2023.8.4〜8.8の日程でReal SOU # 11 が阪急茨木市駅前のSocio-1内特設スペースで開催中(出展作家:城戸保氏、杉山卓郎氏)で、両氏とも何度か作品に接したことがあるので既視感をともないつつもなかなか楽しめましたが、SOUがすごいのは、作品のもともとのサイズ感をガン無視して超拡大コピーして展示するところでして、それによって、単なるパブリックアートではない謎の批評性すら勝ち取っていると言わなければならない。例えば数年前に松井智惠氏のB5ほどのサイズのドローイングを超拡大して展示した際には、もとのドローイングの筆致などが全く別の意味やニュアンスに変わっていたわけで、実行したOne art Projectもそれを諒とした松井氏側もイケメンだよなぁと呆然としたものです。今回も、杉山氏のオプアート系絵画をここまで大きくするか……と唸ることしきりでした
現代美術家の稲垣元則&藤本聖美両氏によって2017年に結成され、主に大阪府茨木市の各所で様々なアートプロジェクトを展開しているOne art Projectの、結成から現在までの活動記録集をいただきました。記して感謝申し上げます。半年ごとにJR総持寺駅のコンコースに同プロジェクトが選定した作家の作品を超拡大コピーして展示するSOUや、その作品自体や出展作家の別作品を市内中心部で展示するReal SOU、8分19秒以内の映像作品のコンペな茨木映像芸術祭、工事現場を囲う仮壁面にワードアートを展開するカコイバなど、硬軟とりまぜた企画を展開しているOne art Project ですが、今までその全貌を通覧する機会は(よほどアートマニアな茨木市民でない限り)かなり難しかったので、この記録集は貴重ではあります。両氏ともアーティストでありながら、自作をほぼ出さずに裏方&ファシリテーター&プロデューサーに徹している時点で、「地域アート」界の中でも普通に突出している
大阪府が(大阪府立現代芸術センターの開設を期して)1980年代〜90年代に収集した現代美術コレクションが現在に至るまでかなり杜撰な扱いをされている件について先日報道され、時ならぬ(?)話題となったものですが、そう言えば万博公園にも同コレクションの立体作品が何点か展示されてたなぁと思い出し、昨日別用で国立民族学博物館にうかがったついでに見てきました。広大な万博公園の、民博や大阪日本民芸館に通じる道から少し入った一角が「現代美術の森」と名づけられ、そこに十点ほどが設置されています。いずれも大阪府が1990年代に主催していた大阪トリエンナーレの彫刻部門の入賞作でして、中でも野外展示に耐えうると目された金属製の作品が展示されておりますが、保存状態という点からすると、まぁなかなか苦笑ものでして、基本素人な当方でも頭抱えかねない(特に森口宏一の作品は素人目にもかなりヤバい説ある)ものだから、プロの学芸員やクーリエとかが見たら卒倒必至!? これなら咲洲庁舎の地下で(ryという方がまだマシのような……
ところで大阪府のコレクション、寄贈や寄託、画商などからの購入以外では大阪トリエンナーレの入賞/入選作を買い上げることで形成されていますが、手許にある記録集を見てみますと、その大阪トリエンナーレを通して東南〜南アジアやアフリカ、中南米といったいわゆる第三世界出身の作家の作品も割と精力的に集めていたように見え──それは大阪大学を拠点として人類学としての美学を思考/実践していた木村重信(1925〜2017)の影響がかなり大きかったからですが──、もしこのまま(難波の近辺に作られる予定だったらしい)大阪府立現代芸術センターが無事開館していたら、日本における第三世界のアートについての有力な拠点になっていたのかもしれないと夢想したりしなかったり
出版業界は本当に斜陽? 本を“読む”ではなく“聴く”が若年層のスタイルに「このままいけば、電子書籍を猛追する可能性もある」 | ORICON NEWS https://www.oricon.co.jp/special/64320/?utm_source=Twitter&utm_medium=social&ref_cd=twshare
出版ないし本のバリアフリー化が話題になっている昨今ですが、オーディオブック界隈がそういう動きもあいまって急成長しているようで。この手の朗読モノ、昔は名優がわざわざ労を取って古今東西の文豪の名作を手がけるというプレミア感を前面に押し出してたものですが、今はもうちょっとカジュアルな感じになってるらしい──ファスト聴取(ファスト聴取?)にも対応しているとのことですし。ところで谷崎潤一郎『春琴抄』のオーディオブックっていつ出るんでしょう?
