道東出身・在住の伊藤瑞彦さんが書いた『赤いオーロラの街で』(2017)がもう少し話題になってもいいのではと思う1日でした。第5回ハヤカワSFコンテスト最終候補作です。
災害パニックとそのトラブル対応が描かれる話で、悲壮なスリラーではないです。
検索して見つけた、坂野秀久さんという方の紹介文が詳しかったのでリンクを置いておきます。 https://kai-hokkaido.com/novel022/
最近おはなし会関連の告知をしていませんが、5~7月は地元の育児支援センターや育児関連の研修などに出没する予定です。支援とか研修とか抜きにしても(むしろ抜きの方が……)、本を読ませてくれるならわりとどこへでも行きます。
7月の会に向けて、七夕テーマのオリジナル朗読劇の脚本も練っています。
直近ではこちら「南新川まつり」に参加します。
川底探検の部「南新川の昔のおはなし」に、毎年やっている川の歴史を解説するオリジナルのおはなしを持って行きます。
https://www.city.ukiha.fukuoka.jp/kiji0036381/index.html
『人新世SF傑作選 シリコンバレーのドローン海賊』の見本刷りが届きました。中原が訳したのは表題作と陳楸帆の2作です。新井なゆり、小野田和子、金子浩、佐田千織、山岸真の各氏にご参加いただいています。解説渡邊利道氏。5月10日発売。
https://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488791025
収録作品
メグ・エリソン「シリコンバレーのドローン海賊」
テイド・トンプソン「エグザイル・パークのどん底暮らし」
ダリル・グレゴリイ「未来のある日、西部で」
グレッグ・イーガン「クライシス・アクターズ」
サラ・ゲイリー「潮のさすとき」
ジャスティナ・ロブソン「お月さまをきみに」
陳楸帆(チェン・チウファン)「菌の歌」
マルカ・オールダー「〈軍団(レギオン)〉」
サード・Z・フセイン「渡し守」
ジェイムズ・ブラッドレー「嵐のあと」
ジェイムズ・ブラッドレー「資本主義よりも科学 ──キム・スタンリー・ロビンスンは希望が必須と考えている」
杉江松恋さんとの月例SFレビュー番組「これって、SF?」、4月号(3月刊行分)その3です。
私は、江波光則『ソリッドステート・オーバーライド』(ガガガ文庫)を紹介しました。
戦場に迷い込んだ少女を家に送り届けるためロボット2体が旅をする……というあらすじからはたぶん想像できない、独特のSFロードベルです。思考金属(シンク・メタル)――思考をエネルギー源とする金属――というアイデアと、類例のない3原則――「人にならねばならない」「人になってはならない」「何も見てはならない」――から生み出される(屁)理屈の応酬が楽しい。
杉江さんは、コーマック・マッカーシー/黒原敏行訳『ステラ・マリス』(早川書房)を紹介されました。
同時に発売された『通り過ぎゆく者』と対になる一作です。私は二作を並行して読みましたが、なかなか手強い。SF読者にはおなじみの学者や理論がちらほら登場するので、そこを手がかりになんとか挑んでみました。とりあえず『ステラ・マリス』が数学篇、『通り過ぎゆく者たち』が物理篇と言うことはできそうです。
杉江松恋さんとの月例SFレビュー番組「これって、SF?」、4月号(3月刊行分)その2です。
私は、日本SF作家クラブ・嵯峨景子編『少女小説とSF』(星海社)を紹介しました。
90~2000年代の少女小説の懐かしい語り口を残しながら、現代的なテーマも意欲的に取り込んだ力作ぞろいです。また、収録作のテーマやモチーフは随所で響き合っており、1冊のアンソロジーとして読み応えがあります。
新井素子、皆川ゆか、ひかわ玲子、若木未生……と続く目次の並びを見ただけで私はうれしくなってしまいましたが、少女小説にあまり馴染みのない方も十分楽しめると思います。
杉江さんが紹介されたのは、坂崎かおる『噓つき姫』(河出書房新社)です。
作者にとって初の単著ですが、とにかく情報の出し入れが上手くて、書き出しから結末そして余韻まで、一篇一篇を流れるように味わうことができます。どう書き出して、誰に何を言わせるか、地の文で何を説明するか(しないか)、どんな結末をつけるか……すべてのバランスが取れていて、さまざまなジャンルの新人賞での実績も宜なるかな。
SF読者のみならず、幅広くおすすめの一冊です。
