャーしている「New Media: State of the “Art”」(FAT Collection, Proof of X, NFT X CREWの合同展)
弘法大師・空海の生誕1250年を記念した特別展「空海 KŪKAI ― 密教のルーツとマンダラ世界」が奈良国立博物館で来年4~6月開催 https://artexhibition.jp/topics/news/20230829-AEJ1562035/
2024.4.13〜6.9とのこと。空海(774〜835)の生誕1250年ということで、密教絡みの国宝や重文が多数出るようです。
そう言えば、先日国立国際美術館で開催された村上隆氏とのトークで篠原資明氏──『空海と日本思想』(岩波新書、2012)という著書があります──が、村上氏の作品(特に近年の、仏教美術を露骨に参照している作品)について仏教を参照しているけど禅的ではないとし、空海との思想的な近しさを指摘してました。『空海と日本思想』は発売当時、それまでベルクソンやドゥルーズなどについての著書が多かった篠原氏が突然空海を論じたことで、ちょっとした波風が立ったものですが、氏の議論の是非についてはにわかに言えないものの、まずは空海の残した諸文物に接してみることから始めることが必要ではあるでしょう。
「両界曼荼羅」をどうしても「限界曼荼羅」に空目
ジャニー喜多川氏の性加害認定、藤島社長の辞任求める 特別チーム:朝日新聞デジタル https://www.asahi.com/articles/ASR8Y54C9R8YUTIL00Q.html
数日前の記事ですが、どうせ第三者(第三者ではない)委員会がお手盛りのを出して終わりでしょと思ってたら、割とガチめな報告書を出してきたんですね。まぁでもこれで辞任するとも思えませんし、まだまだ二転三転しそう。なんせ「死者をバッシングするほど、日本におけるゲイ差別は酷い」と逆ギレするという最終オプションが藤島社長側には残されてますからね
しかしそれにしても、この問題が大きく取り上げられるようになった現在ですら、(某ギャラリーに行く途中で)梅田界隈某所にあるオフィシャルグッズショップの前を通りかかると週末には相変わらずジャニヲタたちが行列を作っており、これが「「「答え」」」か…… となることしきり
ホックニーはなぜ評価と人気を60年も獲得し続けられたのか?「デイヴィッド・ホックニー展」担当学芸員が徹底解説!【前編】 https://www.tokyoartbeat.com/articles/-/hockney-curator-interview-202308
東京都現代美術館の同展担当学芸員な楠本愛氏へのインタビュー記事。近日公開予定の【後編】がうpされ次第、一気に読む(できるかな?←←)
好事家、インディペンデント鑑賞者。オプリもあるよ♪