ちょっと時間を作ってお救いしてきました
QT: https://fedibird.com/@wakalicht/110817971282549452 [参照]
「なんで壺やないとあかんのや」 戦後の反権威が生んだ前衛陶芸 | 京都新聞 https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/1080710
京都国立近代美術館で開催中の「走泥社再考―前衛陶芸が生まれた時代」展(〜9.24)の紹介記事。展覧会では結成直後の1948年から1973年までに絞って、創設者の八木一夫に限らず幅広く作品が展示されているようですが、走泥社自体は1998年まで続いており、この記事でも後期メンバーを中心とした当事者のインタビューもふんだんに記録されています。
しかしそれにしても、この走泥社もそうですし、同時期に下村良太郎や三上誠らによって結成されたパンリアル美術協会が2020年まで続いたこともそうですが、前衛美術団体ですら何十年も続くというのが、京都らしい(京都らしい?)ところではありまして
今回のart stage OSAKA、以下の三つのグループ展からなるそうで
・「World Art Osaka Painting Now Redux - アジアの「いま」をめぐる」(ディレクター:遠藤水城)
・「Japanese Contemporary ─すべてが計算される世界でまだ祈るべきものは残されているのか?─」展(キュレーター:高橋洋介)
・「New Media State of the “Art”」展
詳細はこちら→ https://www.artstageosaka.com/sections
QT: https://fedibird.com/@wakalicht/110836065840307635 [参照]
Art stage OSAKA 2023|2023.9.1〜3|グランキューブ大阪 https://www.artstageosaka.com/
知らん間に開催概要が発表されてた今年のart stage OSAKA。昨年は6月に堂島リバーフォーラムで開催されてましたが(未見)、今回はグランキューブ大阪こと大阪国際会議場に会場を移し、アートフェア形式から、複数名のディレクター/キュレーターを立てたグループ展を集めたものとなるようで。まぁ当方は日程的に行けるかどうか怪しいところですが……
大辻清司という難問(見る聞く読む)- 東京国立近代美術館 https://www.momat.go.jp/magazine/180
東京国立近代美術館の常設展フロアの一角で大辻清司(1923〜2001)の特集展示が組まれているそうで(開催中〜9.10)、そのレビューが公開されています。評者は渋谷区立松濤美術館学芸員の木原天彦氏。松濤美術館はこのあとこの大辻をはじめ瀧口修造や阿部展也、牛腸茂雄をフィーチャーしている「「前衛」写真の精神:なんでもないものの変容」展が巡回してくるので、レビューにうってつけの存在と言えるでしょう。
関西にいてると大辻の仕事にまとまった形で触れる機会はほとんどなく、当方も今はなき鎌倉の神奈川県立近代美術館で開催された実験工房展でそれなりに接した以外はお察しなのですが──だから「「前衛」写真の(ry」展の図録ではじめて、牛腸が大辻の教え子だったことを知ったという体たらくなのですが──木原氏のレビューは、前衛写真(というか、写真の前衛性)にフォーカスを当てたものとなっており、普通に勉強になりました。
カメラによって、物体の思いもよらない隠された側面を浮かび上がらせようとする点で共通している。付言すれば、これは写真だからこそ可能なことでもある。現実を克明に写しとりながらも、距離、光と影のバランス、瞬間的な時間の静止などあらゆる条件が、肉眼とは異なった新たな視覚をもたらす。だからこそ写真には、見慣れた現実を批判的に捉え返す力が備わっている。大辻の前衛とは、この写真の力を最大限に使い尽くす方策でもあった。とは、言い得て妙。
西天満にあるOギャラリーeyesで今日まで開催の今道由教展。例年、だいたいこの時期に同所で個展を行なっている今道由教(1967〜)氏、これまでも紙を切ったり折ったりクシャクシャに丸めたりすることで、平面における図/地、表/裏、色彩/支持体、シュポール/シュルファスetc…… をミニマルに問い直す──その結果、これらの二分法は氏の手によって境界線をあやふやにされ、相互に反転する/しうるものとして作り直されることになる──作品を作り続けていますが、今回もこれまでの考察の延長線上にある作品が出展されていました。
今回の個展では、プリンタやスキャナを用いた作品が初登場しています。《何かの対象を描くのではなく、描く行為そのものから生じる筆運びや筆圧などの痕跡による非具象絵画》(←プレスリリースより)を主軸としてきたことからするとなかなかな変化ではありますが、実際には先ほど触れたミニマルな問い直し作業を──絵筆を介さない分──さらにミニマルにした作品が揃っていたのでした。今回は一本の線を引いた紙をスキャナ上で光に合わせて何度も動かすことで「図と地」=イメージを発生させてトレーシングペーパーに出力した作品がなかなか出色。大作はないものの、引き込まれるものとなっていたのでした
日本画家・竹内栖鳳の大回顧展が京都市京セラ美術館で - 代表作が一堂に、新発見《羅馬遺跡図》初公開 https://www.fashion-press.net/news/107075
知らん間に今秋京都市京セラ美術館で開催される竹内栖鳳展の詳細が出てました。前期:2023.10.7〜11.5、後期:11.7〜12.3とのこと。代表作と目されている(?)《絵になる最初》とみんな大好き(?)《獅子図》がともに出展される後期の方が見応えありそうですね。エラく混み合いそうでアレですが
月刊みんぱく – 国立民族学博物館 https://www.minpaku.ac.jp/research/publication/column/gekkan
今月(8月)号の特集は「政治的なるものと不条理の超克」だそうで。《独裁国家、植民地国家、危機にある民主主義国家、大規模な管理統制社会。政治的なるものは不条理として人の前にあらわれる》(←国立民族学博物館公式 より)というところから出発して、不条理としての政治をめぐる諸相──もちろん、そんな諸相に対する人々の抵抗という実践も視野に入ってくることになるだろう──を各国における事例研究を通して見ていくという感じでしょうか。
この月刊みんぱく、ページ数的にはそう多くなく(その意味では、ニュースレター+αといった趣の刊行物と言えるでしょう)、一定期間が過ぎるとサイト上でpdfファイルとして無料公開されるのですが、これは実際に博物館にうかがってお救いしたいところです
好事家、インディペンデント鑑賞者。オプリもあるよ♪