杉江松恋さんとの月例SFレビュー番組「これって、SF?」、4月号(3月刊行分)その1です。
私は、田中空『未来経過観測員』(KADOKAWA)を紹介しました。漫画『タテの国』などで知られる作者の小説デビュー作で、私家版も話題になりましたが、書き下ろし一篇を加えて商業出版されました。
現在の延伸だけではたどり着けない、果ての果てを想像する楽しみが詰まったスケールの大きな作品です。この設定なら500年くらいまでの未来社会をスケッチして軽いオチをつけるのもアリだと思うのですが、5万年後まで突き抜けようというその心意気を買いたい。
杉江さんが紹介されたのは、ジリアン・マカリスター/梅津かおり訳『ロング・プレイス、ロング・タイム』(小学館文庫)です。
息子が殺人を犯した日を起点に、母親が少しずつ時間を逆行します。時間SFとしては若干緩いのですが、動画で述べた通り家族小説として沁みました。なぜ息子は罪を犯したのか、自分には何が出来た(出来なかった)のか――逆行するたびに思い悩むことは増えるのに、周囲との関係はいちいちリセットされる。とくに前半は、乳幼児期とはまた違う思春期ワンオペ育児の悩みに刺さります。
もちろん、特殊設定ミステリとしてもおもしろいです。
https://www.youtube.com/watch?v=cy2JlOj8qc0
【告知】
4月25日発売のSFマガジン2024年6月号にて、①NOVEL & SHORT STORY REVIEW欄での隔号連載が始まりました。②パレスチナ系アメリカ人作家ナディア・アフィフィによる短篇「バーレーン地下バザール」を翻訳致しました。それぞれの詳細を以下に記します
①2024年2月号にて「パレスチナSF特集」を執筆致しましたN&SSR欄を引き続き担当させて頂くこととなりました。2月号、6月号、10月号を担当していくこととなります。連載第一回目は「卒業&入学小説特集」、出会いと別れの多いこの時期読みたい短篇3作と長篇1作を紹介しております。
②パレスチナ特集で紹介したナディア・アフィフィ「バーレーン地下バザール」を翻訳致しました。ささやかな喜びを重ねていくことが死と暴力への抵抗になりうること、愛とケア、中東の歴史と未来など、様々なテーマの折り重なった傑作です。結末は、訳しながら何度も祈るような気持ちになりました。いま読んで頂きたい一作です。
風呂掃除の戦力が一人減ったので、風呂洗剤をエアジェットというやつにかえた。でも流すだけのやつ、どうしても信用しきれないんだよなあ。
キュキュット泡スプレーもけっきょくこすっちゃう。
https://www.youtube.com/watch?si=tNdCm8lxED2Vh8_T&v=ziEQmbU-psw&feature=youtu.be
杉江松恋さんとの月例SFレビュー番組「これって、SF?」、3月号(2月刊行分)その3です。
私は、松樹凛『射手座の香る夏』(創元日本SF叢書)を紹介しました。
全4篇収録の中短篇集です。動画中でも触れましたが、SF的な仕掛けを使った価値観の揺さぶりが実に巧みで、謎解き小説の要素もあり、収録作全て読み応えがあります。まずはWEB東京創元社マガジンで無料公開中の「十五までは神のうち」だけでも読んでみてください。
杉江さんは、3月刊の間宮改衣『ここはすべての夜明けまえ』(早川書房)を紹介されました。
〈SFマガジン〉掲載時から話題になっていたハヤカワSFコンテスト特別賞受賞作です。ひらがなを多用した文体を丁寧に読み進めるうちに、淡々とした中から語り手の感情の襞が浮かび上がってきます。「アスノヨゾラ哨戒班」「永瀬拓矢」といった固有名詞の使い方も上手い。
https://www.youtube.com/watch?v=dH-5mI98368
杉江松恋さんとの月例SFレビュー番組「これって、SF?」、3月号(2月刊行分)その2です。
私は、ラヴィ・ティドハー/茂木健訳『ロボットの夢の都市』(創元海外SF叢書)を取り上げました。
遠い未来が舞台で、背景には膨大な設定(約20pの用語集つき)が詰め込まれているのに、どこか懐かしい手触りのロボットSFです。過去のSFやゲームへのオマージュも随所に織り込まれています。
杉江さんが紹介されたのは、藍内友紀『天使と石ころ』(早川書房)です。
戦争に翻弄される少年少女を描いた戦争小説で、戦地でさまざまな役割を強いられつつ懸命に生きる子供たちの物語が胸に迫ります。ミリタリー描写は本格的で、SF的な設定も効果的に使われています。
