サンデル『運も実力のうち』ようやく読了。
前近代の貴族主義(生まれが社会階層を固定する)から、近代以降のメリトクラシー(努力と能力によって社会階層は流動化する)への移行を果たして手放しに受け入れられるかという問い。
メリトクラシーには二つの問題がある。ひとつには、能力主義には「能力を伸ばす」ことに投資できる時間と資金と社会資本を持っている家庭に有利に働くという問題がある。
そしてもうひとつ、家庭環境によらず「運」な能力を獲得できるかどうかにかかわるため、メリトクラシーは幸運者を選抜しているだけになる。にもか変わらず、能力主義は努力の結果として人々を選抜しているような印象を与え、どういうわけか運によって成功者あるいは失敗者の立場に運ばれたことを見誤らせる。
サンデルはこのメリトクラシーの問題点を緩和させるためにくじ引きの導入を提案している。しかし運の直接的な導入に抵抗する読者が多かったのか、今回の本は正直そんなに高く評価されてこなかったと思う。試験を課してなんらかの成果によってひとを選別する、という建前を信じる人がとても多いからだろう。