斉藤真理子「韓国文学の中心にあるもの」読了。
人々はどうして韓国文学に惹かれるのか?セウォル号、IMF危機、光州事件、朝鮮戦争等から見る韓国文学の源やパワーについて丁寧に解説してくれている。この本が読めて本当に良かった。
特に朝鮮戦争に関しては、どうして今まで知らないでいられたんだろう、という恥や罪悪感やらでいっぱいになる。
著者の「恥があるということは恥ずべきではありません。(中略)そこにありえたかもしれない未発の夢を手探りすることです」という言葉の重みをしっかりと受け取る。恥で全てを占めるのではなく、次世代のために何ができるかを考えること。
過去の痛みに向き合い、その痛みを言語化することで回復の工程を丁寧に辿っていく。それは読者をとても勇気づけるものだと思う。
積読になっている韓国文学、この本に書いてあった小説や映画等少しずつ触れていきたい。
エルビラ・ナバロ「兎の島」読了。 すごく好きな短編集だった!どうにか保っていた日常も、一つの不安で簡単に崩壊してしまう。じわりと内的に追い詰めてくるような恐怖。物語の結末もはっきりしているものは多くなく、こちらに想像の余地を与えるのでまた怖くなる。 私は当事者目線で考えてしまいがちなので、小説に書いてあることを全て本当だと受け止める節がある。 疑いなく読むからこそ色んな所へ連れて行ってくれる。それもとても楽しいけど、もう少し多面的に読みたい気持ちもある。 次読む時は、どこまでが現実でどこまでが妄想、あるいは超自然なのか俯瞰して読んでみたい。 どこを取ってもおざなりになっていなくて、きちんと噛み締めるような言葉がとても多かったように思う。 「心の中では思っていても口に出さないことが、ほかにもたくさんあった。」
高井ゆと里「トランスジェンダー問題」読了。
著者はイギリスのトランスジェンダー諸問題について触れているけれど、日本に置き換えても大してかけ離れていないと思ってしまうほど近年のトランスフォビアは著しい。
イギリスが行った社会調査のアンケートで、「トランスジェンダーへの偏見は全くない」に対しては80%を超えているのに、彼らが警察官や教職に就くことを聞かれると途端に賛成率が半減している。私含め無意識下の差別はそうやって生まれているんだろう。
訳者の解説が同ページにあるのもとても良かった!基本は文献と一緒に一番後ろに持ってくることが多い気がしていて…その場で疑問を解決できるのはとても助かる。「このあたりの著者の記載については注意が必要」等訳者自身の意見も書いてあり、なんだか新鮮だった。
本書の最後には、訳者が章ごとのテーマに日本の現状を加えた「訳者解題 日本でトランスジェンダー問題を読むために」が書かれている。これもまた国内の問題を知るのにとても勉強になった。
8月に観た映画
長編
チェン・カイコー「さらば、わが愛 覇王別姫」
短編
シャーロット・ウェルズ「Tuesday」
https://charlotte-wells.com
※英語字幕のみ
川添彩「夜の電車」
https://kortfilm.be/en/node/114
予告編
https://vimeo.com/767565920
※海外サイトで有料配信
覇王別姫の衝撃が大きくて今月はあまり映画が観られなかった。だから短編をふたつ。
アフターサンで有名なシャーロット・ウェルズの短編を観て、この人はどこまで終わらない孤独を描くのが上手いんだろうと思う。
夜の電車は大好きな三好銀の漫画「いるのにいない日曜日」が原作とのことで観たら、夢現になるような映像で心を掴まれた。
ツイッター(X)があまりにも混沌すぎて、マストドンの落ち着きにほっとする
映画、音楽と本。不穏な海外文学が好きです。