https://www.youtube.com/watch?si=0f74FFTy4yrVn2a7&v=ncr5XCPJTu8&feature=youtu.be
杉江松恋さんとの月例SFレビュー番組「これって、SF?」、3月号(2月刊行分)その1です。
私は、ベンハミン・ラバトゥッツ/松本健二訳『恐るべき緑』(白水社)を取り上げました。
チリ人作家による虚実を交えた20世紀科学者列伝ですが、独特の読み味なのでどう紹介するか迷いながら喋りました。シュヴァルツシルト、シュレーディンガーなど、SF読者にはおなじみの名前も多数登場します。日本人では(グロタンディークの章で)望月新一教授が重要な役割を果たしますが、ここのエピソードはたぶんほぼ創作ですね。
杉江さんが紹介されたのは、川崎大助『素浪人刑事 東京のふたつの城』(早川書房)です。
2020年代まで徳川幕府が続いている日本が舞台の改変歴史ものです。改変の核を成す部分は、現在早川書房のnoteで公開されています。こんな感じの世界で、帯刀した刑事が奮闘します。
動画中では中途半端になりそうだったので触れませんでしたが、杉江さんが指摘されている天皇制の扱いについては、過去の伝奇SF論でもしばしば問題になってきました。そこまで踏み込めば、本作もさらに読み応えのあるものになったでしょう。
https://www.youtube.com/watch?si=JYrPabzP35JJRdqo&v=apxISKC5OIs&feature=youtu.be
本日発売の人間六度『スター・シェイカー』(ハヤカワ文庫JA)、解説を担当しました。第9回ハヤカワSFコンテスト大賞受賞作の文庫化です。
社会構造の変化もバトルも友情愛情も宇宙の存亡も、すべてを"テレポート"で貫いた一点突破が強烈な印象を残す快作です。中島かずき帯が強い。
文庫化に当たって、文章にもだいぶ手が入っています。 受賞時は良くも悪くも荒削りなところを中心に評価されることが多かったので、解説ではあえて少し細かいところ、勢いだけではない著者の長所だと思うところを、他の作品も絡めて書きました。
詳しくは触れませんでしたが、移動系能力者(白井黒子やジャンパーはもちろん、古くは8マンや009のような加速系、最近だと東堂葵や響凱みたいなトリッキーなやつ……)による異能バトルの系譜の置いてもおもしろい。
とにかく、今まで見た(読んだ)ことがない緊迫のテレポート・バトルが楽しめます。
https://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000015030/
お知らせです。
4/19に集英社文庫より『ウィンズテイル・テイルズ 時不知の魔女と刻印の子』を上梓します。なんの前触れもなく始まった相互理解不能の存在による侵略により、文化文明のほとんどが失われてしまった世界を舞台にした冒険譚です。
ちなみに大変大事なポイントですが、犬が! 活躍! します!!
その他好きなものをあれもこれもと詰め込んで、自由に楽しく書かせていただきました。麗らかな春に楽しんでいただけたら嬉しいです。
https://www.shueisha.co.jp/books/items/contents.html?isbn=978-4-08-744642-5
2024年03月13日ごろ発売の『本の雑誌 特集:マジックリアリズムに酔い痴れて』掲載の「世界マジックリアリズム全集を作ろう」座談会に石川美南さん、藤ふくろうさんと共に私(橋本輝幸)も参加しています。
『百年の孤独』文庫化にあわせた特集ですね。
>『百年の孤独』文庫化の刊行時期を新潮社に取材するとともに、マジックリアリズム総ざらいから、語ることのカタルシス、『百年の孤独』を代わりに読むとこうなる論に読者の『百年の孤独』体験、そして「世界マジックリアリズム全集」全35巻編纂座談会まで、ガルシア=マルケス的世界にぐぐいと迫る、麦焼酎を愛する人も酔いしれる魔術的特集なのだ!
https://www.webdoku.jp/honshi/
書評家/おはなしを読む人。 〈SFマガジン〉で国内SF書評連載中。杉江松恋さんのYoutubeチャンネル「ほんとなぞ」で、月例SF書評番組「これって、SF?」に出演中。たまに文庫解説やブックガイド記事なども書きます。日本SF作家クラブ会員。
読み聞かせボランティアとして、地元を中心におはなし会もやってます。