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独り言は多分ありません。
このアルバム知らなかったけどポーティスヘッドみたいでとても、良い。
今売りの「群像」にエッセイが載ってるんだけど読まれてる気がしない。
群像 2023年 01 月号 [雑誌] | 講談社 |本 | 通販 | Amazon http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/B00ABL3MOE/nnbn-22
僕はポリコレ派をいちおう自任するつもりなんだけど、韓国の若者と話した時は当地の「フェミニズム」が「行き過ぎている」という話を聞いた。彼の発言をどの程度まで真に受けるべきかは留保が必要ではあるものの、日本はこれでも「フェミニズム」が「行き過ぎて」いない、それだけ保守的な風土だから、ポリコレの危険性をリアリティを持って考えられないだけなのかもしれない。
もしかりに「行き過ぎ」が問題なのだとしても、フェミニズムをはじめとする不平等を回避するための思想の理念が誤っているということにはならない。また、理念が謝っているかどうかとは別に、それが「行き過ぎ」ることはありえる。これらは別問題ではあるものの、背中合わせの話として同時に考える必要がある。
サンデル『運も実力のうち』ようやく読了。
前近代の貴族主義(生まれが社会階層を固定する)から、近代以降のメリトクラシー(努力と能力によって社会階層は流動化する)への移行を果たして手放しに受け入れられるかという問い。
メリトクラシーには二つの問題がある。ひとつには、能力主義には「能力を伸ばす」ことに投資できる時間と資金と社会資本を持っている家庭に有利に働くという問題がある。
そしてもうひとつ、家庭環境によらず「運」な能力を獲得できるかどうかにかかわるため、メリトクラシーは幸運者を選抜しているだけになる。にもか変わらず、能力主義は努力の結果として人々を選抜しているような印象を与え、どういうわけか運によって成功者あるいは失敗者の立場に運ばれたことを見誤らせる。
サンデルはこのメリトクラシーの問題点を緩和させるためにくじ引きの導入を提案している。しかし運の直接的な導入に抵抗する読者が多かったのか、今回の本は正直そんなに高く評価されてこなかったと思う。試験を課してなんらかの成果によってひとを選別する、という建前を信じる人がとても多いからだろう。
著述家・書評家📚📚果物などが好きです。仕事のご依頼はお気軽に。『週刊金曜日』書評委員、『ダ・ヴィンチ』ブックウォッチャー。時間銀行書店店主。 著作:『積読こそが完全な読書術である』(2020年、イースト・プレス)『書物と貨幣の五千年史』(2021年、集英社)、『再読だけが創造的な読書術である』(2023年3月、筑摩書房)。